突撃！あなたのお弁当タイム｜リアクション

突撃！あなたのお弁当タイム

　その日、檜扇舞華は珍しく早起きをした。
　その目的は、舞華的には『勿論』、お弁当を作る為である。
「さて、どうしましょうか」
　なんて零してみる舞華だが、『勿論』な理由があるわけなので、
「って、もう決めてるんですけどね」
　という次第で、舞華は早速、動画を撮影する準備に取り掛かった。

「はーい、おはようございます」
　場所はキッチン。
　軽妙な調子で挨拶をして、舞華は画面の向こうのオトモダチへと小さく手を振ってみせた。
　ちなみにこれ、朝撮影をしたものを、編集し、投稿した映像である。
「こんな朝もはよから動画を取るとは舞華ちゃん暇なの？　とは自分で思いつつも、寝子島の隅から何かを提供したいと思いまして、早起きしちゃったわけですよ。てなわけで本日は弁当作りです。自分の為の」
　愛らしい声で、明るい笑顔で。
　舞華は流れるような軽快さを纏った言葉を、するすると紡いでいく。
「姉さんの弁当も今日はナシです。姉さんの弁当は美味い。それだけは断言できるんですが。とか言いながら、早速弁当作り、開始しちゃいますよ。これから始まる素敵な弁当ライフの為にも、見逃さないでくださいね」
　先ずは、お弁当に必要な４項目！　と舞華が言えば、シャラン、と鳴る効果音。
　――１．中までしっかり火を通す！
　と、絶妙なタイミングでテロップが入る中、
「作り置きのおかずも、詰める前にもう一度よーく火を通してくださいね」
　特にひき肉や卵は要注意ですよ、と舞華はビシッ！　と人差し指を立ててみせた。
　――２．水気、汁気をしっかりきる！
「はい、これもめちゃくちゃ大事ですよ。例えば海苔みたいな、水分を吸い取ってくれる食材もお役立ちです」
　――３．冷ましてから詰める！
「中身が温かいまま弁当の蓋を閉めてしまって、蓋の裏に水滴が！　……って経験ないですかね？　あれ、良くないんです。水滴って、食べ物を傷めますからね。ここも要チェックです、ええ」
　――４．梅干し、酢、醤油を活用する！
「この辺りは、実は、殺菌効果があるんですよ。え？　知ってました？　それはともかく、梅干しは弁当に取り入れやすいですよね。お酢や醤油も、上手に使っちゃいましょう」
　レクチャーを終えれば、さあ、お弁当づくりの始まりだ。ＢＧＭが切り替わる中、
「基本は主食・主菜・副菜２つです。まずは美味しい御飯から」
　と、舞華はふっくらとしたご飯と梅干しを用意。
「混ぜご飯なんかで変化をつけるのもいいですよね。おにぎりもいいぞ！　……ああ、お腹が空いてきちゃいました。皆さんもですか？　ちゃんと飯テロされてますか？　というところで、次は主菜。肉魚卵料理ですね。本日は生姜焼きです」
　これは先日漬けておいた肉を焼くだけ……というわけで、
「下ごしらえのレシピはコチラをチェックしてくださいね」
　との舞華の言葉に合わせて、画面の下の方に程よいスピードでテロップが流れていく。
「副菜は野菜や海藻等を使った料理。主菜で足りないなら別のお肉を、という感じで、今回はアスパラベーコンと切干し大根です。作り置きできるものは積極活用！」
　それらを冷まして箱に詰めれば、お弁当は完成だ。
「ね、簡単でしょ？　さて、朝から飯テロもお時間になりました。皆さんも美味しい弁当作って下さいね」
　良い一日を、と手を振った舞華の笑顔が、動画のフィナーレを飾った。

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