下着泥棒の怪｜リアクション

下着泥棒の怪

「ふーむ。調べれば調べる程、興味が出てくる。随分と変わった妖怪だね」

　薄羽白露が現在調べているのは、最近噂で聞くようになった下着泥棒の件だ。
　女性の下着を盗んで行く黒くてまん丸けな毛玉のような生物。これが妖怪であり、怪異であるのは間違いない。

　しかし、その一体どういう妖怪であるのかさっぱり解らないのだ。
　妖怪と一言で言っても、実はその種類数は多岐に渡る。とても有名な妖怪もいれば、誰も知らないような妖怪だっているのだ。

　今回のこの妖怪は間違いなく、誰も知らないような方に当たる。もっとも、現在の寝子島だけで言えば多少は知っている人はいるわけだが。
　知名度がないので、そもそもこの妖怪の事を何と呼んで良いかも不明だ。

「しかし、陰陽師としてはやはり放ってはおけないかな。こういうのを祓うのが仕事だしね」

　とりあえずは、効果の程は不明だが、一人の女性を見かけたら自分の持ってるお札でも配ってみる事にしようと白露は考えた。
　あまり怪しくならない程度に。お札程度ならばお金さえ取らなければ受け取っては貰えるだろう。

「あとは見回りをのんびりするくらいかな」

　白露は率先して追いかけるよりは、袋小路のようなところに追い込むようなやり方の方を得意としていた。だから、今回もそのように立ち回る気でいるのである。
　それに今回のこの妖怪の性質上、どう考えても女性のヒンシュクは買う筈だ。恐らく、自分以外にもどうにかしようと思っている人間がいる筈だと思う。

　一般人には認識出来ずとももれいびにはちゃんと認識が出来るのだから。
　だから、白露は自分はそういう子達もサポートに回れば良いだろうと考えていた。それとなくではあるが。

「危ないから気を付けてね」

　もれいびの女子高生にお札を渡して、注意を促しておく事も忘れない。
　現在、白露は旧市街へと出向いていた。自身が考えた通りに見回りをしつつお札を配って歩いているのだ。
　今のところ、例の妖怪は発見できていなかったが、何となく同じ目的なのではないかと思われる人物達は見かけていた。

「彼らが囮作戦とかをやるならば、僕がこうして見回りをしておけば彼らの作戦が上手く行き易くなるよね」

　この妖怪はあくまでも女性が一人のところを狙うらしいので、それは恐らく正しいのだろう。
　
「ん？」

　白露は目端に何か動くのが見えた気がした。明らかにまん丸けなシルエットのように見えた気がする。
　そちらの方を見てみると、例の妖怪だと思われる物が跳ねてどこかに行こうとしているのが見えた。

「ふむ。これは、もしかして……」

　誰かの試みが上手くいったのかもしれないと思う。ならばと、白露は置いて行かれない程度にその妖怪を付ける事にした。

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