【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！｜リアクション

【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！

　ベリーショートヘアなボーイッシュ少女・志波拓郎は、美乳女子に変身した３年生・北里雅樹に伴われて、兄のクラス３年９組を訪れていた。
　このクラスの生徒である播磨愛李子について話を聞くためである。
「播磨？　ああ、最近男と付き合いだしたみたいだよな。ショーゴって言ったっけ」
「ショーゴ……」
　拓郎はその名前をメモする。
「なんでも、寝子高柔道部秘伝のトレーニング法のお陰で前より痩せて、バレンタインにショーゴ君に告白し、ホワイトデーに念願の恋人同士になったって聞いたぜ」
「……恋は叶ったのに、どうして暴走してるんだ？」
　疑問を口にしたのは雅樹だ。
　クラスメイトは、その疑問に、ただ首を横に振るばかり。
「……やっぱり、播磨先輩に……直接、聞かないと」
　拓郎は廊下の窓を開けてほかの校舎や階の様子を伺った。
　騒ぎが起こっている場所こそ、愛李子の現在位置に違いない。
「……いま、あそこから叫び声が聞こえた気がする……！！」
「よし、行ってみよう」
　３年９組を出たところで、拓郎は猫耳エプロンな桐野正也に遭遇する。
「ちょうどいい着替えが見つからん……播磨にぶつかりに行くべきか……って、志波弟！？」
「桐野先輩……ですか」
　『み、みるなー！』という吹き出しが、正也の頭の上に勢いよく噴き出した。
　陸上部の後輩にこんな姿を見られて、恥ずかしいったらありゃしない。
　だが、拓郎はぐっと正也の腕を掴んで走り出した。
「悩む、くらいなら、行きましょう」
「志波弟！　お前けっこう……頼りになるな……！」

（身体測定は基本的に変化なしだったな。体重は少し増えたけど……まぁ最近割と眠れてるから良い傾向か）
　３階に戻ってきた弥逢遊琳は、廊下をバタバタと走り過ぎる女子化した拓郎・雅樹・正也とすれ違った。
　見た目はほとんど変わっていないが、さっき女子にぶつかったあと、自分も女子になっている。
　誰にも会いたくない。逃げたい。そんな思いで潜り込んだのは倉庫化した空き教室。
　去年、２年生だけの仮面集団がよく屯した部室だ。
（皆今は真面目に勉強してるのかな）
　最近はめっきり集まらなくなった仮面の友人たちにひとしきり想いを馳せる。
　楽しかったあの頃。……楽しかっただけじゃなく、いろいろなことを味わい、学び、共有し合った。
　今は、……この空き教室のように寂しい。
　持ち主のいない机をひと撫でし。
「感傷終わり。解散通告聞いてないからね僕」
　呟いて。
　遊琳はCarnevale用の仮面をつけ、ハニエルになる。
　お姫様風の白いワンピースに着替えると、急に眠気が襲ってきた。
「行かなきゃ……此処ではない、誰も居ない所へ……でも眠い……」
　遊琳はするりと音もなく空き教室を後にした。