わっくわく！お菓子な課外活動！｜リアクション

わっくわく！お菓子な課外活動！

　放課後の家庭科室を満たす、わくわくそわそわとした空気。
　それぞれにそれを肌に感じながら、参加者全員が軽く自己紹介を済ませた後のこと。
　シャツの袖を捲って手を洗い、さあ準備は万端だと、丹羽紅葉は同じ調理台に集った顔を見渡した。
「改めて、３年８組の丹羽紅葉よ。今日はよろしくね」
　薄紅色の三角巾とエプロンをきちりと身に付けて、紅葉はにこりと微笑む。
（上級生ってちょっと緊張する存在かもしれないし……）
　プレッシャーを与えないようにと、柔らかな態度を心掛ける紅葉。
　そんな紅葉の丁寧な心掛けは周囲の皆に通じたようで、
「パティはパトリシアです！　よろしくお願いしますー！」
　と、元気いっぱい、パトリシア・プロウライトはしゅびっ！　と手を挙げ、
「なんか、賑やかでいい感じだな。楽しいお菓子作りになりそうだ」
　なんて、鳴神師呉も屈託なく白い歯を零す。
　そんな中、きょとりと首を傾げてみせるのは鬼河内萌。
「って、あれ？　カレーは作らないの？」
「へ？　カレー？」
　突然のカレー発言に、ぱちぱちと瞳を瞬かせる師呉へと、
「ふっふっふ、こっちの話だよ☆」
　と、萌はにやりと意味深な笑みを口元に乗せた。
　師呉がいよいよ以ってぐーんと首を傾ける中、
「ふむ。そういえば、カレーとクッキーは意外と合うとか」
　なんて飄々として言いながら、旅鴉月詠は調理台の上に持ち込んだ品々を並べていく。
　その量に、紅葉が「わ」と目を丸くした。
「旅鴉さん、本格的ね」
「ふむ、これを『本格的』と評するとは、君も中々の手練れだな」
「っていうか、そういう先輩のも凄いですよね」
　綺麗なクッキーができそうだと、紅葉が持参したアイテムを覗き込んだ師呉が興味津々の顔で言う。
　こちらも調理台の上のきらきらしさを前に、
「……ねえ、マルク。何だか皆、すごく料理上手っぽい感じなんだけど……」
　と、パトリシアは小声で頭の上の犬耳帽子へと囁きを零した。
　犬耳帽子に宿った人格――マルクが、こちらも密やかにやれやれとため息を吐く。
『まあ、精々頑張れ。ちゃんと見ててやるから』
「えええっ、お菓子作り初心者のパティさんにアドバイスは！？」
「えっと、プロウライトさん？」
「ほえ！？」
　紅葉に名前を呼ばれて、我に返るパトリシア。
　気付けば、周囲の皆の視線が自分に集まっている。
「ねえキミ、どうかしたの？　カレーが食べたくなっちゃった？」
　萌が不思議そうに問うのに、パトリシアはあわあわとしながら声を上げた。
「ええっと、せっかくだからかわいいクッキー作りたいなって！　私、お菓子作りって初めてなんですけど！」
　できるかなー？　と首を傾けるパトリシアの様子に、紅葉がふわりと目元を和らげる。
「ああ、成る程。大丈夫よ。皆で楽しい時間を過ごせるよう、お手伝いさせてね」
「さて。それじゃあ――『楽しい時間』を始めようか」
　月詠の淡々とした宣言に、次々に頷きが返った。

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