春の！プレゼント交換会｜リアクション

春の！プレゼント交換会

■考え抜いたプレゼント
（せめて、2万円だろ！）
　八神修は眉間に皺を寄せた。
　星ヶ丘教会主催のプレゼント交換会を知り、参加を決めたまではよかった。
　が、早くも最大のネック「予算2千円」に頭を抱える修。
　子供でも参加しやすいように、と決まった金額であった、が。
（予算の桁がどう考えても少ないのが辛いな）
　流石高級住宅地に住む修さん。
　一桁どころか二桁増えても涼しい表情を見せそうな勢いである。
（……ま、貰った方が身構えない金額としたら妥当なのかな）
　2千円で買えるものを思い浮かべ、いくつかのお店を脳内リストアップするも。
（誰に渡るかわからないのも難しい所だ）
　せっかく参加するのだから、貰った人に喜んで貰えるものを購入したい。
　難問に当たれば当たる程、その壁を乗り越えようとするのが……そう、八神修だ！
（とりあえず、ショッピングモールへ向かうか）
　色んな店を回り、そこから判断しようと方針を決めるのだった。

（2千円分の駄菓子、か）
　ショッピングモールの中、あえて古めかしさを演出した駄菓子屋店舗で修は立ち止まる。
　10円、20円と言う値札のついた駄菓子たち。
　これで2千円分、となると……サンタさんが持ち歩く袋位に大きくなるかもしれない。
（大人買い、というのも浪漫があるな）
　だけれど、駄菓子は食べれば終わり。せっかくだから形に残るものにしたい、と修は思う。
　
　ショッピングモールの店をくまなく調べる修。
（家電、か……。場所を取りすぎるな）
　夏先取りな可愛らしいシロクマちゃんのかき氷機にちょっと惹かれる修。
（食器類……は、不足してないだろうし……）
　シンプルながらも美しいティーセットに気を引かれるも、どうやら設定金額のケタが一桁程違う模様。
（時計、は持ってるだろうし……）　
　こっちだと、修が「いいな」と思った代物はケタが２桁程違う模様。

「……難しい」
　修は思わず呟いた。
　その後、サンキャッチャーやドアベルなど手に取る修。
　一見いいな、と思っても「万人が使うわけではない」と棚へ戻す、の繰り返し。
　最終的に今、修の手に真っ赤な天狗のお面が収まっている。
　悩みすぎて思考が迷子になっている模様だ。仕方ないよね！
（特定の誰かに渡ると想定出来れば、だいぶプレゼント選びも楽になるのだが……）
　修はそっと天狗の面を棚に戻しながら、愛しい人の顔を思い浮かべた。
「あれ？　修君」
（そう、例えばあおいに……）
「お面買うの？」
「って、あおい！？」
　突然現れた少女、七夜あおいの姿に驚きを隠せない修。
「いや、別に買うわけじゃないんだ」
　修があおいにプレゼント交換の話を伝えれば
「そうなんだ！　今度は私も参加しようかな」
　笑うあおいだったが、どこか疲れの色が見える。敏感に察知した修は
「あおい、どうした？　元気がないみたいだけど……」
「あはは、何があったわけじゃないんだけど、昨日何故か寝付けなくて……あ、友達が呼んでるみたい。またね、修君」
　笑顔で手を振り、友達の方へ駆けて行くあおい。
　彼女の背中を見つめれば、修は一件のお店を思い出すのだった。

　修が向かった先は、快眠ショップ。
　抱き枕やアロマランプ等が揃っている中、修が選んだのは、目元用の枕である。
　予算内、また邪魔にならず、しかも持ってる人が少なそう。しかも
（……可愛いな）　
　柔らかそうで愛らしい羊型の２個セット。使わなければ飾っても良さそうだ。
（貰った人が安らかに眠れますように）
　眠れないことが続くようなら、あおいにもオススメしよう。
　そう思いながらレジへと向かう修だった。

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