ラッカミ村の人狼｜リアクション

ラッカミ村の人狼

　ナガレは考えた。
　トワが最終日まで生きていたら流石に自分が狼だとばれてしまうだろう。サキリとペルラのどちらが狩りかはわからないが、勝負をするなら今日をおいてほかにはない。
「俺だよ。ナガレだ」
　トワの家を訪れ数回ノックをする。すぐに家主がカギを開けてくれた。

「ナガレが人狼だったデスカ」
「そうだ。ちなみに今日の占い結果はだれにした？」
「ペルラを占いマシタ。ペルラは【人間】。まさか、村が狩り騙りをしているとは思いませんデシタ……」
「あんたは十分に情報を落としただろ。最後だけ運が無かったな」
　相方狼の不満そうな顔を思い出しながら話す。ナガレは家主の許可を得ないまま部屋の中に進み手近な椅子に腰を下ろした。居間のよく見えるところにトワの両親の肖像画が飾られていた。
「遺言はあるか」
　狼の意外な申し出にトワが大きな瞳をぱちぱちとさせる。
「ずいぶん親切なワルモノデスネ？」
「チナミと比べればな。で？　無いのか？」
「そもそも、ユイゴンてどういうものデス？」
　首をかしげて尋ねるトワ。小さな女の子には遺言の意味は難しかったようだ。
　どう説明したものか、とナガレは頭をかいて考えた。
「例えばそうだな。このでかい屋敷を、あんたが死んだらどうするかとか。そういう話だ」
「ふむー。わかりマシタ。ちょっと待ってくだサーイ」
　トワは戸棚から羊皮紙と羽ペンを取り出し、さらさらと文章とサインを書いた。
「ユイゴン、書きマシタ。トワのお金や家は、トワが死んだら全部パパやママがいない子のために使ってほしいデス。パパとママの仲良しの弁護士さんにお願いしたら、トワのお願いかなえてくれマスカ？」
「多分できると思うぜ。その弁護士の連絡先がわかれば、俺が手紙を届けてやるよ」
「では、そうしてくだサイ」
　トワは弁護士の連絡先を書いてナガレに渡した。
「受け取ったぜ。じゃ、お前を両親に会わせてやるよ」
　痛みに耐えるため、トワはぎゅっと目をつむった。