【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！｜リアクション

【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！

「かったりぃなあ」
　北里雅樹は盛大に欠伸をしながら保健室へ向かうところだった。
　身体測定など別にしなくてもいいのに、と雅樹は思う。
（ま、授業がないのだけはありがたいかな）
　さっさと終わらせて、さっさと教室へ戻ったら、窓際の自分の席へ戻ってそこで春から初夏へと移ろいゆくさわやかな日差しに照らされつつ居眠りしたい。
　眠気の虫が、雅樹にもうひとつ大欠伸をさせた瞬間。
　雅樹の眠気は、号泣と何者かの強烈なタックルによって吹き飛ばされた。
「ッ！」
　なんだよおい！　と怒鳴りそうになるのを堪え、転倒した自らの体を起こそうとして……胸のあたりがぷるんっと揺れるのに気づく。
「なん、だ？　おい……まさか……俺の体、女になってる……？」
「大丈夫……ですか」
　手を差し伸べてくれたのは、アスリート体型なベリーショートヘアの細身の女の子だった。
　こんな子、うちの学校に居たっけ？　と首を傾げる。
（どことなく生徒会長に似ている様な気もするけど……会長って、妹いたかな？）
　雅樹に手を差し伸べた人物、それは生徒会長の妹ではなく、弟――志波拓郎だった！
「女の子にぶつかり、ましたね。そのせい……です」
　去年もこの怪異に遭遇した拓郎は、簡単に説明しながら雅樹を立たせる。
「去年はぶつかって……捻挫しました。今年は捻挫しなかった、けど……よけきれなかった」
　拓郎は、頬のあたりをかき、苦笑する。
　さすが寝子高、相変わらずカオスだな……と雅樹は遠い目をした。
　こんな運動神経が良さそうな子ですら避けられなかったのだ。自分が避けられなくても仕方なかったんだな、と思う。窓ガラスを見遣れば、そこに映っているのはいつぞやと同じセミロングの少女。なかなか整った顔立ちで、胸も意外に大きい。
「んー、たぶん87センチくらいはあるな」
　角度を変えながら胸を反らして、目測する。見たことはないが触った感じ、多分張りのある美乳だ。
（なんかすごく弾力があって……元カノのとは……）
　ふるふると首を振る。比べるのはやめよう。
　椎井莉鳥。別れたけれど、二度抱いた彼女。いまも愛しい気持ちが消えたわけじゃない。
　彼女の痩せたからだが脳裏に浮かぶ。
　その肌に指を滑らせた感触は、いまも鮮明に残っていて……。
　雅樹の、そんな回想を打ち破ったのは、
「おぉぅ！」
　という声と、どーんという衝撃音だった。

　廊下の向こうに黒髪の小柄な娘が倒れている。
　拓郎と雅樹が駆けつけると、少女は大きな黒い目をきょろきょろさせて起き上がった。
「あれ？　何か此方に向かって来て……」
　皆まで言うな、と、拓郎は少女の肩をぽんぽんする。
　見たことない顔だが、愛李子に跳ねられた男子の誰かだろう。
「いてて……。あれ、なんだ？　タンコブふたつも出来たかも」
　童顔の少女――五代拓哉は、妙に大きく腫れあがった胸を両手で持ち上げた。
　そこにあったのは巨乳。いや、爆乳と言って差し支えないほどのおっぱいとおっぱい！　胸の部分が盛大に盛り上がったせいで、胸のあたりに使われる布の面積がふえ、その代わり可愛らしいおへそが丸出しになってしまっている。
　拓郎も雅樹は気恥ずかしくなって目を逸らしたが、拓哉は自分の体の変化はたんこぶだと信じて疑っていないようで、服の上から撫でたり押したりして、
「んー痛くない！　なら大丈夫か！」
　とスルーすることにしたらしい。
「お姉さんたちありがとう！　さっきの人から何だか面白そうな予感がするから、追いかけて見るね！」
　拓哉は元気よく走って行く。爆乳をぶるんぶるんと揺らしながら。
「元気、ですね」
　あっけにとられる拓郎の言葉に、雅樹も頷く。
「うん。すごい揺れてるけど、ああいうの、ロリ爆乳っていうのかな……」
　拓郎がしれっと高校の校舎に侵にゅ……迷い込んだ中学生だということは、気づかれなかった。
「それにしてもあの女生徒、何が、あったんだろう。たしか兄貴のクラスで見たような……」
「兄貴って、まさか……」
「生徒会長の志波、です」
「やっぱり、志波の弟！？」
　ようやく少女の正体に気づいた雅樹は、驚きで仰け反った。が、すぐに復活する。
「兄貴のクラスって３－９？」
「はい。何か情報知ってる先輩、いない、でしょうか」
「わからないけど、付き合うよ。先輩の教室って行きづらいだろ？」
　雅樹はこの状況がすこし楽しくなってきていた。
　教室に戻って突っ伏すのもいいが……もうちょっと付き合うのも悪くない。

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