いっしょにスイーツ・タイム♪｜リアクション

いっしょにスイーツ・タイム♪

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「こういうモニターのアルバイトがあったんだけど……」
　と、志波拓郎が高梨彩葉に話をしたのは２日ほど前。パティシエを目指している彩葉は、その誘いに顔を輝かせた。勿論二つ返事でOKだ。
「食べ放題だし、いろんな味の勉強が出来るね！　将来の為にもいろいろ参考にさせてもらおう！」
　彩葉は傍らで「夢のようなバイトだ……」と嬉しそうな拓郎とわくわくしながらその日を楽しみにしていた。

　そして、当日。
「自分はあまり専門的なことは言えないかもしれないけど……、しっかり感想を言わないと」
　楽しみである一方ちょっと緊張気味の拓郎に、彩葉は苦笑する。
「そんなに緊張しなくていいよ。でも、確かにモニターのお仕事だもの。そこはきっちりこなしたいよね」
　２人はそう言いながら店内へ。
　だが、ショーケースに並ぶケーキを見た途端、拓郎の緊張はほどよく解れた。どれもこれも美味しそうなケーキばかり。２人でどれから食べようか話しながら、わくわくしている。しかし、２人ともその目は真剣である。
（彩葉さんも真剣みたいだし自分も頑張らないと……！　でも、俺は……口下手だから、食べてる最中は「おいしい」を連呼だけになりそうだな）

というか……食べるのに集中したい。

　拓郎の本音は、そこである。しかし、食べる事に集中する事で、より味わい、工夫や改善点を見つけられるという利点はある。
「これにしようかな」
　拓郎が色々考えている間に、彩葉は『ガトーフレーズ』と『スプリングネコジマ』、『ニューヨーク』を選んでいた。
「拓郎はどうする？」
「そう、だな……」
　興味深そうな眼差しの彩葉に問われ、彼は『ガトーフレーズ』と『ビバ・ネコジマ』を選んだ。

　ゆったりできそうな奥の席に通された２人は、さっそく食べてみる事に。拓郎は「後で感想をまとめます」と、スタッフさんから紙を貰っていた。
「私は……これから食べようっと♪」
　彩葉はさっそく『スプリングネコジマ』にフォークを入れる。その一瞬、手に伝わる感触から期待が高まった。香ばしさと野菜の香りが口元を綻ばせる。
　一口食べれば、頬が緩んだ。「おいしいっ」と思わず口に出る。野菜の甘みと食感だけじゃない。しらすの塩味もチーズの風味も程よくマッチしている。
「これ、食べ応えあるね。香草の香りがくどくないし……。春キャベツも入ってるんだね！　『スプリングダンス』と迷ったけどこっちもいい感じ」
　満足そうな彩葉の笑顔を見、拓郎も幸せを感じる。しばらく見とれていたが、流石にそれでは仕事にならない、と彼もまた『ガトーフレーズ』を一口。
（シンプルだからこそ、素材と技が思いっきりケーキに出るよな）
　彼は誰からか、『店を知りたいならショートケーキと、その店の名がついたケーキを食べるといい』と聞いた気がした。それが脳裏に残っていたのだ。
　故に、生クリームの口解けの柔らかさとミルク感に感動し、イチゴの新鮮さにも目を見張る。
「スポンジはきめ細かくて、軽い。これなら、いくらでも食べられそうだ」
　咀嚼すればそれらが混ざり合うのだ。程よい酸味とクリームの甘みが、スポンジの柔らかさが、彼から緊張を拭い去るようだった。
　彩葉もほっとした様子の拓郎を見て『ガトーフレーズ』を一口。
「ショートケーキは定番中の定番だけど、侮ってはいけないよ。基本は大切だからね！」
　と入店前に語っていた彩葉は、ふわっ、としたスポンジがほろほろ解けていく感触に「おっ？！」と反応を示した。
（生クリームの甘さといちごの甘酸っぱさがすっごく調和してる！　基本を大切にしてるのがよく分かるよ～）
　イチゴの酸味とクリームの程よい甘みがこうもよく合うと、もっと食べたくなってしまう。この絶妙なハーモニーをみせる『ガトーフレーズ』に彩葉は感激していた。
「うんっ！　基本に忠実な感じがいいな♪」
「そうなんだ……」
　彩葉の言葉に、感想をまとめていた拓郎が相槌を打つ。彩葉はケーキを食べ終え、紅茶で一息つくと、豆知識を
「ちなみにだけど、ガトーはフランス語でケーキ、フレーズは苺って意味らしいよ」
　とにっこり笑顔で披露した。

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