せんせいといっしょ：川添先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：川添先生編

「先生、ボーッとしちゃダメですよ」

　ぽん、と軽く肩をたたきろっこんらしき現象を眺めている川添先生へと、水上桜は声をかけた。
　春のさぼりたいような陽気の一日とはいえ、いきなり外へ出て材料探し。
　すごく、なんというか、行き当たりばったり感を感じるわけだが――。

　まぁ、それはそれで面白そうってものよね。

　そんな無責任な感慨を抱きつつ歩いていると、ぼやっとしている川添先生の姿を見つけ、心配になったのだった。
「やぁ、君はえーっと、桜ちゃんだっけ。ごめんごめん、ボーッとしてたかなぁ。母とかにはよく言われるんだけど、まいったな」

　これだから学生気分が抜けていないって怒られるんだよねぇ。
　苦笑しながら言う川添先生に、桜は「だめですよ、ちゃんとお仕事しないと」と笑いながらからかうように言ってみる。

「私、アクセサリー作るのが好きなんですよ。だから実はこの授業楽しみにしてたんです。造形とかは得意なので――もっといろいろ、教えてくださいね」
「へぇ、そうなんだ？　桜君はどんなものを作るの？」
「そうですねぇ……例えば――」
　鞄に入れていた最近作った作品を見せながら、「この辺随分苦労したんですけど、後一歩って感じで……でも、割と気に入ってるんですよね」などと説明して見せると、「あぁ、これは確かに工夫の跡が見えるねぇ。いいんじゃないかなぁ？　よくできていると思うよ」と返す川添先生。

　二人でそんな何でもない会話を繰り広げていると、最初だからと遠慮していたのだろうか。
　やや遠巻きにしていた生徒達が、段々と周りに増えていき――どうやら、先生と話したいのは桜だけではないようだった。

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