チラシを配るだけの簡単なお仕事です（未経験者歓迎）｜リアクション

チラシを配るだけの簡単なお仕事です（未経験者歓迎）

■断じていかがわしいお店ではない
　写真館から出てきた４人の人影。
　黒エナメルで妖艶かつ美しいセクシィ黒バニーガール姿の青山絢！
　ふわふわ癒し系な雰囲気を醸し出す白バニーガール姿の塔ヶ崎璃亜！
　凛々しく、しかし柔らかな表情で背筋を伸ばす執事姿の八神修！
　飄々と軽口を叩きながらも、やるときゃやる系執事姿の紗雪幽！
　明らかにいかがわしいお店の宣伝にしか見えないこのチーム。
　女店主のバランス感覚のおかしさは店に戻ってから責めてあげてください。
　そして、４人の精鋭たちと共に存在感をバッシバシに放つ……リアル系ゴリラ着ぐるみ姿の新田亮！
　ただのゴリラ姿では人が寄り付かないのでは……と亮が考えた結果、そのゴリさんはチョンマゲのカツラを装着し、着物を羽織って手には『天晴れ』と書かれた扇子を持っているのだから、それはもうシュールな光景極まりない。
　だが、そんなゴリさんにも動じずに幽は絢と璃亜へと視線を送り。
「いやー、コスプレってけっこー楽しいっすねー」
　スタイリッシュに執事服を着こなした幽。その瞳にはもはやバニーガールしか映ってはいない。
「璃亜先輩も、絢先輩も超似合ってますよー！」
「そう、でしょうか……。流石にバニーガールの格好でアルバイトをするのは初めてです」
　璃亜が小首を傾げ、照れたように笑めば。
「へー、どんな服装ならやってことあるんですかー？」
「えぇと……メイド服とか、あと、スク水とか……」
「スク水！？」
　幽の驚きの声に璃亜が苦笑する。
「バイトで色んな格好をするのに慣れてるつもりでも……着替えてみるとやっぱり恥ずかしいものですね」
　もじもじと身を捩る璃亜の白いうさみみが揺れる。スク水でバイトも相当なマニアック感だ。素晴らしい。
　そんな璃亜のバイト話に、絢ははたと気づいた。
（バニー姿も恥ずかしいけれど……でも、バンドゥビキニ着たり、素肌にリボンだけだとかよりは、まだマシよね……）
　今日は水色のリボンだけではない、ちゃんとレオタードだ！　手首にはカフスだって、首元には黒い蝶ネクタイだってある！　頭には黒い兎耳、そして網タイツの足はピンヒールにすっぽりと収まっている！　どこからどう見ても素晴らしいバニーガールである。また、絢のような清純系の女性が艶っぽさ全開の衣装を着るのがまた素敵なわけであり……イェス、バニー！
　しかも一人じゃない、璃亜という心強いバニー仲間が隣に居る！　ここは天国か！
　そんな恥ずかしそうな素振りを見せる女性に２人の気付き、修は柔らかく声をかけた。
「とにかく、早くノルマを配り終えてお店に戻ろう。新田だって着ぐるみで長時間過ごすのは大変だろうし」
　修の言葉にウホウホと腕をぶんぶん振り上げる亮。もうすでにゴリさんモード全開である。
「こんな可愛い人達が配るんだったら超余裕っしょ！　じゃあ、早速配りますかーーーっと、あ、そこのお姉さーーん！」
　言うやいなや、ターゲットの女性目掛けて駆け出す執事な幽。
「最後まで頑張り抜いたら、スイーツが疲れを癒してくれるだろう。皆、頑張ろう」
　チラシを手に修は微笑み。人が居る方向へ歩き出すのだった。

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