パラダイスキーパー～翼ある護り手達と絶望凍る湖～｜リアクション

パラダイスキーパー～翼ある護り手達と絶望凍る湖～

　魔物を倒して間もなく、一行は手負いの翼獣達の許へと戻った。
　元より比較的傷の浅かった個体達が、ぴん！　と尻尾を立てて寄ってくる。
「危険が去ったことがわかっているようだな」
　身を寄せてくる翼獣をややぎこちない手つきで撫でながら、華城尊が零した。
　その言葉に、新田亮が真面目な顔で頷く。
「ああ、そういうふうに見える……って、おい、こら！」
　それがわかっているなら自分を褒めろ！　とばかりに、共に戦った翼獣が亮の服の端を引っ張った。
　その様子にひとしきり笑った後で、楢木春彦は呉井陽太の方を振り返る。
「とにかく、全員助け出せたな！」
「うん。これで、ムク達の世界も守れたのかな？」
「少なくとも、この世界のケガレは祓えたんじゃないかなぁ。ね、ミケ」
　陽太の言葉に応じながら、壬生由貴奈は翼獣ミケをもふもふもふもふ。
　ミケが仕方がないなという顔をする横で、春彦と陽太はハイタッチを交わした。
「って、いてぇ！」
「そりゃ、痛いでしょ。春彦君は、あんまり無茶をしすぎないようにねぃ」
「うぐ。だってよぉ……」
　翼獣ムクがうんうんと頷き、翼獣リブが、春彦の背中を頭でつんと突く。
「楢木、翼獣達にも言われているぞ」
　尊が鋭い目元を仄かに和らげ、椿美咲紀が春彦の方へとぐぐっと身を乗り出した。
「怪我の治療なら、私にお任せなのですよ！」
「それか、俺が手当てしてやろうか？　痛くてもしらねえけど」
　翼獣カイにそっと寄り添われた卯木衛が、からかうようなにやにや笑いを浮かべる。
　ぐっと言葉に詰まって、春彦は一歩後ずさった。
　翼獣達の具合を改めて確かめていた八神修が、口元を悪戯めいて綻ばせる。
「いや、本当に診てもらった方が安心かもしれないぞ」
「わ、シュー君のお墨付きです？」
「ああ、翼獣達もこれなら心配ない。美咲紀、卯木、ありがとう」
　翼獣ルークが嬉しそうに美咲紀に顔を寄せ、カイが誇らしげな声で何度も鳴いた。
「へへ、サンキュ。カイくんもありがとな」
　カイの太い首に、ぎゅっとしがみつく衛。
　くぅくぅ、とカイが鳴いた。
　その様子に、陽太は糸目を益々細くして、
「――さて。オレもあと一仕事しておこうか」
　と、粘土細工の動物達を取り出して、指でちょんと突いていく。
「呉井先輩、どうするんです？」
「うん、ちょっとこの世界のことを調べておこうと思ってねぃ」
　陽太が亮の言葉に応じた、その時。
「わ……！」
　由貴奈が、小さく声を上げた。
　見れば、由貴奈とミケのことを、足元から白い光が包み込んでいくところで。
「由貴奈さん！」
「あ、大丈夫だよ、うーちゃん。険呑な感じはしないっていうか……」
「役目を果たしたから地上へ還される、ということだろうか」
　由貴奈の言葉を耳に、ふむ、と顎に手を宛がう修。
　多分ね、と由貴奈が頷いた。
　それに続くように、一行の身体が次々と光に覆われていく。
「残念、調査までは至らずかぁ」
　陽太が零す横で、衛は傍らの温もりへと「カイくん」と声を投げた。
　その意を察したようにカイがチャリとドックタグを鳴らし、衛はそっと微笑む。
「――うん。ありがとう、カイくん」
　次に気付いた時に立っているのは、オアシスの世界か、寝子島か。
　わからないからこそ、約束を交わす。
　もしこのまま離れ離れになっても、『また』を想えるように。
「帰還の時、か」
　呟いて、尊は鈍色の空を晴れたような気持ちで見上げる。
　光は段々と強くなって、《絶望の世界》を瞬間、煌々と照らし出した。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：巴めろ
ファンレターはマスターページから！

お世話になっております、ゲームマスターの巴めろです。
まずは、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました！

翼獣の世界での冒険、皆様、お疲れ様でございました。
皆様のお陰でケガレは無事に祓われ、翼獣の世界に平和が訪れました。

翼獣や彼らの世界、今回の事件について、
まだピースが埋まり切っていないと感じられる方もいらっしゃるかと存じますので、
もしかすると、またひょっこりと翼獣達が顔を出すこともあるかもしれません。
その辺りは正直全くの未定ですが、いつかの時にまたご縁がありましたら、何卒よろしくお願いいたします。

重ねてになりますが、ご参加くださった皆様に心からの感謝を。
この度も、本当にありがとうございました！

↑ページトップに戻る