【入学式】ぴっかぴっかの１年生！｜リアクション

【入学式】ぴっかぴっかの１年生！

　――ぴっかぴっかの入学式！（６）

　神魂によるアクシデントもあって大盛り上がりの《新入生の誓い》が終わって。
　まだ講堂内に興奮の色が残る中、続けて、
「……校歌斉唱」
　と、神魂事件に理解のある津止孝道教頭先生が、落ち着いた声音で宣言した。
　誰の仕業か裏校歌が流れるというハプニングも挟みつつ、続くは新１年生の担任紹介。
　１年１組の担任たる白沢絢子先生が、新１年生達の前に立ち、最初に頭を下げた。
「皆さん、ご入学おめでとう。今日はとってもいい日ね。私、１年１組の担任を務めさせていただきます――」
　ほんわかと品の良い白沢先生の声を耳に聞きながら、
（１年２組は中野先生。見た目は髪型の印象が強いわね）
　と、貴家衿花は伊達眼鏡越し、自身のクラス担任となる中野空也先生の姿を見遣る。
　僧侶を思わせる坊主頭が目を引くが、その黒い双眸は柔らかな色を湛えているように衿花には思われた。
（穏やかそうな先生に見えるけど……どんな先生か、自己紹介で見極めましょう）
　胸中に頷く衿花の前で、白沢先生がにこやかに挨拶を終える。
　次はいよいよ、中野先生の番だ。
「皆さん、ご入学おめでとうございます。１年２組の担任を務めさせていただきます、中野空也と申します」
　はきはきとよく通る声で言って、深々と頭を下げる中野先生。
「よくお坊さんのようだと言われますが、実際、私の実家は寺でして――」
　へえ、と衿花は思った。改めて、中野先生の坊主頭に視線が行く。
（ファッションとかじゃないのね。なら、あの落ち着いた雰囲気も納得かも）
　中野先生の声は、マイク越しでも気持ちがいいような響き方だ。
　耳心地のいい声で、中野先生は、教科は倫理を担当することや掃除好きであること等を語った。
「この１年間、皆さんと共に、様々な経験を積んでいきたく思っています。よろしくお願いしますね」
　そう締め括って、中野先生がもう一度頭を下げる。
（とりあえず、感じの悪い先生じゃなさそうね）
　と、衿花は静かに伊達眼鏡を上げて、口元をごく淡く緩ませた。
　１年３組の島岡雪乃先生、１年４組の伊東大志先生と挨拶は続き、
「皆さん、御機嫌よう。新任の、四十九院鸞と申しますわぁ」
　次いで、１年５組の担任たる四十九院鸞先生が優雅に一礼。
　その姿に、新田亮はハッと目を瞠る。
（あれは……まさか、クローネ！？　なぜ奴がこの学校に……）
　亮がそう思わずにはいられなかったように、四十九院先生はクローネによく似ていた。
　更によく見れば「似ているけれど違う」ということもわかるのだが、
（タダのソックリさんと見るには、タイミングが合致しすぎている……）
　と、頬に汗を伝わせる亮。
（クローネがやられて間もなくソックリの先生がやってくるなんて、偶然とは考えにくい）
　けれど、クローネは確かに倒したはずではないか。
　仮に生きていたとして、学校に潜入する等という面倒な真似をするだろうか。
　学校に潜りこむことを万が一考えたとして、変装もしないとは考えにくい……。
　様々な考えが、亮の頭に浮かんでは消えていく。
（もしかすると……）
　クローネは、野々ののこのように神魂を失い、《ひと》となってしまったのではないか。
　そんな考えが、亮の頭を掠めた。
（それで、記憶も失って……ダメだ、判断材料が足らない）
　これは色々探ってみないとな、と、亮は眼差しを鋭くするのだった。
　そんな中、担任紹介は恙無く進み、１年１０組の上野睦子先生の挨拶を以って無事に終了。
　津止教頭先生がマイクに向かおうとしたところに、
「ちょっと私にやらせて頂戴♪」
　と、桜栄あずさ理事長が割って入った。

「これにて、私立寝子島高等学校の第６２回入学式を終わります！　皆、ようこそ、寝子高へ♪」

　津止教頭先生が痛む頭を押さえる横で、桜栄理事長は、新１年生達へと手をぶんぶん。
　その様子に、衿花は青い瞳をぱちぱちと瞬かせる。
（新入生の誓いといい、今の閉式の式辞といい……）
　全体的にやたらとノリがいい、何ともお祭り好きな学校だと衿花は思った。
（ついて行けるのかしら……）
　とは、思わなくもない。けれど。
　この学校には、幾つかの不思議な事件で縁を得た先輩達もいるわけで。
（――まあ、きっと何とかやっていけるわよね）
　そんなことを思って、衿花は思わず、くすりと笑ってしまったのだった。

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