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【白の扉】『ゴンザレス太郎』
鼓動に合わせて肩の傷口から噴き出す血に顔をしかめる。痛みに乱れそうになる息を無理やりに整え、春彦は歪む瞳を前へと上げた。
相当数を倒したとは言え、蔦の階段の入り口にはまだ黒い狼が残っている。
指先にまで垂れる血を腿で拭い、剣の柄を握りしめる。
(っし、)
まだ動く。
そのことにだけ安堵する。蔦の階段が完成し、何人もの心強い味方がゴンザレスと対峙するために階段を駆け上って行った。となれば、残る仕事は限られている。
痛みに震えそうになる指で柄を握りしめながら、背後のリアをちらりと振り返る。水瓶座のアステリズムは、我が子を護るかのように己の数十倍は太い蔦の階段を背に守っている。彼の星の力を受けて完成した蔦の階段は、最早生半可な攻撃では倒れはしないだろうが、万が一にでもリアが倒されてしまえば瞬きの間に枯れ果ててしまうのかもしれない。
「させっかよ」
低く唸る。じりじりと輪を縮めてくる黒影の群狼を睨み据えたそのとき、狼の一撃を食らっても肩にしがみついていた熊型の粘土細工、カスミさんが場にそぐわぬくねくねとしたダンスを踊った。
「あー……」
やっぱカマっぽい、と遠い眼をしつつ、視線を伸ばす。
湖の央、気づけば天秤の光が防御結界を空に広げている。龍の護衛がひとまず叶ったことに息を吐く春彦の耳に、
「春彦君ー!」
陽太の声が届いた。
「今行くよぅー!」
「っ、ちょッ……?!」
声の方角を見れば、ワイヤーガンを構える陽太の姿。春彦は慌てて左耳のピアスに触れる。ワイヤーガンの的となる大きめの見えない足場を作り出し、その上にカスミさんを乗せる。念には念を入れ、ここを狙えと指で示す。
「はぁーい」
鋭く風を切って飛んできたワイヤーガンの先端が見えぬ足場の真ん中を貫く。ワイヤーを引き戻す力を使い、陽太が黒い狼の群の頭上を一気に飛び越える。ついでに二三体の黒い狼を蹴り飛ばし、
「援護に来たよぅ」
陽太は春彦の傍らに立った。春彦の肩口の傷を痛そうに見、けれど何も言わずに黒い狼の群と向き合う。
「サンキューな」
「いいえー」
緊迫した空気のただなかにあって敢えていつも通りの口調を崩さぬ陽太にくすりと笑って、春彦はふと、足元にさまざまの色した光る湖の中の光珠を目にした。
「前に妖精がうじゃうじゃいた貯水池あったよな……」
ぽつり、呟く。
「この下の光ん中にもいたりするのかな」
「……妖精は、ここにはいないよ」
普段は第三階層で多くの妖精たちと農作業に勤しんでいるリアが応じた。
「たぶん、これこそがあの龍の護るものだ」
「塔のてっぺんにあるって噂の『至高の宝』なのぅ?」
ひゃあ、と声上げるなり、陽太は飛びかかってきた黒い狼の一体をワイヤーガンで貫く。黒い塵と化して消える狼の体からワイヤーを引き戻し、笑みを深くする。
「綺麗だねぃ」
「ああ、綺麗だな」
上空の敵に届く蔦の階段と、階段を駆け上り戦闘に赴く仲間を護りその場に立ちはだかるふたりの頭上高く、白銀の小龍の背に乗った仲間が過ぎた。
「うぅっひゃー! ひゃー!」
はしゃいだ声を放ちながら、エスカルゴは弓矢を放つ。空を飛び交う翼持つ黒い人型を射抜いてゆく。
「早いなあ! 早いねえ!」
水面近くを滑空に近いかたちで走る小龍の背の上、エスカルゴは笑う。
「エスカルゴさん!」
「文月も乗る?」
傍らを懸命に並走してくる奈津樹に軽い口調で問えば、断固とした否定が返ってきた。
「じゃ、お先にねー」
言うなり、エスカルゴは小龍に合図する。湖面に平行させていた首をもたげた途端、小龍の体は空高く舞い上がった。
「おー……」
小龍の本体である龍の承認を得たか、湖上で黒い影相手に戦っていた仲間たちが次々と小龍の背に乗り空へと駆けて行く。
(ゲームの一場面みたいだ)
空で嗤う黒くて丸いナニカを目指す、鮮やかな緑色した蔦の階段を駆け上るうちのひとり、紅茶色の髪した女性がふらりと宙に飛び出す。奈津樹が目を丸くしている間に、茨で出来たような弓を手にした女性は空の途中、小龍の背に飛び乗って見せた。柏手のような音を立てて弓を引き絞り、嗤い続けるナニカに向けて矢を放つ。
重そうな弓から放たれた矢は重力に逆らい空を駆け上る。何かの力に操られたように上昇し、ゴンザレスを囲んで護る翼持つ人影を撃ち落とす。
その彼女と小龍に向け、何体もの翼持つ人影が黒い矢を放つ。射手を乗せているがゆえに回避に専念できる小龍が必死の動きで矢から逃れようと翼を羽ばたかせるも、
「あっ」
奈津樹は知らず声を零す。弓持つ勇敢なひとが小龍の背から落ちる。間に合わないと知りつつ反射的に駆けだす奈津樹の眼に、落ちる女性に追い縋り並ぶ小龍と、小龍の背から手を伸ばすエスカルゴの姿が映った。
女性の手をエスカルゴが掴む。奈津樹が安堵したのも束の間、二人分の重さを支え切れぬ小龍は速度を緩めながらも湖面へと落ち始めた。
「譲るよ!」
その状況にあって無闇に明るいエスカルゴの声を聞いた、と思った瞬間。
エスカルゴは小龍の背から何の躊躇いもなく飛び降りた。
「何してるんですかーっっ!?」
「文月、受け止めてー」
どこまでも楽しそうにまっすぐ墜落するエスカルゴの真下を目指し、文月は全力で疾走する。
(間に合わな――)
悲鳴じみて思う文月の背を、一陣の風が駆け抜けた。
「行け! 行け行け行け!」
アストライアの腰を抱いて護る豪が、魔風の光による凄まじいまでの突風を操りながら声を張る。豪の援助を得て、垂直に落ちるばかりだったエスカルゴの体がほんの数瞬、ふわりと重力に逆らった。風に押され、奈津樹のもとへと投げ出されるように落下の方向を変える。
「ッ!」
落ちる本人よりも死にそうな思いで伸ばした腕の中、
「ナイスキャーッチ」
エスカルゴがすぽりと収まった。
「なんでそんな、のんきな……」
痩身とは言え、魔風の光の援護を受けたとは言え、男ひとりの体重を受け止めた衝撃に奈津樹はエスカルゴごと湖面にくずおれる。
「だって文月が受け止めてくれるから」
根拠のない自信をあっけらかんと口にするエスカルゴを呆然と見下ろし、奈津樹は呆れ半分感嘆半分の息を吐く。
(ああ、でも)
年下の自分にお姫様抱っこされていることも、高い空から飛び降りたことすらも気にしていない顔つきの、今日初めて画面越しではなく顔を合わせた人を見つめる。
この人は、身を害する敵が山のように居るこの状況で、それでも足を竦めずに進んで行ってしまうのだ。行けてしまうのだ。
(……凄いな)
だから救われたのかもしれない。そう思う。この人に救われたからこそ、引きこもる前の生活を送れるようになったのだ。
「帰ったらアップデートしたゲームの新ボス倒しにいこうなー」
奈津樹の内心を知ってか知らずかふわふわと笑うばかりのエスカルゴに、奈津樹はこくりと頷き返す。この世界を救って、元の世界に帰ろう。そうしてまた、今度はネットゲームの中の世界を救おう。
「帰ったら今度はゲームの続きが待ってますからね」
「大丈夫」
小龍に助け上げるなり飛び降りて行った青年のその言葉を、由貴奈は一瞬で信じ切った。
一人分の体重が減ったことで羽ばたきの力強さを取り戻し、体勢を立て直して空に舞う小龍の背を励ますように叩く。身代わりになってくれた青年が落ちて行った湖面ではなく、蔦の階段の上空に闇の月じみて浮かぶゴンザレスを見据える。
真正直に射るだけでは、あの悪意の塊のようなナニカには届かない。取り巻きの翼持つ人影に当たるくらいがせいぜいだろう。
(射る以外の方法、ねぇ……)
矢筒から数本の矢を引き出し、弓に番えるでもなく手に掴む。ベルトに結わえ付けた鞄から手探りにアストラル・クッキーを数枚掴み、口に放り込む。発動するろっこんの進化能力を受けて、由貴奈の手を離れた数本の矢が音もなく空を滑り始めた。
蔓の階段の影に隠れるようにして敵のもとへ走る矢を視界に捉えつつ、メーベルは階段の先を駆けるヴェルトの小さな背中を見る。
上から駆け下りてくる黒い狼を目に映すなり迷わぬ仕草でボウガンを構える主を援護し、主の背後からナイフを投げる。魔風の軌道修正を受けたナイフを避け、反射的に飛び退る黒い狼のごつい肩にボウガンの矢が突き刺さる。
ヴェルトが追撃の矢を番えるより先、痛みに唸る黒い狼を踏み台に、黒い人影が剣を手に飛びかかる。
「先生!」
主のボウガンも己のナイフも間に合わぬと判断し、メーベルは咄嗟にヴェルトの前に飛び出した。
その身を以て己を庇おうとする執事の動きに、主はちらりと唇を歪めた。無言のまま執事の腕を掴み、強引に押しのける。
「先生っ……」
敵の攻撃を受けるその直前、ヴェルトは手にした剣を振るう。白銀の火花をまき散らし、黒い剣はヴェルトの剣に撥ね返された。
「君、怪我はないかね?」
振り向きもせずに問われ、メーベルはエメラルドの瞳を伏せる。
「……何故です?」
心底不思議だった。『先生』は己に守られることはありはすれ、己を守ってくれるとは思っていなかった。
(俺は先生の執事なのに)
従者が主に守られてはならない。それは執事としての矜持に近い。
「何故もなにも」
それなのに、主は淡々と応じる。黒い人影が弾かれた剣を持ち直すよりも速く、細剣を喉のかたちした影の中に突きこむ。かたちを崩す黒い人影から剣先を抜き、風を切ってまとわりつく塵を払う。
「悔しいが君は有能だからね。ここで失うのは惜しい」
『先生』に庇われ、膝をついた体勢を立て直す。有能だと認めながらも、『先生』は間違いなく己より強い。
「そうですか……」
「さあ、次がくるよ。備えておけ」
声音が落ちてしまったことを気取られただろうか。僅かに、気まぐれのように優しくなるヴェルトの声に、メーベルは歯を食いしばる。ほとんど意地で唇に笑みを刻み、出来うる限りの軽やかな声を発する。
「ええ、言われずとも」
(俺が、先生を護る)
誰にも傷つけさせたりはしない。
傷ついた体でそれでも襲い掛かってくる黒い狼の眉間をボウガンの一矢で正確に射貫き、階の最上へと足を進める主の背を、執事は静かに追う。
視界を濃紺の空が覆いつくしている。星のひとつも瞬かぬ暗い空に、空より昏い色した魔物が飛び交っている。
羽虫のような動きを見せる翼持つ黒い人影たちに対峙するのは、翼を羽ばたかせる獣にまたがった藁色の髪の男。彼を師匠と仰ぐ少年は、師匠にちょっかいをかけようとする翼持つ人影たちへと魔火の力を放つ。
(まだまだ師匠程上手くは戦えないけど)
矢のかたちして飛んだ炎をすんでのところで避け殺意と顔を向けてくる黒い人影へ、シーナは無邪気にも見える笑みを灰蒼の瞳に向けた。
「あんなおじさんに構ってないで、翼のある者同士僕と遊びましょう?」
両耳のすぐ上に生えた小さな白翼をはためかせてみせる。
空に飛ぶ師匠の背中が僅かに視界に入る。振り向きもせぬものの、ベルラがこちらを気にかけていることが感じ取れて、シーナはぎゅっと眉を寄せた。
ベルラの助けになりたかった。
昔に助けてくれたから。今も傍で助けていてくれるから。だから、たとえほんの少しでも。
(僕は僕のできることを)
ベルラと敵の大本との対決の邪魔となるものを数体だけでも排除しよう。
ベルラの相手をするより易いと見てか、黒い影で出来た人型が数体、翼を羽ばたかせ蔦でできた空中の庭に降り立つ。
敵を正面に見据え、シーナは魔火の光が宿る右手を刀身に添わせる。撫でるような仕草ひとつで剣に紅い炎を纏わせるなり、地を蹴る。
気合い一閃、狙うは敵の翼。付け根か風切り羽を断てば、翼はその役を果たせなくなる。
影の人型が振るう黒い剣を軽い足運びで飛び退って避ける。かと思えば風のように素早く突きかかり、からかうようにまた思わぬ向きに跳躍する。
無理に倒すつもりはなかった。
(ベルラの所へ行かせなければいい)
致命傷を与えないまでも、翼持つ者にとって翼を焼き切られることは十分な致命傷となりうる。
黒い人型たちを翻弄し足止めしながら、
(絶対に)
シーナは決意の光を瞳に宿す。
(師匠の邪魔はさせないっ!)
炎纏わせた剣と、影そのものの色した黒の剣とが激しくぶつかり合う。
鼻をつく血の臭いは、シーナのものか、それとも蔦の階段で戦い続ける他の誰かのものか。ベルラは振り向かずに有翼獣を操る。蔦の階段に集まる仲間たちを脅威と見たか、影の魔物のあらかたは蔦の足場に向かっている。
「行くぜっ!」
空中で黒い人影を相手取っていたシグマが吼えた。紅い鱗の竜人に合わせ、ベルラも最短距離でゴンザレスに近づく。
まばらな数となりながらゴンザレスを護ろうとして飛びかかってくる翼持つ人影を、有翼獣の蹄で蹴り飛ばす。手にした剣で羽を胴を、正確無比に叩き斬る。この戦いの大本である影の魔物へと確実に距離を縮める。
「倒す!」
敵がベルラに気を取られているその隙を突き、シグマがゴンザレスに近接する。嗤う口元に向けて大剣を叩きこもうとして、
「ッ、おい?!」
ゴンザレスの背後に集った翼持つ人影たちが一斉に構える弓矢に目を剥いた。何の惑いもなく、ゴンザレスのすぐ背後から矢を射かける。ゴンザレスをさえ射貫き、黒い矢の雨が降る。
一度引くシグマに降りかかる黒い矢の雨をその背に受けながら、何のダメージも受けていない風にゴンザレスは嗤う。
「吸収してやがる!」
降りかかる黒い矢を剣で弾き、シグマが喚く。ベルラが有翼翼の一角から雷を放たせる。空を奔った紫電が黒矢を打ち砕くも、矢の雨のすべてを滅することは叶わなかった。雷を逃れた一矢が有翼獣の肩を貫く。
「ッ!」
痛みに驚いて前脚を跳ね上げる有翼獣をなだめようとしたベルラの腿にも矢が刺さる。咄嗟に掲げた右腕にも矢が突き立つも、けれど鏃は腕には刺さらず、右の腕を隠す服を裂いたのみ。
ベルラの右腕を覆うは、顔の右半分を結晶化させているのと同じ、エメラルド色した硬い鉱石。
「くッ……」
矢を受けた有翼獣を庇うように、ベルラは敵に一度背を向けた。空を駆け、蔦の足場の半ば、敵から死角となる場所に降り立つ。有翼獣の背から降り、
「悪かったな」
負傷した足から血を流しながらもベルラを背に乗せようと跪く有翼獣の首を優しく叩き、その場での待機を命じる。
「襲われたら逃げろ。いいな」
悲しい息を吐く獣をもう一度撫で、ベルラは息を吐いた。裂けた服の腕からに覗くエメラルド色に結晶化した右腕を一撫でし、腿から黒い矢を一息に引き抜き捨てる。溢れる血に舌打ちし、険しい瞳を空へともたげる。
「お願い……!」
空に繰り広げられる二本角の黒い魔物との決戦を仰ぎ、遊琳は傍ら立とうとする小龍に必死の声を掛けた。
今しがた遊琳の星の力によって傷を癒してもらった小龍は、了承を示して短く鳴いた。遊琳を背に乗せ、翼に風を纏わせる。湖上から空中へ、砲弾のように飛び出す。
小龍の背にしがみつき、遊琳は身の内に残るありったけの星の力を手にした箒に籠める。
(力尽きてもいいさ)
澄んだ琥珀に捉えているのは、影の魔物との死闘で限りなく傷つき、それでも戦うことを止めない仲間の姿。
風の速さで近づく遊琳と小龍に、ゴンザレスを護る翼持つ人影が矢を浴びせかける。シグマやベルラを相手取りながら、より弱き者をその悪意で屠るべく、ゴンザレスが新たな黒い影を生み出そうとする。
「やめろぉー!」
空飛ぶ羊の背の上、瑠樹はゴンザレスをまっすぐに見つめる。対象を固定し、ラピちゃんをふんわり優しく抱きしめる。そうするだけで、たとえ戦場に在っても瑠樹の心はぬいぐるみのようにどこまでも柔らかく優しく和む。
(皆が倒してくれるって、信じてる!)
対象相手を和ませるろっこんの力に押し包まれ、ほんの一瞬、影の魔物の動きが止まる。
その一瞬に、遊琳は空へ箒を閃かせた。癒しの光が霧のように一帯に広がる。蔦の階や空中に戦う仲間の傷が癒えてゆくのを確かめる力は、けれど遊琳にはもうない。
小龍のたてがみにしがみつく手の力が失せる。傾いだ体を立て直すことすらできず、遊琳は小龍の背から空へ落ちた。
身を包むどうしようもない落下感に、体の周りで渦巻く風に、星の力を使い切って薄れていく意識に、けれど遊琳は淡く微笑む。下には、幾千幾万の星を内包して輝く青い湖がある。
(こんなにも美しいところに倒れるのなら)
それでも構わない。
「ッオォオオオ!」
空に滑り落ちる仲間を視界の端に映しながら、シグマは猛る。彼を助けに行けば、彼の献身が無駄になる。
咆哮するシグマの周囲に魔風の光によるいくつもの鎌鼬が生まれ、放たれる。数を減らしながらもゴンザレスを未だ護り続ける翼持つ人影を切り裂き蹴散らし、己は剣を構え翼で以て突っ込む。
剣の切っ先、真正面に捉えたゴンザレスが二本角をこちらに向ける。鎧を破り胴さえ貫くだろう鋭い角が目に入っても、シグマは恐れずその巨躯と大型剣を最大限に生かして突っ込む。
「串刺しにしてやるぜ!」
二本角よりも長い剣が球体の影の体に突き立つかと思われたその刹那、ゴンザレスは重力も何も無視した素早い動きでくるり、その身を翻そうとした。脇に控えていた黒い人影を球体の体で突き落としさえするゴンザレスに、シグマは鎌鼬を放つ。地面に飛び跳ねる動きで避けれれば、反対側に炎を吐き出し動きを抑える。
炎と風に翻弄され、わたわたと慌てた動きを見せるゴンザレスに、シグマは体ごと突っ込んだ。
「隙ありだぜっ!」
くるり、ゴンザレスが宙返る。剣先を額に掠めながら頭上を飛び越え、剣ごとのシグマの突進を躱して嗤う。シグマが振り返るよりも早くその背に角を突き立てようとした途端、
「頭下げてー」
由貴奈の声が飛んだ。ほとんど落ちる動きでシグマが戦線を離脱する。宙に残されたゴンザレスを円に囲むは、機を狙って由貴奈がこっそりとろっこんで操り飛ばしていた幾つもの矢。
矢が風を裂く。円の中心、ゴンザレスに向け殺到する。振り立てた二本角でその数本を弾くも、弾き切れず、避け切れなかった矢が球形の背に突き刺さる。
「先生!」
「今だね」
蔦の足場の最上から、ヴェルトがボウガンの矢を連射する。動きを鈍らせながらも未だ不規則な動きで宙に踊るゴンザレスを、メーベルの魔風の光の援護を受けた矢が追尾し穿つ。
幾つもの矢をその身に生やし、それでも影の魔物は嗤うことを止めなかった。よたよたと道化じみた動きで空を渡り、蔦の足場の上にぐしゃりと落ちる。落ちた弾みにちょうど体の下敷きになった黒い人影を構わず踏み躙りながら、誰も近づけまいと二本角を猛々しく振りかざす。
「おめぇさんのその嗤いは不愉快だ」
ゴンザレスの嗤い声を耳に、ベルラは低く唸る。蔦の足場を踏み、一歩一歩、悪意ある笑みをまき散らす敵に真直ぐ近づく。
(今まで――)
今まで、幾つもの命が散る瞬間を目前にして来た。その度に自分の非力を嘆き、それでも、何度でもこの手で救おうと誓い続けた。
半身のほとんどを結晶化されても、それほどの呪いを受けても、なお。
(何故なのかね)
自問すれど、答えはとうに解っている。
きっと、夢を見ているからだ。
(平和で平穏な世界を守りたいんだよ)
誰かが笑っていられる世界をこそ、ベルラは望む。
それを阻むものはなんであれ、
「断つぞ」
魔法剣の柄を握りしめる。低く、歌うように詠唱するのは、異国の言葉による呪文。呪文によって解放するのは、剣に嵌めた金の宝石の力。宝石から溢れだした光を剣にまとわせ、ベルラはゴンザレスの前に立つ。
待ち構えていたかのように、ゴンザレスは二本角を振り立てた。腹目がけ突き出された槍じみた角を、ベルラは剣でいなす。光が火花のように散る。返す刃で角を狙うも弾かれ、たたらを踏む。
「ベルラ!」
シーナの悲鳴が耳に届くと同時、ベルラは固く撚りあった蔦が削れるほどに重く深く踏み込んだ。結晶化した右手と生身の左手で剣の柄を握りしめる。
「ぅおぉおぉぉおお!」
渾身の力で、影の魔物の眼玉に剣を突き立てる。
柄が眼球に当たるまで、力任せに突きこむ。痛みに暴れる魔物の角の先が腕や足の肉を抉ろうとも、剣を掴む手は決して離さない。
唐突に、ゴンザレスは動きを止めた。
己に突き立てられた光の剣を残る大きな眼で見つめ、影は嗤う。
剥き出しの乱杭歯から零れる嗤いが己や全てのものに向けた呪いにも思えて、ベルラは眉を寄せた。
敵に突き立てた剣を引き抜く。
「ちびを残して死ねねぇんだわ」
呪いを跳ね除けんがため、最強の呪文のように呟くのは、己が庇護する少年の名。
星の光を宿す人々の、折れぬ心そのもののような眼差しを受け、影でできた魔物は戸惑うように蔦の足場を這って後退った。最早飛ぶ力も絶えた体が空へ落ちる。
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3人まで
シナリオジャンル
冒険
SF・ファンタジー
定員
1000人
参加キャラクター数
73人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年07月20日
参加申し込みの期限
2017年07月27日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年07月27日 11時00分
参加キャラクター一覧
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