前程万里の姿也｜リアクション

前程万里の姿也

すごい小萩とフツウのコハギ【分離】【２Pカラー】

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　雨上がりの空、ありふれた家々の囲い、いつも通る散策路。その全ての景色が輝いている。
　何故なら、たった今本条小萩ちゃんがそこに現れ彼女を彩る世界となったからである。
　今にも虹がかかりそうな天を仰げば、「スーパーレジェンド伝説ko-ha-gy」の次なる舞台は翼で虹を駆けるところから始まりでしょうか、などと軽快に胸と足を躍らせ道を行く。
　そんな小萩の空色の瞳に、一般ピープルな女子学生たちが通り過ぎるのが映った。
　――　小萩は思うのです。
　天才の閃きや自問自答は得てして唐突に訪れるものである。
　常に孤高で、誰かに独占されるのを（世界が）許さない小萩、そんな自分を傍に伴わない彼女たちはいつ輝けるのだろう。あとほんのもう少し、自分がフツウ寄りだったらちょっとくらい誰かの傍にいて輝きを分け与えてあげられるのだろうか。
　数秒、自身から発せられるオーラを抑えてみようかと試みるも、それはあっさりと断念された。

「どうして小萩はフツウの女の子でいられないのでしょうか？
　可愛い顔！　セクシーな体！　冴え渡る頭脳！　溢れる才能！
　すべてが完璧すぎる存在で、どこを取ってもステキすぎる小萩に、フツウであることなど許されないのです！」

　生まれ持ったものをコントロールするのは不可能なのだと、口に出しては納得し結論づけたところで、
　スッポーン！　と見事に足元の水たまりに落ちた小萩ちゃんがいた。

「……ぬー、不覚でした。高尚な考え事をしていたので、まぁやむを得ない事態です」

　むしろ可愛すぎる自分を独り占めしようとする小萩ファンによるお茶目な罠でしょうか、とさすがの展開を見せた思考が、目の前に揺らぐ水面に気付いて一旦止まる。

「ふむー？　小萩によく似た女の子が見えます」

　鏡かと思ったのをすぐに撤回した。
　だってそこに映る小萩のそっくりさんには、何か色々と物足りなかったから。
　天才のsparkling eyes（きらめく瞳）は瞬時にその足りない部分を見抜き列挙する。

「顔は小萩の方が可愛いですし、お胸も小萩の方が大きいですし、何より全体的にオーラが無さすぎでもどかしいです」

　あれではまるでさっき見かけた、（小萩的視野による）風景の中の人々、いわゆるフツウな人。
　パーツパーツを見れば、将来有望と見れなくもないので小萩成分を分けてあげたい。そしたら限りなく世界に一人しかいないはずの、この小萩に近づけるのに。

「あっ、とってもハイテクなケータイを使いながら、たくさんのお友達とおしゃべりしています」

　天才唯一の弱点、ハイテクを使いこなすことで足りない成分を補っているのだろうか。
　――　……ハイテクとお友達……小萩のような孤高の存在には、ちょっぴり縁遠いものですね。
　ハイテクはともかく、お友達という存在は小萩が本気を出せばすぐにご縁は出来ることだろう。
　でもそんなことはしない。
　天才がその溢れんばかりの魅力を全力で伝えたら、お友達の数は１００など優に超え、それこそ一国の人口規模にまで膨れ上がるであろうことが予想できるから。
　小萩ちゃんの脳内でのシミュレートはカンペキなのである。脳内であるゆえ誰もツッコまない為。
　水面の風景の中で揺れ動くそっくりさんの姿を、暫しの間追っていれば小萩はフゥッと悟った息を吐いた。

「フツウの女の子でいるのは、あんまりいいことじゃないみたいです」

　よくよく思い出せば、この恵まれ過ぎた容姿と能力をまだまだ全世界のために役立てる必要が、否、使命があるのだ。やっぱりフツウの女の子になっている場合では無い。