春の！プレゼント交換会｜リアクション

春の！プレゼント交換会

■レジンに込めた想い
　アクセサリー作りは、奥が深い。
　デザイン性もさることながら、選んだパーツの素材や色により無数のパターンが出来上がる。
『アクセサリーを作っている時が時が何よりも幸せ！』と言い切れる水上桜は、一枚の張り紙を眺めていた。
　プレゼント交換会。手作り品も可、という文字を見れば「何か作ろう！」と思わずにはいられない。
（どんなアクセサリーにしようかな……）
　悩みながら歩く桜。ふと見つけた公園に入り、そっとベンチへと腰かけた。　

（どんな人の手に渡るかもわからないし……）
　あまり女性向け、男性向け、と限定されないデザインのものが良いだろう、と思う。
（こないだ、作ったのは白いレース風のチョーカーでしょ……）
　桜花寮の同室の子にプレゼントしたチョーカー。
　シルバーのハートリングをチャームとしてあしらった、桜の自信作。
（今回は……）
　鞄から、桜はルーズリーフを取り出した。
　そして心の赴くままにプレゼント用アクセサリーのデザイン画を描き連ねていく。
（……このデザインだと、男っぽすぎるし……）
　シャシャシャッと軽快にペンを走らせる桜。
（……これだと、可愛すぎちゃう……）
　あ、でも色を変えれば……など、カラーペンも使用し様々なパターンのデザイン画を作り出す桜。
（……よし、これなら良さそう！）
　桜のルーズリーフの中には、黒いチョーカーのデザイン画。
　星空に十字架が映えるデザインのチャームをレジンで作り、ポイントとすることに決めた。
（そうと決まれば）
　桜は立ち上がった瞬間、公園の前をポニーテールの少女が歩くのが見えた。
（新聞部の人、かな？）
　楽しそうな表情で、手には愛らしい包み。
（交換会に参加するのだったりして）
　そう思うと、少し笑みが零れる桜だった。

　行きつけの手芸店の中で、桜は真剣な表情を見せる。
　黒いチョーカーと言っても、素材はマチマチ。その中で今回、桜はベロア素材のものを選んだ。
（チャーム用の夜空と十字架は……）
　写真をそのまま使うことも可能だが、そんなお手軽な方法ではなく。夜空の星の輝きを作り出す金色のビーズや砂、そして十字架を丁寧に選び出す桜。
　アイテムを選び、レジへ持っていけば……
「お会計、2500円よ」
　馴染みの店員のハキハキとした声。
（あぁ、どれを買うの止めようかな）
　落胆する表情の桜に気づいているのかいないのか、店員は
「が、そうね、1800円でいいわ。桜花寮、慣れた？」
　たまに会話する店員が微笑みと共に桜を見る。
「いいんですか？」
　勿論、と頷く店員。
「今日も、桜花寮の部屋でレジンでアクセサリー作るんです。こないだプレゼントしたチョーカーも、部屋の子にあげて……」
　桜の嬉しそうな言葉に、店員は穏やかな表情を浮かべるのだった。
　
　桜花寮の自室に戻れば、早速始まるアクセ作り。
　購入したアイテムを机に並べ、チャーム作りから始める。
　公園で作成したデザイン画と見比べながら、十字架を配置。少しずつレジン液を足し、時間をかけて層を作りながら煌めく星を立体的に現していく。
（……楽しいっ）
　思わず笑みが零れる桜だった。

　しばらくして。桜お手製のチョーカーは完成した。
　ベロアの首紐の長さを調整できるように作成し、試しにそっと自分の首にあててみる。
「……けっこう上出来、かな」
　シンプルながらも夜空が輝くデザインは上品に見える。
　アクセサリー作りが楽しいのは勿論だが、それを身につけた人がどう思い、どうコーディネートに使ってくれるのか。
（いつかどこかで、偶然私が作ったアイテムに出逢えたら）
　こんなに幸せな事は無いだろう、と桜は思うのだった。