せんせいといっしょ：ウォルター先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：ウォルター先生編

　閑話休題、購買で菓子パンとねこーひー牛乳を購入した早坂恩は２年生の頃の担任であったウォルター先生を偶然見かけた。
　一人で読書をしていた彼を見かけて何を読んでいるのかしら、と視線で追いかければどうやら小説のようだ。
（哲学論とかかしら？　それとも意外な線で教科書に載っているタイプの文学作品とか？）
　整った顔立ちであるウォルター先生だ。恩の目から見てもそれに違いはない。
　何を読んでいたって様になると頷く恩とばちりと視線がかち合ってウォルター先生は小さく笑った。
「早坂、食事中なのかなぁ？」
「あら、私のお昼の内容がばれちゃった」
　くすくすと笑った恩は体調には気を付けるって言った手前で菓子パンを食べているとあまりいい目で見られないかと肩を竦める。
「きちんと食べたほうがいいからねぇ、うん。菓子パンなんかじゃなくって……」
　ウォルター先生の言葉に「やーねぇ」と笑った恩は首をふるりと振って「お邪魔にならないようにねっ」とお昼の事をごまかしながら退散してゆく。
　遠目からの観察を開始した彼は様々な生徒が代わる代わるウォルター先生と交流している様子に目を向けていた。
　恩の目から見れば彼はハイスペックで価値観が違う存在だ。
　そこから出てくる言葉は辛辣そのものだが、新しい知識や世界観を与えてくれる。
（この学校の先生で居る事がちょっと不思議だけど……楽しそうならいいのかしら？）
　ぱちくりと瞬く恩とばちりと視線が克ち合ったのは偶然……ではないのかもしれない。

　そして時系列は戻って。
「質問の前に一人呼んでもいいかなぁ？」
　首を傾いだウォルター先生が恩を呼び寄せたのはしっかりと視線があったからだ。
（観察していたのバレていたのかしら……？）
　首を傾いだ恩も交えての質問会は続行する。
　七瀬の問い掛けたかった言葉――これこそ、額に魔弾を受けた七瀬だから聞ける言葉だ。
「ズバリ、先生が学生だとして、もしも僕みたいにチョーク投げられたら、どう避けますか？」
　攻略法があるのかないのか……それが問題点である。
「攻略放ってあるとですか？」
　問い掛ける彼に時子やきとりも固唾を飲んで見守っている。意外性のある答えが返ってくるのだろうかと見守る恩にウォルター先生は「んー」と首を捻った。
「倉前の質問はそうだなぁ……避けれる様に僕が投げてないからなぁ……」
　七瀬は思う――チョークが投げられないように気を付けるという選択肢はないとです！　と。
「先生やったら、かっこよくサラリと躱しそうな気がするですね」
「そうかなぁ？」
　くすくすと笑ったウォルター先生に「……そうなると僕は真似できんのですが」と七瀬は肩を竦めた。
「あ、先生の魔弾知ってます？　当たると痛いんですよー」
「あれは、そうね、痛いわねぇ」
　くすくすと笑った恩に七瀬は大きく頷く。

「先生、楽しい？」
「勿論、楽しい」
　恩の問い掛けに大きく頷いたウォルター先生は「そろそろ」と時計を指さす。
「あ、ありがとうございました」
　ランチタイムの時間もそろそろ終わりだ。
　ひらりと手を振って授業の準備に向かうウォルター先生を見送って、時子は柔らかに頷いた。
　春の昼休みは穏やかに過ぎ去ってゆく。

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