let's go ハワイニャンランド！｜リアクション

let's go ハワイニャンランド！

■イマジネーションハワイニャン
　羽生碧南は乙女である。
　身長１８０センチ、バスケ部のスター。
　スポーティーで社交的で、女子の憧れみたいな彼女がプールへ来ればまあみんなスポーティーな理由なんだろうなと思うのだろう。
　しかしてその実態は。
「ふふ、水着でデートなんて……照れるね」
　虚空に向かって見えない彼氏と会話しながら、夢見心地でふらふら歩く碧南が、そこにはいた。

　それはもうモデルみたいな体型をした碧南である。
　水着を着れば絵になること間違いなしで、以前コンテスト用に着た（正確には着せられた）服を再び装備してプールへと繰り出した。
　勿論ながら人目を引くのだが、碧南は衆目など一切気にしていなかった。
　彼女脳内では、そう、南の島でイケメンたちと過ごすとある乙女ゲームのワンシーンが再現されているのだ。
　まずはあのシーンだ。ベタにビーチを走って追いかけっこしてみようとか言い出して、ちょっと頼りない年下のイケメンがまってよーとか言いながら追いかけてくるシーン。
　途中でべたんと転んでしまって、それを抱え起こすとうるんだ瞳で見上げてくるのだ。
「グッド」
　抱え起こすまで一連の動作をしてから、碧南は小さく呟いた。

　この頃になると、モデル体型の彼女と遊ぼうと寄ってきていた悪い虫はどこかへ消えていた。碧南が別次元に生きていることをうすうす（というかダイレクトに）察したのだろう。
　だが気にすることは無い。今めっちゃ幸せだもの。
　次はあれだ。波打ち際のプールに寝そべり、ころんと横になってみる。
　日焼けした金髪の、ちょっとチャラいけど一皮剥くとピュアで一途なイケメンが同じようにこちらに寝転んでほほえみかけるシーンである。イベントＣＧが入るシーンである。
　耳元で囁くようなあの声と、どこか遠ざかるような波の音。
　すこし強引に頭を寄せ、口づけるあの瞬間。目を瞑る自分。
「……グッド」
　目を瞑り、にんまりと微笑む碧南である。

　もうこうなってくると邪魔するものはなにもない。
　無敵モードの碧南である。
　レストランでロコモコセットを架空の彼氏にあーんしたりされたりしつつ、最後はデッキチェアに転がってあの日（というかあのゲーム）の思い出をよみがえらせた。
「ずっとこうしていたいね……なんて。うん、グッド」
　碧南は、今日も人生を満喫していた。

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