何色バスタイム｜リアクション

何色バスタイム

■オレンジスイートな行動力

　――　トワは別に―、bath time は１人じゃなくてもいいと思うデスケドー。
　とある屋敷内廊下にて、お日様色の髪を揺らしながらトワ・E・ライトフェロゥがテクテクゆく。
　歩きながら思い出されるは本日の学び舎、寝子小でのお友達との会話。
　小学５年生、高学年の仲間入りしてまだ日も浅い中、時折雑談でふと生まれるのは大人ぶりたいお年頃な内容で。
　――　お付きのヒトとー、一緒だと変だというマス。
　話題が家での入浴関連に及んだ時のこと。もちろんお風呂なんてもう一人で入って当たり前―な感じに、皆が口にする中で、トワは真っ正直に自分の場合を述べた。
　いつもお付きの人と入っていることを。
　ちょくちょく迎えに来たこともある姿を、覚えているクラスメートもいたのだろう。
　『大人なおとこのひとと一緒なんて！』というふうな言葉が飛び交ったのである。特にやはり女の子たちから。
　（小学生から見た高校生の印象的な『大人』基準である）
　――　大事な事ですからもう一度いうデスケド、トワは別に困らないと思うデス。
　クラスメートにもそれは言ってみた。すると、どうやら困るのはお付きの彼の方だという。
　ふむん、と考える時間を持ち帰って来たトワ。
　――　フタンを減らすtestは、前にシッパイしたデスけどー。これは良い機械（←トワ嬢脳内イントネーションイメージ）デスカラー。
　思いついたらばいつもどおりに即動き始めていた。
　トワの足は、バスルームに到着していたのである。
　――　一人でもやれるところを見せるマス！
　ニュウヨークもうすませたデース！、とドヤ顔でお付きの部屋へ突撃する算段をつけていれば、当然そのお付きの人には何も言わずここにいるわけで。

「トーワーのー！ shower time が始まるのデス！」

　ちゃきーんっ、と気合の音がした気がした。
　まずはー服を脱ぐマス。
　脱ぐマス。
　…………
　……
　オットー。
　トワ嬢、両手万歳の姿勢のまま暫し待機していた模様。

「ソデシター。手伝ってくれた人はもういないのデス。惜しい人を無くした気がするマス」

　どうしてか過去形で述べられ、まるで天に召されたように扱われるお付きの人が、部屋でくしゃみしていたかもしれない。

「bath room！　今日は shower デスカラー、ジャグッチーをヒネルトー……」

　頭上から冷たい雨が降り注いだ。
　oh！　Water！　でもトワはーあわてずもちつくます。待ってみマス。
　シャワワワワーッ………
　時折手のひらにあて温度を確認するも、待てども待てども水は水のままだった。
　………ぷるぷるぷるる。
　濡れたのもあり、さすがに体もちょっと暖を求め始める。

「ヌヌヌ…… hot にならないデス？　あっ、もう片方も回すマス！」

　二つ目の蛇口もひねってみた。
　本来は、今捻った方のみ回していればすでに設定されている温度のお湯が出るはず、なのであろうけれど。
　
「暖かくはないデスケド－冷たくもないデス……allright！　タブン」

　冷えてきた体には、少し温度加わっただけでも大丈夫なように感じられたようだ。
　ようやくメインな試練たちに挑めるとばかりに、トワは難なくボディソープで体を洗った。

「これができるナラー、missionは簡単な気がするのデス！」

　この間の猫様ゲームで、伊達に（斜め上に伸びた）大人の階段を昇ったわけではないのだ。
　やっぱりトワはもうAdult Ladyですネー♪、と胸を張りながら視線でブツを探す。
　あとは頭を洗うだけ。さぁ、必要なmy item よ、姿を見せよと。
　ボディソープの棚にー、無い。
　タオルのかかってる場所にもー、無い。

「shampoo hat がない……だと……デス」

　一気に難易度が跳ね上がったのを感じ取った。
　――　……ヌヌヌヌ、hatのないシャンプはー危険が危ないデス。
　だって泡が目に入るかもしれない恐怖と戦うことになるのだ。
　その後には、シャワーの水圧まで足されて顔に落ちてくるのだ。
　トワは覚悟を決めた。

　今日の　mission　失敗

　大きく息を吸い込んで、呼び慣れた名前をバスルームから盛大に響かせた。
　――　それはそれーとしてー、これはこれーとしてー、洗ってもらうマス！
　お説教モードを纏った足音が聞こえてくるまで、あと数秒……――

このページにイラストを設定する