【入学式】ぴっかぴっかの１年生！｜リアクション

【入学式】ぴっかぴっかの１年生！

　――ぴっかぴっかの入学式！（５）

　数多の視線も、困惑が混ざる囁き声も何のその。
　黄色いリボンを胸に飾った志波武道の声は、講堂中に清々しく響き渡った。

　さぁって新一年の諸君！
　清く正しく節度をもって！　それが第一★　自律ダネ！
　だがその分騒げるときはドンと騒ぐのが楽しいコツだぜぃ！　これが自由！！

　弾けるような明るい声に、新１年生達の困惑が興奮へと変わっていく。
「何だかわかんねぇが、面白いじゃねぇか」
　魚塚源三の呟きが、講堂の空気の変化を如実に物語っていた。
　何だか楽しいことが起こりそう、そんな空気が辺りに伝染していく。
　武道は、口元に弧を描いた。

　君達がこの高校に入り、誓いを立てるならば……
　ならば！　俺も！　今ここで誓おうじゃないか！

　うぴゃー！　と瞳を煌めかせて、パトリシア・プロウライトが武道の次の言葉を待つ。
（何だか、すごいことになってきたわね）
　と、伊藤美緒の視線も、生徒会長のパフォーマンスに釘付けだ。
　息を大きく大きく吸い込んで、武道が、マイクに向かって宣言する。

　皆が楽しいと思える学校生活を送れるように、
　フツウを守るために全力で駆け抜けます！

　瞬間、講堂の中が水を打ったようになった。
　やがて――どこからともなく、拍手の波が湧き起こる。
（なんていうか、寝子高らしいなぁ）
　そんなことを思いながら伊藤佳奈も笑顔でぱちぱちと手を叩き、
（志波先輩、やってくれるな……）
　と、新田亮も口の端を僅かに上げていて。
　拍手の音を全身に浴びながら、武道は自身の心の声に耳を澄ませた。
（茂先輩のようにはなりきれない、なら……）
　しゃんと、前を向く。
（俺は俺らしい生徒会長になろう。場を進ませ、場を楽しませるそんな会長に）
　深々と一礼をして、武道は《新入生の誓い》を終えた。
　２年生としてしっかり落ち着いてなきゃ、とじっと《新入生の誓い》に耳を傾けていた恵御納夏朝も、
（新入生さん達の誓いも志波先輩からのサプライズも、わくわくしちゃうな）
　なんて、進行手伝いとしてステージ脇に控えながら、拍手を送る。
（僕も……黄色いリボンつけて、誓いを立ててみたかったな……）
　そんなことを思い、僅かに眼差しを下げた、その時。
「……って、えっ！？」
　思わず、声が漏れた。
　胸元に、いつの間にやら黄色いリボンが煌めいていたのだ。
　四十九院鸞先生が、こそりと言った。
「楽しい入学式ですわねぇ。次は、夏朝ちゃんの番ですかしらぁ？」
　マイクが、回ってくる。
　夏朝は、すうと息を吸い込んだ。

　２年２組……恵御納夏朝、です

　にゃんにゃんクラス、と言いたいのはぐっと堪えて。
　迷ってばかりだと自分を評する夏朝だけれど、精一杯声を張る。

　自分のやりたい事を、なりたいものを……
　僕自身の進路と将来を見つけて、その道へ向かって頑張ります
　そして……未来への道と、寝子高や寝子島の生活を……
　今まで以上に目一杯、楽しみます！
　皆が楽しめるよう、寝子高の行事とか手伝ったりもしたい、です！

　真っ正面から誓って、夏朝は講堂中を見渡し、叫んだ。

　寝子島を、フツウを過ごす皆……頑張れー！

　夏朝からのエールは、講堂中に力強く響き渡ったのだった。