【星幽塔】第二階層　廃墟に哭く声｜リアクション

【星幽塔】第二階層　廃墟に哭く声

　――その瞬間、すでに止まった筈の時計塔が、鋭く鐘を響かせる！
　深く、苦悶に満ちた弔いの鐘が、喧騒に満ちた死都に鳴り響く。
　それは思い出のよすがとなる、記憶の機械か。
　つかのま浮かび上がる、過去の風景。
　ファンタズマゴリア。

　
（――は――）
（――私は、どうなってもいい――）
（――だから、他の階層と、この子だけは――）

（――そのような状況は過ぎたのですよ。アステリズム・シェラザード）

　星の痣を頭部に抱いた、美しい女性。
　恐怖と屈辱に震えながら、それでも毅然とした姿を崩さない。

　
（――大きな力――）
（――我々には、大きな力が必要――）
（――なれば、シェラザード、アステリズムの力が――）

　怒号。
　嬌声。

　
（――すでに、特別布告は出ております。人民浄化委員会が――）
（――粛清は始まっているのですよ）

　赤黒い煙。
　街路が叫喚で埋まる。

　
（――あなたの息子を――）
（――平和的な解決を――）

（――ふざけんじゃないわよ、このハゲ）

　光。
　すさまじい光。

　悲鳴。怒号。叫喚。
　
　
　佇む、美しい女性。
　彫像のようなその顔は、悲壮な決意と、それから。

　
（――あなたは、あなたの好きなように――）
（――どうか、私の息子――）
（――どうか――）

「アヴィケンナ――」