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【新歓】幻刀奇譚 ~剣撃問答~
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とにもかくにもつかで、世に経(ふ)る人ありけり……とは、はてどこの言葉だったか
それはさておき。現世もそのような人で溢れていたならば、この後の戦は起こらなかったものでせう
譲れぬモノを賭けて、いざや始まる大戦なり ――
悠々と木霊する語りの後、暗闇に薄っすら浮かび上がるはJ機関の隊員たち。
木々に覆われた深き森へ、礼を重んじるように胸に手をあて辰砂(
服部 剛
)が声を張った。
「どうしても共存は出来ぬか! 出来うる限り自然は壊さぬ。
だがより豊かに、文明を広げていくにはこの地がどうしても必要なのだ!」
「其れは誰にとっての時代だ」
「其れは誰にとっての利だ」
それは重圧感。
それは威圧感。
奥の古木(舞台上手)のてっぺんに、白地に赤混じるキツネ面。
森手前の古木(舞台下手)のてっぺんに、黒地に蒼混じるキツネ面。
「其方らは我等の王に非ず」
「其方らは我等の王に非ず」
「我が王は暗夜の光のみ」
「我が王は紅輝獅子のみ」
真紅の牡丹を風に揺らし『紅輝獅子』(
獅子目 悠月
)が紡げば合わせ鏡の如く、
濃紺の牡丹を揺らし『暗夜の光』(
オルカ・ヴィヴァルディ
)が言の葉重ねる。
牡丹の意は「王者の風格」。妖の中でも上位に位置する二人で一人の妖を前に、新人隊員たちは呑まれるのを必死に堪えるように一歩下がる。
紅輝の視線が気高く凛と、射るように見下ろした。
暗夜の吐息が冷たく微笑んだ。
「故に従わない」
「故に譲らない」
今、悠月自身と紅輝獅子との思いが重なっていた。
―― 役者の経験はないから心配していたが……こういう役なら解りやすい。理解できる。
そうだ、居場所を簡単には明け渡す気はない。
奪われぬ為に、護る為に、俺が俺である為に。
シャンッ、と紅輝の右足が一歩前へ。
「此処は我等の土地である」
「此れは我等の命である」
「去れ」
「去らぬなら消えろ」
シャリンッ、と暗夜の左足が一歩前へ。
同時に深森中に、高らかで激しき歌声が響き渡った。
それは庇護と拒絶。
敵へは容赦なく、仲間へは奮起させるように、オク上を歌う紅輝とオク下を歌う暗夜の旋律が一片のズレもなく重なり合う。
「来るぞ!!」
「構えろ文月!」
「はい!」
「響、準備はいいか。優れた楽師がいるからこそ退魔士は真の力を引き出せる。目にもの見せるぜ」
「了解……幸太郎も続け!」
「分かりました!」
牡丹の王たちの歌声に辰砂が叫ぶと同時に、ずっと周囲を囲んでいた他の妖たちも一斉に襲い掛かった。
奏者たちは互いの味方へと音を届け織り放つ。
―― 最初は難しいなって思ったけど要はアレでしょ、
俺は俺の悠月の思う様にしか歌わないって、そーいう事デショ。
共に歌う時はいつだって、自分は悠月であり悠月は自分である。
妥協など許さず、その時持てる全てを出せ、もっとだと自分を煽りすらする悠月の熱く澄んだ歌声に、重ね彩らせるのは自分の役目、自分の歌の証明。
戦いの曲として始めから飛ばす悠月の声に、世界に添わせる音でオルカは音楽としての厚みを足す。
―― 魂の双子……俺とオルカなら可能だと思った。
どこまでも応えてくる蒼き声に、悠月は無意識に微笑む。
ああ。あの蒼だ。水底で想い苦しい程に求め歌い紡いだあの蒼が、今は目の前にある。
それだけで負ける気などしなかった。まるで戦いを楽しむかのように紅に弧を描いた。
歌も楽器も、音を奏でるという点では同じだ。
音楽で負けるつもりは無い。
ヴァイオリンの旋律に、合わせるでもなくしかし完全に反発するでもない二人の歌い手。
観客の耳に決して不快に音がぶつかり合わないよう、歌詞では無く音として発声し戦曲として創り上げられる。
―― 意図するところがビンビン伝わってくる……ああ分かってるぜ、こっちも音楽で負けるつもりも無ぇ。
戦う役者たちの動きが活きるよう、ヴァイオリン奏者たちは袖に捌けて音色で参戦する。
神嶋 征一郎
の旋律も、練習時以上にアップテンポに、剛を中心とした動きに合わせさながら和のロック調。
必死に乱さないよう音を重ねる
藍川 慶介
と、征一郎の間を調和させるように
篠崎 響也
が双方の音色を拾って。
いつの間にかそれぞれの力を煽るように、古琴の繊細な存在感が混ざっていた。
「おっしゃ、力沸いてきたぜっ!」
槍握る手に一際力を込めれば、緑簾(
楢木 春彦
)が跳躍で妖の攻撃を避けその背後から大振りに薙ぎ払う。
力劣る新人へ群がろうとしていた妖たちを、渾身の一突きで蹴散らし死路を活路へと導いて。
「今だ! 文月行けーっ!」
「はい! 今度はこちらが攻める番です!」
防戦一方と見せかけ、下級妖たちを誘い込んでいた文月(
史越 奈津樹
)が相棒刀「黒端」を翻して、緑簾に続き一気に畳みかけた。
リンッ シャンッ
耳のすぐそばで鳴ったように感じた鈴の音に、ハッと気付いた文月が咄嗟に刃を盾にしたそこへ、暗夜の刀が舞い踊るように強く打ち込まれた。
歌い戦う奏者。紅輝と暗夜が入れ替わり立ち替わり、身を翻す。
赤の面と蒼の面が旋律に合わせ、時に柳の様な優雅な動きで攻撃を受け流し。
リズムよく刻まれる鈴の音は、歌声と共に妖たちを一層鼓舞する。
ヴァイオリンの音色に背中押された緑簾が、スピードにのって押され始めた文月を援護した。
「オマエらにゃ悪ぃケド時代は流れてんだよ!
古いだけじゃやってけねぇんだ。便利になって何が悪ぃんだよっ?」
「……殺して殺して殺し尽くして、神が居いなくなった死んだ土地でどう過ごすか。見物じゃのう」
「っ! 緑簾後ろへ避けろ!」
槍「橄欖」を牡丹の刃二つで受け止められ、力で圧そうとした緑簾へ辰砂が咄嗟に声を放った。
身に沁みた声音に条件反射で動いた緑廉の、圧そうとした位置に細かな剣技が雨のように降り注いだ。
赤と蒼の口が同時に紡ぐ。
「烏扇か」
「やれ重たいブツを軽くしてやろうとしたのじゃが。意外と身軽じゃのう」
羽踊る衣を纏った烏扇(うせん)と呼ばれた烏天狗(
小犬丸 信乃
)が、カラリと下駄を鳴らしひらりひらりと義経公が如く木々の間を飛び回る。
―― ここは舞台。魅せた者が勝者でござる。
純粋な戦いとしての剣技においては無駄な動きに思えるが、信乃は観客の視点を大いに理解していた。
それに倣うようにして、春彦もにっと笑い受けて立つ。
宙を跳ぶ俊敏さ、名のある妖の挑発に、心から戦える喜び焔を瞳に宿し緑簾は槍をダンッと突いて宙を追う。
(舞台床が傷つかないよう補強板敷いた所へ。さながら棒高跳びのように)
三尺刀「竜血」と拳銃「汞(みづかね)」を巧みに使い分け、接近戦のみと思わせ距離を取って来た妖をすかさず拳銃で打ち抜きながら、辰砂は緑簾の加勢に加わった。
互いに背中を預け合い、まるで竜巻の中心として敵を圧倒する辰砂と緑簾。
「おや、まだお前はそんな所に居るのだな。『同族狩り』」
「………終夜(よすがら)……」
「えっ、隊長……っ?」
降って湧いた言の葉に、隊員たちに動揺が走った。
愉快そうに古木たちの暗闇の隙間から、夜色に白き結び目揺らしながら終夜(
シグレ・ナイトウォーカー
)が姿を見せる。辰砂の動きに微かな躊躇いが生まれたことに緑簾が気付く。
「……何故お前がいる。このような戦いに興味など無い奴だろう」
「興味? 大いにあるさ。こうも一匹の妖の投げた小石で、あっさりと波紋を生ませる者どもに」
「なん、だと……?」
「おっと。勘違いしてもらっては困る。小石を投げたと言っても、ほぼ足元に置いただけ。
それに躓くもどこへ向けて放るも意思次第。心にくすぶっていた物が元々あったからこうなったのだろう」
「貴様……終夜!!」
辰砂へ語られる言葉を遮り、奏でたまま一柾が荒い声で叫ぶ。
「誰だったか……ああ、撒いた小石に躓き過ぎて命失った滑稽者の仲間だろうか」
「ふざけるな! てめぇだけは……っ!!」
音色に怒りが交じれば、弾かれたように隊員たちが終夜に斬りかかった。
不敵な笑みを崩さぬままに、「夜香」と呼ばれた刀がまるで意思を持つかの如く主人の手を借り、隊員たちの刃を次々捌き受け流す。
激しく鳴る刃音とは裏腹に、終夜は夜香を持ったままゆったりとした足取りで辰砂の方へと近づいていく。
「似た者同士であったのに、どうしてお前はそこにいるのか」
「違う! お前と俺は似てなどいなかった!」
「似ていたさ。人にも妖にも興味無く、それぞれの向かう道が時におかしく眺めていたではないか」
「とっくに俺は選んでいた! 未来を紡ぐ『人』を俺は選んだ!」
「その度に、妖と疑われては迫害を受けていたのにか」
終夜の語り口に迫力が増すごとに、周囲から刃の音が消えていった。
明らかに、機関の仲間の視線は辰砂に集中していた。不信、疑惑、それに色を染めて。
辰砂は揺るがない。もう慣れているから。
目の前の妖へではなく、仲間たちへと声を向ける。
「……そうだ。俺の妖名は『蛟竜』。蛇でもなく龍でもない半端者」
「そんな……隊長が……」
戦意すら失いかけた隊員たちの間に、怒号が駆け抜けた。
「関係ねぇ!!!」
「……緑簾……」
周囲の妖を睨んだまま、辰砂に背を預けたまま、緑簾は紡ぐ。
「俺らの隊長が今まで一度だって俺らを裏切った事があんのか!」
「緑簾……俺は……」
「あんたもあんたっす! 隊長! ………俺は、知ってた」
「…………」
「どれだけ一緒に背中預けて戦ってきたと思ってるんすか。
それでも俺の中では関係無かったんだ。辰砂隊長は辰砂隊長だって」
「ふむ……つまらんな。ならばその『辰砂』を消せば良いのだろうか」
言うが刹那、音もなく終夜が、夜香が、辰砂に向かって一太刀を振り下ろしていた。
誰かが声を出す隙間も無かった。身体が地面へと崩れ落ちた音がした。
だが、それは辰砂でなく、
「緑簾!!」
ほんの微かな、終夜では無くその刀『夜香』の殺気を感じ取った緑簾が、咄嗟に辰砂を庇っていたのだ。
繰り返していた戦の旋律がスローダウンし、悲愴が満ちては辰砂と緑簾を包み込む。
「なにやってんすか、隊長……アンタが倒れたら隊は……お終いっすよ……」
「緑簾、緑簾、すまない……っ」
「人に庇われるとは、情けなくもなったものだ。ああ、だがついでだ。
その人間の後を追って、『辰砂』という存在を消すのも悪くないのではないか。何なら手を貸そう」
楽しそうに瞳を細めている終夜だが。
深淵浮かべるその瞳の中には、なんの感情も読み取れなかった。
理解出来ないのだ。
命を失うということが。失う者の悲しみが。誰かを想うということが。
古樹の化身は、ただただ流れる時に嫌気がさして、変化求めただけなのかもしれない。
「人間が、俺の前で倒れる姿は見たくなかった。だから中尉にまで上り詰めた……守る為に。
それが果たせない己が許せない」
「ならば、」
「だが」
瞼を閉じた緑簾を文月に預け、辰砂は立ち上がる。
「大事な部下なら……それは俺の逆鱗だ。終夜、これ以上やらせはしない。
部下たちを、絶対……死なせはしない……!」
轟きを上げた辰砂の、頬にかかった髪が掻き上げられれば龍の鱗が顕わになった。
もう隠さない。隠さなくとも守れる戦える。
その決意に二つのヴァイオリンの音が寄り添った。
「待ちくたびれたぞ辰砂殿。……信じていた」
「一柾、もしやお前も知って……」
「いくぜ、最後まで振り絞れ!」
「おお!!」
一柾の号令、大地を力強く蹴った辰砂の背に導かれるようにして、隊員たちに力が戻る。
水色と橙色の旋律が、螺旋状に絡まり合い戦場を包んでいった。
―― ……すごい……先輩たち、練習の時より断然……。
佳境を迎える演奏するは征一郎と響也の競演。
その熱量と技法がどんどん高まっていくのを、傍で慶介が感じ取っていた。
互いに張り合うからこそ生まれる旋律。
―― 本当に、すごい腕前だと思う。だけど俺だって負けてない。
認められ嬉しいとも思うし尊敬すらしている。しかしそれだけでは追いつく事は無いのを響は、響也は分かっている。
絶対にあいつを追い越す。
協奏の音色に、退魔士に力を与える事より『一柾に勝ちたい』という役と現実の自身の思いが混在し始める。
混ざり合うでも無くしかしぶつかり反発するでもない、2色の螺旋が織り成す流美な動きに、微々たる揺らぎが出始めたのをふと征一郎の視界が捉えた。
―― ……てめえにも見えるはずだろう。見えるはずのもんを見なくなるようじゃまだまだだ。
橙色の系譜が美しき螺旋形から僅か外れた瞬間、征一郎は外れた部分を補うように音を増やしフォローした。
ハッとする響也。
対抗意識の方へ熱を込めた故に、舞台としての演奏においてミスをしていた事に気付く。
弓持つ手をきつく握りしめ……すぐに元の旋律へと戻った。
―― 俺の役目は、奏者として今は仲間を支援する事。
本来の音を奏で出した響に、ふ、と一柾が笑みを作った気がした。
「……牡丹の。このように好きにさせていいのか?」
戦局はあっという間にJ機関の力が増し妖たちを制圧し始めていた。
夜香を振るいながら、いつの間にか歌声はするものの鈴の音は響かせなくなった牡丹の王たちへ、終夜が見上げ問いかける。
「我等は誰が道標の上も歩かぬ」
「我等が歩くは我の王が示す道のみ」
紅輝と暗夜の言の葉に、終夜の表情から愉快そうな笑みが薄れた。
……聞かれていたか。
利用しようとしていた事が知れたのだと分かれば、これ以上彼らの怒りを煽るのは無意味というもの。
今回は潮時のようだ、そう判断しては背後から正確に打ち抜いてきた辰砂の銃弾を終夜は身を引いて避け。
「仕方ない。そろそろ夜の誘いに身を預けるとしよう」
「終夜……っ」
「蛟竜、これからお前がどのような道を往くのか、楽しみにしていよう」
「俺はJ機関の中尉、この隊の隊長『辰砂』だ」
睨む龍の光宿す瞳へ笑いを残し。
終夜が体を翻そうとした所を、『逃がすか!』と他の隊員が刀を振り上げた。
キィンッと何かが刃を弾く音。
「……勿(なかれ)か……いいのか、お前も俺などを助けて」
「同胞失う勿、命捨てる勿……」
「ふ……相変わらずか」
武器と呼べる糸『藍微塵』が刃を受け止めているのを横目で見つめてから。
声のみで姿は現していない勿(
霧谷 朧
)へ向けて。
臆病、というよりはお前も譲れぬものを護っているだけなのだろうな、と最後に呟けば、古木たちの影の中へ終夜はその姿を沈めた。
気付けば牡丹の王たちも姿を消して。ただ、森からはまだ威圧感が残っている。
「今日はもういい……戻ろう、緑簾を早くしっかり手当せぬと……っ」
「あの、隊長それが……」
「? どうした、……まさか!?」
戦中、緑簾を護るようにしていた文月から力無き声が聞こえれば、表情一変させ慌てて辰砂は緑簾へと駆け寄った。
「緑簾駄目だ! このような所で死ぬな!!」
「…………スー………コーーーッ………」
「………………ん??」
「いえ、あの。実は、皆が戦っている最中、あの妖……染井、が現れて」
「何?」
「『俺に名を訊ねてくれたお礼ですよ』と……緑簾さんの傷を塞いでくれて。
ちゃんと手当は勿論した方がいいですが、恐らくもう命にかかわる程では無い、かと」
「……そう、か……」
心から安堵した、どこか泣きそうな笑顔をこぼして辰砂は座り込んだ。
「なら、そいつ今寝てるだけってことだな……こんな重てぇの運ぶの面倒くせぇ……殴って起こすか」
「一柾さん、一応怪我人だから」
溜息と共に一柾と響も寄ってくる。
『帰ろう……俺たちの居場所へ』
その隊長の一言で一人、また一人と歩き出して行けば、森から隊員たちの姿は無くなった。
残された風に葉を揺らす古木の影に、染井(
花厳 望春
)の姿。
「……存在を、その名を知る者がいなくなれば人でも妖でも無い、もはやここに在るのか分からないから。
だから俺は少し嬉しかったのだろう……人に名乗られ、名乗り返せたことが」
ただ、と小さく呟き。
「それは、もしかして人にも妖にも同じことが言えるのでは、と思いもするけれど」
薄桃映える口角を微か上げて、その姿をやはり木々の奥へと消していった。
―― さてこの度の戦はどちらも譲らずどちらも引くに留まったようで。
しかして譲れぬものが変わらぬならば、双方はまた再び相まみえましょう……。
衝立が音も無く静かに倒れた。
語り部が、暗闇からライトの中へと一歩入る。
被衣の如く華やかな、白と藤がよく映えた着物姿の人の姿。
ふと鈴蘭(
弥逢 遊琳
)と称した人物は可笑しそうに吐息つき、被衣をばさりと脱いだ。
わっ……と観客から感嘆の声が漏れる。
頬から首筋、胸元や脚、腕、そして着ている白襦袢、全身に至る無数の花々と植物の輪郭。
結い上げられた髪に挿さるのと同じ花の色をした両耳ごと傾いで、花びらの指先を口元へ当て。
「人の子とはかくも可笑しき、愛おしき。
何千年、何万年見ていても飽き無かろう。はて今後はどのような歴史を魅せてくれようか……
我は鈴蘭であり紫蘭。身の裡に花を飼う妖……
この夕顔(古琴)と共に、また人の子のなりをして見守るとしようぞ……」
妖艶に微笑めば踵を返した。
その背、着物の裾からは藤のたおやかな尾を揺らし、舞台の奥へと去って行った。
シン、と静まり返った舞台と観客席。
程なくして、講堂全体が割れんばかりの拍手で溢れ返った。
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日常
学校生活
定員
1000人
参加キャラクター数
64人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年08月23日
参加申し込みの期限
2017年08月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年08月30日 11時00分
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