放課後の図書館には、夕暮れ時の色が柔らかに射し込んでいる。
幻想的な光に染め上げられた世界の中で、
卯木 衛は机の上の《それ》を見留めて首を傾けた。
「……何だ、これ?」
導かれるようにして、本に触れる。
凝った意匠の、分厚い本だ。
まるで、ファンタジー小説に登場する魔導書のような。
衛は、何とはなしにその本の頁を捲った。すると。
「うわっ!?」
眩しい光が本から溢れ出し、あっという間に衛を包み込んだ。
思わず目を瞑って――衛は、その声を聞いた。
……さま。我々をお助けください、我々に使命を果たさせてください。……さま、どうか……。
恐る恐る、目を開ける。
そこはもう、衛の知る世界ではなかった。
柔らかな砂地が、どこまでも広がっている。
大きな湖の傍の緑鮮やかなオアシスに、衛は立っているのだった。
「ここは……一体どこだ?」
思わず呟いた、その時だ。
砂地を力強く蹴る足音を耳に、ぱっと、顔を音の方へと向ける衛。
こちらへと駆け寄ってくる翼ある獣の姿に、衛の黄色の双眸が明るく煌めいた。
お世話になっております、巴めろと申します。
このページを開いてくださってありがとうございます!
卯木 衛さん、ガイドへの登場誠にありがとうございました!
なお、もしこのシナリオにご参加いただける場合ですが、
ガイドは一例ですのでご自由にアクションをかけてくださいませ。
以下、本シナリオの詳細な説明になります。
このシナリオの概要
謎の本を開いてしまったことで、異世界へと召喚されてしまったPC様達。
その世界は、翼獣という背中に鷲の翼を生やした、獅子ほどの大きさの黒豹に似た獣達が暮らす世界でした。
緑豊かな水辺のオアシスは、どこまでも広がる砂地さえ柔らかで、平和そのものに見えますが、
後述の翼獣の長曰く、翼獣がこの世界を住処と定めて以来の危機に見舞われているらしく……?
このシナリオの目的は、翼獣の世界に平和を取り戻すこととなっております。
戦闘もありますが翼獣と行動を共にすることも可能ですので、
戦闘には自信がないけど異世界に興味アリ! という方もお気軽にご参加いただけますと幸いです。
PC様の冒険のスタート地点はオアシス近辺となっております。
また、PC様達は突然異世界に飛ばされてしまいましたので、
その状況で持っていて不自然な物の所持・使用は採用できない場合がございます。
なお、翼獣は当方が担当させていただいたシリーズシナリオにも登場しておりますが、
そちらをご参照いただかずとも、全く問題ございません。
なお、謎の本は、学校や自宅の机の上、図書館や書店の本棚の中など、どこにでも出現し得ます。
翼獣の世界を襲う危機とは
以下の話は、リアクション開始前に、全てのPC様方が翼獣の長から聞くことができます。
翼獣達の先祖は、遥か昔に、彼らの神様の御遣いとしてこの世界にやってきました。
以来、翼獣達は、この世界で神様に託された《宝物》を守り続けています。
《宝物》は、気が遠くなるほど長い間、オアシスに位置する湖の底に静かに在り続け、
翼獣達は、長らくその使命を果たし続けてきたのですが、
この頃、理由は誰にもわからないままに《宝物》がケガレを得てしまいました。
ケガレを祓わんと、7頭の翼獣が湖へと潜りましたが、戻ってきたのはたった1頭だけ。
その翼獣の話によると、湖の中に異空間が生じており、
そこには、《宝物》が失われ、荒廃した翼獣の世界の幻が広がっていたのだとか。
更に、そこには自分達にそっくりの魔物がいて、
その1頭は、仲間の協力でその魔物を何とか倒し、この事態を仲間に知らせんと地上へと戻りました。
翼獣にとって、どうやら《宝物》が失われた世界は、幻であっても毒であり、
故に翼獣達だけでは、ケガレを祓うことはとても難しく、
このままでは、翼獣の世界いっぱいにケガレが広がり、《宝物》は力を失い、
翼獣達は使命を果たすこと叶わないまま命を落とすことになってしまいます。
そんな時、翼獣達の祈りが通じたのか《宝物》の意志か、PC様達が翼獣達の世界へと召喚されたのです。
翼獣の世界で出来ること
以下のABCのどれかひとつを選んで、
必ず「キャラクターの行動」欄の冒頭に【A】【B】【C】と記入してください。
【A】自分の《絶望の世界》へと潜る
湖に潜り、自分自身の《絶望の世界》の幻の中へとダイブします。
PC様にとっての《絶望の世界》がどんな場所か、必ずご指定くださいませ。
《絶望の世界》を抜け出すには、自分にそっくりの姿をした魔物を倒さなくてはいけません。
魔物の戦闘能力はPC様と同等ですので、戦術の工夫が求められます。
なお、GAを組んだ場合等でも誰かの《絶望の世界》へ仲間と一緒に向かうことはできませんが、
PC様おひとりにつき1頭、翼獣を連れていくことが可能です。
但しその場合、敵として翼獣そっくりの魔物も現れますのでご注意くださいませ。
このルートを選んだPC様の半数以上が脱出に成功することで、
全員が地上に戻ることができる他、ケガレの半分を祓うことができます。
この条件を満たせなかった場合、ケガレを祓うことは出来ず、
敗北し《絶望の世界》に取り残されたPC様方(と翼獣)の脱出も含めた救済シナリオを、
後日、何らかの形で出させていただきます。
【B】翼獣達の《絶望の世界》へと潜る
湖に潜り翼獣達のいる場所へ行きたいと強く念じることで、翼獣達の《絶望の世界》の幻の中へとダイブします。
翼獣達にとっての《絶望の世界》は個体を問わず『宝物が失われ荒廃した彼らの世界』であり、
既に《絶望の世界》にて敗北した6頭の翼獣達も、この世界に取り残されています。
《絶望の世界》を抜け出すには、6頭分の翼獣の力が凝縮された魔物と戦わなくてはいけません。
魔物は見た目こそ通常の倍ほどの大きさの翼獣ですが、戦闘能力は翼獣とは比になりません。
その爪や牙は鋭く、翼の羽ばたきは風の刃を呼び、
咆哮は敵対するものに膝をつかせ、前足や尻尾はありとあらゆるものを薙ぎ払うでしょう。
また、最早殆ど動くこと叶わない6頭の翼獣達を守る必要もあります。
このルートでは、同じルートを選んだ他のPC様達と共闘することになります。
こちらもPC様おひとりにつき1頭、翼獣を連れていくことが可能ですが、
魔物と違って、本物の翼獣達はこの場所では本来の力を発揮することができませんのでご注意ください。
このルートでは、魔物を倒すことで全員が地上に戻ることができる他、
ケガレの半分を祓い、6頭の翼獣も救い出すことができます。
この条件を満たせなかった場合、ケガレを祓うことも《絶望の世界》の脱出も叶わず、
後日、何らかの形で、救済シナリオを出させていただくことになります。
【C】その他
ルート【A】【B】に含まれない行動(湖に潜らない)を取ります。
活躍するのが難しいルートですが、挑戦は歓迎です。
登場NPCについて
○翼獣の長
複数の群れを束ねる、全ての翼獣のリーダーです。
この世界では《宝物》の加護で、テレパシー的にPC様方と会話することができます。
リーダーとして、地上を離れるわけにはいかないのですが、
その代わり、PC様方が聞きたいことがあれば、知る限りのことを教えてくれるでしょう。
名前は無いのですが、『長』と呼ばれれば反応します。
○翼獣
獅子ほどの大きさの黒豹に似た獣。背中には鷲の翼が生えています。
人間の言葉こそ喋れないものの高い知能を持ち、人間と心を通じ合わせることができます。
今回はPC様おひとりにつき、1頭の翼獣を冒険に連れていくことが可能です。
連れていく翼獣の性別やなんとなくの性格は指定可能ですし名前を付けることもできますが、
過去シナリオで既に名前を得た翼獣達を連れていけるのは名付け親のPC様のみとなります。
人間を1人、やや不安定になりますが頑張れば2人まで背に乗せて空を飛ぶことができます。
異世界の行く末は、皆様のアクション次第です。
それでは、ご縁がありましたらよろしくお願いいたします!