春の！プレゼント交換会｜リアクション

春の！プレゼント交換会

■厳選した末に
（うーん……なやむ）
　眠たそうに見える表情は通常運営、そんな志波拓郎は一枚のポスターの前で立ち尽くしていた。
（なにに、しようかな？）
　誰に渡るかわからないプレゼント選びはとてもとても難しい。
（たとえ、特定の相手にあげるのにもすごく悩むのに）

　拓郎の脳裏に大好きな彼女の姿が現れる。それはホワイトデーの記憶。
　プレゼントした桜色のフリル付きポーチに、彼女はとても喜んでくれた。
　その時の思い出は、プレゼントした側である拓郎にとっても幸せな宝物になったものだ。
　相手が喜ぶ贈り物を選ぶのはとても悩み、難しいことだけれど。
（だからこそ、もらって喜んでもらえたら、とてもうれしい……よね）
　妥協せず、しっかり選ぼう。
　そう気合をいれる拓郎だった。

　だがしかし。
　そうそう簡単にプレゼントは決まらない。
　いくつかの店を出入りしては。
（女の子に渡る可能性もあるし、帽子とか衣料品はむずかしいよね……）
　そっと帽子を置き、またぶらぶらと他の店へ。
（アロマ、か……）
　柔らかな花の香りが鼻腔をくすぐる。
（自分は好きな香りだけれど……）
　様々なアイテムを見れば見る程、一長一短に思えてくる。

　そして拓郎が足を踏み入れた、手芸用品店。
　手作り用のアイテムは勿論、完成したぬいぐるみや手作り風の小物が愛らしく並べられている。
（……お、美味しそう……！）
　フェイクスイーツの置き物やアクセサリーに思わず目を奪われる拓郎。
　完成度も高く、お皿に置いてあれば本物と思ってしまいそうな程。
　大のスイーツ好きである拓郎。
　例え偽物であろうとスイーツ小物を置いておくのもいいかもしれない、と少し思う。
（食べられないから、なくならないし……）
　美味しそうなシュークリームのメモスタンドは再現率も高く、拓郎の瞳がキラキラと輝いた。
（……いけないいけない。プレゼント探さないと）
　ふるふると頭を振り、偽シュークリームを棚に戻す。
　他のお店を当たろう、と拓郎が店を出ようとすると、一人の少女とすれ違った。
　前髪を切りそろえた黒髪の少女はたくさんの手芸用品を抱えている。
（うわぁ、手芸材料をいっぱい買ってる。……作る人、かな……？）
　少女の楽しそうな表情を見れば、
（手作りもいいかも）
　以前、お花見に合わせてカップケーキを手作りしたのを思い出しつつ。拓郎は店を後にした。
　
　それから後、行きついた雑貨店。
（……ん？これは……？）
　拓郎の目に留まったのは、沢山の種類のエコバッグだった。
　ふむ、と拓郎は売り場に近づき、手に取ってみる。
　一口にエコバックと言っても豊富な色・柄・種類がある。
　ましてや、２千円のエコバックならば良い品質になることは間違いない。
（……これだ！）
　こうして、まずは購入アイテムを決めた拓郎であった。
　が、ここですんなりとは終わらない。
　あまりにも豊富なアイテム数を誇るエコバック売り場。
（……これは、派手）
　一つ一つ、真剣な表情で吟味していく拓郎の姿は、さながら職人のよう。
（……これは、地味すぎる……）
　色柄が良くても。
（……これは、ちょっと素材が安っぽい……）
　悩んで、悩んで、悩みぬいて。
（これに決めた！）
　眉間の皺は消え、拓郎に清々しい笑顔が戻った。
　手に持つのは、黒地に白色で音符と、その音符にじゃれるように踊る子猫の姿が散りばめられている柄。
　折り畳んで収納できるし、生地もしっかりしている。
「すみません……これ、ください。……贈り物の、包装も……お願いしま、す」
　拓郎の言葉に、快くエコバックを包装する店員。
（もらった人、喜んでくれるといいなぁ……）
　いっぱい悩みはしたけれど。
　色んなアイテムが見れて楽しかった、という思いと共にウキウキと帰途につく拓郎だった。