下着泥棒の怪｜リアクション

下着泥棒の怪

　古野山日影は最近起こっているという下着泥棒の噂を聞いた。
　下着泥棒。盗られた女性からすればたまったものではない筈だ。

　どうやらこの事件はもれいびでないと解決が出来そうにない。日影はもれいびだ。つまり自分にできる事があるのだ。
　ならば、人助けをしなければならないと日影は思う。

「が、がんばるぞ！」

　日影は事件解決に向けて意気込むが、果たして上手くいくのであろうか？

　日影は実際に旧市街に来て、早速周辺の張り込みをする事にした。
　彼のろっこんである影の海。その能力は衣服を含めた自身の全身が影に変化するというものだ。

　日影は夜になるまではこれを使って、張り込みをするつもりであった。地面の影に溶け込んで、女の子を狙う犯人が現れたら、直ぐに影から飛び出して追いかけるのだ。
　夜になったらわざわざこれを使わなくても、物陰などに隠れれば十分に張り込みできるだろうという計算だった。

「と、とりあえず、そこら辺で拾った木の枝を武器代わりに持って行こうかな……あんまり役に立たないかもしれないけど」

　話を聞く限り、犯人である生物もそこまで戦闘能力があるようには感じられない。
　だから、この程度の武器を持った日影でも何とかなる筈なのだ。多分、と心の中で付け加えてしまうのだが。

　そして、日影は自身のろっこんを発動する。まるで影を纏うかのように全身が影になっていく。そして、まるで穴に落ちるかのように日影の姿は溶けて消えた。

「犯人が真上に来てくれたら助かるんだけどなぁ」

　そうすれば、そのまますぐに捕まえようとすれば良いわけだから、体力のない日影としては楽になる。
　そんな事を考えていると、足音が聞こえてくる。この足音の感じは、女性だろうか？

「あっ、い、いけない……」

　そうだと今更ながらに思う。この状態で道にいるという事は、女性が上を通ったらパンツを見てしまう事になる。
　これではまるで覗き犯みたいだ。あくまでも僕は下着泥棒を捕まえる為にこうしているのであって、パンツを覗く為にしているのではないと自分に言い訳をする日影。

　そんな事を考えてると、不意に真上を女性が通る。考え事をしていた為に目を逸らすのが遅れてしまう。
　白い物が見えたような気がするけど、気のせい、気のせいだと呟く。

（と、とりあえず、真上に女性が来たら目を逸らす事にしよう、うん）

　そんな風に考えてると、妙なものが真上にくる。

（うん？　何だこれ……？）

　何かまん丸で毛があって、とそこまで思ったところでハッと気付く。これって犯人では、と！

（よ、よぉし。捕まえてやるぞ！）

　そう決断し、ろっこんを解除してから即座に毛玉な生物を捕獲する。

「びゅきっ！？」

　珍妙な鳴き声と共に驚いたような目を日影に向けてくる。
　何だこれと思いながらも、日影は持っていた木の枝でこの生物を退治しようとしたが、そこで漸く事態を把握した生物はバタバタと暴れ始めた。

「う、うわっ！」

　それはけして強い力ではなかったものの日影の拘束から抜け出すには十分であったらしい。
　しかし、拘束から抜け出したものの上手く受け身が取れなかったようで、ベチッと思いっきり顔面らしきところから地面に落ちる生物。

　日影は日影で、思わずバランスを崩してしまい母なる大地にヘッドバッドをしそうになる。
　互いに何とも締まりのない状態であるものの、先にその状態から脱したのは毛玉生物。
　やはり珍妙な鳴き声を上げながら、跳ねて逃げていった。

「あ、ま、待てっ」

　日影も何とか起き上がって、それを追って行く。果たして、日影の体力は持つのであろうか。　

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