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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
壁DON！ DON！
いつものように穏やかな時間が流れる、はずだった。
放課後の理科室。寝子高生徒の元気な声が外に面した窓から切れ切れに聞こえてくる。それでも校庭に面していない北校舎はまだ静かな方だった。
コーヒーの香りが漂っている。無精な化学教師の五十嵐 尚輝だが、これだけは拘りがあるようだ。……まあ、単なるカフェイン中毒なのかもしれないが。
彼に差し入れたお弁当箱を片付けながら、御巫 時子はその薄ぼんやりした姿をそっと盗み見た。
今日のお弁当箱も軽かった。いつも、綺麗に食べてくれる尚輝。この軽さを手に感じる度に、時子は尚輝の健康維持に少しは貢献できたとほっとすると同時に……また弁当を作ってきていいという許可を尚輝から貰ったようで、胸がトクンとするのだ。
お弁当箱を鞄に仕舞い、改めて顔を上げた時子は、その黒く艶やかな瞳を少し大きくした。
視線の先にはくたびれた白衣を着た尚輝の姿。彼はそこら中に散らかっている実験道具をのんびりと片付けていたのだが、彼が無造作に重ねたビーカーが今にもぐらりと崩れそうだったのだ。
「先生、危ないです！」
時子が思わず声をかける。しかし尚輝はそのぶ厚い前髪に隠れた細い目を時子に向け、きょとんと首を傾げた。全く気付いてないのだ。
時子は急いで尚輝に駆け寄った。今日も尚輝の役に少しでも立てるようにお手伝いをしよう。少しでも長く……一緒に居させて下さい、先生。
そしてそれは偶然だった。
黒板を消し終えた時子の鼻腔をコーヒーの香りがくすぐり。ああそうだ尚輝先生がコーヒーを淹れてくれていたんだったと時子が無防備に振り向くと、とんと鼻先に何かがぶつかった。
「……とっ！」
（え？）
驚くと同時に時子はぐらりとバランスを崩す。そのまま黒板に背中をつけば、同時に顔の横に何かがあった。
視界が、暗い。訳も分からずゆっくりと顔を上げれば。前髪から覗く尚輝の瞳がすぐ傍にあった。
―――息ができない。
黒板を背に、時子は尚輝に閉じ込められていた。
動けない。声が出ない。それなのに鼓動は口から飛び出るのではないかというくらい大きく脈打っていて。頬が熱くてたまらない。ようやく動いた両手で、時子は顔を押さえた。朱を吸い上げたかのようなこの頬を、先生は気付いてしまっただろうか。
尚輝の体温すら感じる距離に、時子はくらりとした。コーヒーと薬品の匂いが時子を包む。それはいつもの尚輝の匂い。今自分は抱きしめられるようにその匂いに包まれているのだ。
尚輝の右手が自分の顔のすぐ傍にある。この顔をちょっと横にすれば、彼は私の頬に触れてくれるだろうか。いつも薬品を扱って少し荒れてる、意外に大きなその手で。
愛しさが、募る。この距離でどうして貴方に触れないでいられようか。時子はそっと手を伸ばした。尚輝の左胸に触れたくて。彼の鼓動を感じたくて。先生は、ドキドキしてますか？ ―――私と同じくらい。
けれど、彼のシャツに時子の白い指先が触れる直前。ビクリと尚輝が動き、その胸が少し離れた。時子は思わず口を開いた。
「もう少しこのままで……」
はしたないのかもしれない。彼の匂いに酔ってしまったのかもしれない。抑えきれない想いが溢れ出す。縋るように時子が尚輝を見つめると、その前髪に隠れた眉がほんの少し困ったように寄せられた。
「無理ですよ御巫さん……」
囁くように尚輝が言う。そしてその体が時子から離れた。
「……コーヒーが、冷めちゃいます」
尚輝が左手に掲げたのはビーカーに入ったコーヒー。尚輝がぽりぽりと頭を掻いた。
「コーヒーが入ったから持ってきたんですが、僕の不注意でしたね。コーヒーがかかりませんでしたか？」
「あ……は、はい……」
呆然と答える時子。尚輝が良かったと頷いた。
「じゃあちょっと休みましょう。そうだ、理事長が何かお菓子をくれたんだった……」
そう言いながら準備室に戻る尚輝の背中に時子は手を伸ばしかけ、そっとその手を戻した。
―――魔法にかけられた時間は終わったのだ。
そして何事もなかったかのように、二人きりの穏やかな時間がコーヒーの香りとともに理科室に流れる。
時子のさざめく心と熱い頬だけ置き去りにして。
放課後の理科室。寝子高生徒の元気な声が外に面した窓から切れ切れに聞こえてくる。それでも校庭に面していない北校舎はまだ静かな方だった。
コーヒーの香りが漂っている。無精な化学教師の五十嵐 尚輝だが、これだけは拘りがあるようだ。……まあ、単なるカフェイン中毒なのかもしれないが。
彼に差し入れたお弁当箱を片付けながら、御巫 時子はその薄ぼんやりした姿をそっと盗み見た。
今日のお弁当箱も軽かった。いつも、綺麗に食べてくれる尚輝。この軽さを手に感じる度に、時子は尚輝の健康維持に少しは貢献できたとほっとすると同時に……また弁当を作ってきていいという許可を尚輝から貰ったようで、胸がトクンとするのだ。
お弁当箱を鞄に仕舞い、改めて顔を上げた時子は、その黒く艶やかな瞳を少し大きくした。
視線の先にはくたびれた白衣を着た尚輝の姿。彼はそこら中に散らかっている実験道具をのんびりと片付けていたのだが、彼が無造作に重ねたビーカーが今にもぐらりと崩れそうだったのだ。
「先生、危ないです！」
時子が思わず声をかける。しかし尚輝はそのぶ厚い前髪に隠れた細い目を時子に向け、きょとんと首を傾げた。全く気付いてないのだ。
時子は急いで尚輝に駆け寄った。今日も尚輝の役に少しでも立てるようにお手伝いをしよう。少しでも長く……一緒に居させて下さい、先生。
そしてそれは偶然だった。
黒板を消し終えた時子の鼻腔をコーヒーの香りがくすぐり。ああそうだ尚輝先生がコーヒーを淹れてくれていたんだったと時子が無防備に振り向くと、とんと鼻先に何かがぶつかった。
「……とっ！」
（え？）
驚くと同時に時子はぐらりとバランスを崩す。そのまま黒板に背中をつけば、同時に顔の横に何かがあった。
視界が、暗い。訳も分からずゆっくりと顔を上げれば。前髪から覗く尚輝の瞳がすぐ傍にあった。
―――息ができない。
黒板を背に、時子は尚輝に閉じ込められていた。
動けない。声が出ない。それなのに鼓動は口から飛び出るのではないかというくらい大きく脈打っていて。頬が熱くてたまらない。ようやく動いた両手で、時子は顔を押さえた。朱を吸い上げたかのようなこの頬を、先生は気付いてしまっただろうか。
尚輝の体温すら感じる距離に、時子はくらりとした。コーヒーと薬品の匂いが時子を包む。それはいつもの尚輝の匂い。今自分は抱きしめられるようにその匂いに包まれているのだ。
尚輝の右手が自分の顔のすぐ傍にある。この顔をちょっと横にすれば、彼は私の頬に触れてくれるだろうか。いつも薬品を扱って少し荒れてる、意外に大きなその手で。
愛しさが、募る。この距離でどうして貴方に触れないでいられようか。時子はそっと手を伸ばした。尚輝の左胸に触れたくて。彼の鼓動を感じたくて。先生は、ドキドキしてますか？ ―――私と同じくらい。
けれど、彼のシャツに時子の白い指先が触れる直前。ビクリと尚輝が動き、その胸が少し離れた。時子は思わず口を開いた。
「もう少しこのままで……」
はしたないのかもしれない。彼の匂いに酔ってしまったのかもしれない。抑えきれない想いが溢れ出す。縋るように時子が尚輝を見つめると、その前髪に隠れた眉がほんの少し困ったように寄せられた。
「無理ですよ御巫さん……」
囁くように尚輝が言う。そしてその体が時子から離れた。
「……コーヒーが、冷めちゃいます」
尚輝が左手に掲げたのはビーカーに入ったコーヒー。尚輝がぽりぽりと頭を掻いた。
「コーヒーが入ったから持ってきたんですが、僕の不注意でしたね。コーヒーがかかりませんでしたか？」
「あ……は、はい……」
呆然と答える時子。尚輝が良かったと頷いた。
「じゃあちょっと休みましょう。そうだ、理事長が何かお菓子をくれたんだった……」
そう言いながら準備室に戻る尚輝の背中に時子は手を伸ばしかけ、そっとその手を戻した。
―――魔法にかけられた時間は終わったのだ。
そして何事もなかったかのように、二人きりの穏やかな時間がコーヒーの香りとともに理科室に流れる。
時子のさざめく心と熱い頬だけ置き去りにして。
あとがき
担当マスター：
ＫＡＮ
ファンレターはマスターページから！
ＫＡＮです。
ご参加の皆様、ありがとうございました！
こんなにバラエティに富んだ壁ドンアクションが来るとは……！
いやもう「こんにゃろ～！」とによによしながらリアクションを書かせて頂きました。楽しかった！
皆様のアクションにかけられた思いが少しでもリアでお伝えできていれば幸いです。
それでは。
また皆様にお会いできること、楽しみにしています！
ご参加の皆様、ありがとうございました！
こんなにバラエティに富んだ壁ドンアクションが来るとは……！
いやもう「こんにゃろ～！」とによによしながらリアクションを書かせて頂きました。楽しかった！
皆様のアクションにかけられた思いが少しでもリアでお伝えできていれば幸いです。
それでは。
また皆様にお会いできること、楽しみにしています！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2017年08月29日
- 参加申し込みの期限
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- 2017年09月05日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2017年09月05日 11時00分
