【星幽塔】第一階層　悠久なりや、サジタリオ城下町｜リアクション

【星幽塔】第一階層　悠久なりや、サジタリオ城下町

　その頃、レグルス・シェルタンは裏通りを歩いていた。詐欺師集団の話を酒場で聞き、気になる点があった為動いていたのだ。
（詐欺師の集団、ねぇ。昔、怪我をした時世話になった盗賊がいたが……）
　そっと腰に下げた曲刀『イフラーン』に触れ、目を細める。酒場に張り出された【伝説のお宝の在り処、こっそり教えます！】という話も、興味がない訳ではなかったレグルスは、張り紙をカウンターに提出し確認してから情報収集を行っていた。

　調査の過程で、騙されたという被害者たちから話を聞くことが出来た。彼らは宝の地図らしきものを売りつけられたが、その地図はでたらめだった、と。勿論相手はのらりくらりと被害者を相手にせず金を返さないと来た。
　そういう詐欺は多いからか、犯人を成敗ないし捕縛しても次から次にでてくるらしいが、今回の場合買う事をやめた人間に対し乱暴を働いたとも噂されている。
　また犯人によっては経験の浅い冒険者をターゲットにしているとも聞いたレグルスは僅かに目を細め、ため息を吐く。
（場合によっちゃぁ、手加減しなくていいよな？）
　彼は話を聞いた人々に礼を言うと、路地へと消えた。
　その果てについた家は、一見古びた冒険者の宿にも見える。だが、こっそり窓の外からみたのは……どうみても堅気の衆には見えない奴らばかりだった。
　巻き上げたであろうか金を勘定している者、酒を飲んでカードゲームに興じている者、暇そうにキセルを吸う者……。その中に、レグルスが嘗て世話になった盗賊の姿はなかった。
（なら……遠慮なくやらせてもらうとするか！）
　勢いよくドアを蹴破り、瞬時に襲い掛かってきた敵の武器を『イフラーン』で弾き飛ばす。
「なぁ、てめぇら。懺悔の時間だぜ！」
「！　野郎共、相手は１人だ！　叩きのめせ！！」
　ボスらしき男の号令で、詐欺師達が襲いかかってくる。口八丁手八丁で事を進めるため荒事は苦手、という訳ではなさそうだ。
「はんっ、来るなら来いやぁ！！」
　レグルスが、威勢のいい掛け声と共に魔風の光を使う。するり、と『イフラーン』をふるえばかまいたちが巻き起こり、男達はうめき声を上げて倒れていく。巻き起こった風は窓ガラスを割り、テーブルを壁に叩きつけ、金貨や銀貨が舞い上がる。
　音を立てて落ちる煌き。尻餅をつく親玉の首に『イフラーン』を突きつけるレグルスは、にやり、と笑った。
　親玉がレグルスの眼差しに対し情けない声を上げた時、外が騒がしくなった。外を見ると衛兵がこちらに向かってきているのが見える。先頭を行くのは、領主でありいて座のアステリズム、フランチェスカ・Ｄ・Ｓだった。
「詐欺組織壊滅、お見事でした」
「いや、誉めても何も出ねぇよ」
　レグルスはフランチェスカの言葉をむず痒く思いながら苦笑した。

　ギルドからの報酬の他、後日フランチェスカからも報酬を貰う事になったレグルス。話を聞くと、あの詐欺師たちは第一階層の他の地域でも色々と阿漕な商売をしていたらしい。
なるほどな、と腑に落ちたレグルスは、その報酬で思いっきり美味しい酒でも飲もうか、と思うのだった。

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