下着泥棒の怪｜リアクション

下着泥棒の怪

「下着を盗む生物だなんて、面白いよね」

　下着泥棒の話を聞いた時の響タルトの感想がこれである。一言で言えば興味深いというわけだ。
　果たしてその生物は一体何なのか？　話を聞く限り、下着を盗むだけのようではあるが。

「どこかに下着コレクションを隠してるのかな？　巣を探したいな。あぁ、でも、巣ってあるのかな？　まさか下着を食べてるわけじゃないよね」

　タルトの頭の中は直ぐにその生物に対しての疑問点で一杯になる。考えれば考える程、不思議な生物だと思った。

「うん。とりあえず、罠にかけてみたいよね。下着に罠を仕掛けて囮になるのも面白そうだなー」

　情報から判断できる限り、罠にかけるのはそんな難しくはないのではないかとタルトには思えた。
　何せ、飛んできた下着を追いかけて溝に落ちるくらいだ。下着を使って罠を仕掛ければ上手くいくのではないかと思う。

　ベタベタくっつく下着とか、トゲトゲ刺さる下着とか、いっそ下着が猫とか、とタルトの中で罠の案が出てくる。しかし、これらには一つ問題がある。
　それはそんなものを穿いて動ける気がしないという事だ。ならば、死角がありそうな道に仕掛ける事になるのだが、それも流石にという感じである。

「うん、罠は止めて、ここはろっこんで猫になって捕まえるほうが確実かな」

　タルトはろっこんで猫になる事が出来る。
　この能力を使えば、不思議生物に怪しまれずに見張る事が出来るというわけだ。

「どの辺りが良いかなー」

　怪しまれずに済むといっても、行動範囲の問題は如何ともし難い。それ故に、ある程度場所を選定する必要がある。
　場所を選定したら、後で猫の姿で向かうだけである。

（さーて、一応、この辺で何件か被害があったみたいだし、可能性は結構あると思うんだけど）

　タルトは既に水を被って、猫に変身中である。
　先程から一人で歩いている襲われそうな女性の近くで隠れて待っているのだが、未だ兆候はない。

　被害者の共通点は、10代～40代くらいまでの女性という事しか今のところはない。
　タルトが見張った女性は全部それに当て嵌まるのに、何故来ないのか。

「にゃ！？」

　しかし、その考えが纏まる前に、タルトは目標を発見した。
　黒い尻尾が今見張り対象にしている女性へと忍び寄っているではないか。

「にゃー！」

　あれが正しくそうだと判断し、タルトはその尻尾へと襲いかかった。
　狙われた生物と言えば、猫が自分を襲ってくるとは思っておらず、完全に不意をつかれていた。

　しかし、それでも尻尾を振り回して、何とか逃走を開始する。
　そして、猫になっているタルトはその俊敏さを生かして追走していく。

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