【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！｜リアクション

【星幽塔】最終決戦！すべての希望に火を灯せ！

　エノルメ・ルーチェの齎す光は、風に乗って、塔の隅々へと行き渡る。

　第十二階層では、スコルピウス山に生息する巨大な炎の竜クリムゾンが咆哮した。

　第十一階層では、雪原で細々と生活を営む小柄な遊牧民たちが、空に広がる美しいオーロラを見た。

　第十階層では、地下書庫にいた猫耳猫尻尾の獣人の少女スピカが、澄んだ気配にピクリと耳を立てた。

　第九階層では、海の向こうの無人島の、そのまた奥で、いっせいに白い花が咲いた。

　第八階層では、森の中で、女の子の妖精サナと男の子の妖精ジンがそっと手を繋いだ。

　第七階層では、砂漠に恵みの雨が降り、レオーネの館の上に大きな虹が架かった。

　第六階層では、過激派義勇軍も復興委員会の人々も、空に光が満ちるのを見上げた。

　第五階層では、反法王派との諍いで怪我をした聖騎士が、突然、心安らぐのを感じた。

　第四階層では、大きな汽水の湖から蟹たちがぽこ、ぽこ、と顔を出した。

　第三階層では、畑仕事を手伝う妖精たちが一休みして蜂蜜酒で乾杯した。

　第二階層では、水路橋を流れる水がきらきらと星々を運ぶように煌いた。

　第一階層の酒場では、ローブを纏った占い師が水晶玉を覗き込み「影が消えた」と呟いた。

　隠し階層にあるアステリズムたちの工房兼会議場『クレイドル』。
　この隠し階層も、かつては影に蝕まれていた。
　いまがあるのは、異世界から来た人々のお陰だ。
　『クレイドル』の主であるエリオナイトは、最終決戦に赴いた人々を心配していた。
　しかし幽霊である彼女は、最後の戦いについていくことは叶わない。できることは、祈ることだけ。
　両手を胸の前で組み、工房の中を意味もなく行ったり来たりしていたエリオナイトは、はた、と空気の変わったのに気づいて、青白い頬をほころばせる。
「この気配……みんな、やったのですね」

　この日、不思議なことにこのとき現実世界の鈴島上空にも、巨大な虹が架かったという。

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