せんせいといっしょ：ウォルター先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：ウォルター先生編

　そんな様子を見つめながら狗民きとりは本体さんの居ない状態で不安げに周囲を見回していた。
（……ええと）
　静かで大人しい――それがきとりの持つ印象だ。
　だからこそ、存在感を上げようとゆっくりと近寄って「先生こんにちは、おとなりいいですか」と話しかける。
「うん、どうぞどうぞ」
　ほら、と椅子を引いて笑うウォルター先生にきとりはこくりと頷いた。
「……」
　ぺら、と小説を捲る音がする。
　きとりは無口であることもあり、そこから話が止まってしまう。
　ちら、と顔を上げたきとり。ウォルター先生と視線が交わり、彼女は話題を探すものの……見つからない。
　目線を下げ食事をつづけながら「先生」とたどたどしく呟く彼女の声にウォルター先生は「ん？」と笑みを浮かべて問い掛けた。
「食べませんか？」
　なんて。
　そんな言葉でも先生は楽し気に笑って見せる。ありがとう、と差し出されたおかずを手にしたウォルター先生にきとりは小さく頷いた。
　きとりはきとりなりに仲良くなりたいと話題を探している。なんとか話しかけたい――そう思いながらも懸命に考えている。
　二年目にお世話になる先生だからこそ、何か言葉を掛けたいのだ。
「わちしは先生の事何も知らないから、だから知りたくなったんです。
　先生のこと色々、教えてください。好きなものとか、チョークの投げ方のコツとか」
　ずれているかもしれないけれど――そう言いながらもきとりはウォルター先生と向き直る。
　本気で仲良くなりたいですよ、と勢いよく話したきとりにウォルター先生はくすくすと小さく笑った。
「コツかぁ、手の動きならできるけどなぁ」
　笑ってくれたらいいのにな。
　そう思っていたからこそ、どこか嬉しくて――イケメンが笑うとすごく癒しだときとりは思う。
「狗民の事を教えてくれるとうれしいよぉ。そうだなぁ、僕は……蛇が苦手だなぁ」
　冗句めかして告げた彼にきとりはこくりと頷いた。
　折角のランチタイムなのだから、沢山話をしようじゃないか。

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