猫鳴館を知ってるかい？｜リアクション

猫鳴館を知ってるかい？

※地下帝国

「猫鳴く館にゃ国もある～♪」
　骨削瓢は、掃除には参加せず地下帝国の裏寝子温泉でのんびり入浴中でした。
　メリメリ……ドッボーン！
　温泉にワカメ……ではない、天井から落ちてきた洋二とゆりのびしょぬれの頭が浮かびあがりました。
「……な、何ここ！？」
「おや、新参者かい？　通過儀礼って奴だね。説明を兼ねて館の隠し通路から怪異の出る場所から何から何まで案内してやろうじゃないか」
　手早く身支度をすると、瓢は呆然として言葉もないゆりを引っ張りあげ、歩き始めました。
「怖じ気づいたなら結構。ここは奇人変人の巣窟さぁ、真っ当なヒトならいくら苦学生だろうとマトモな住処が幾らでもあると気付けるだろうよ。これは身を案じての事だよぃ？」
　青くなりコクコクとうなずいたゆりはやっとのことで言います。
「帰る！　帰るよもう！」　
「残念ながら出口がふさがってるみたいだね」
　洋二がのんびりと言いました。
「ええっ？！」
「崩落か、それもまたここじゃあるあるだね。さぁさ生き埋めになりたくなきゃ気張って掘りなぁ」
　瓢はつるはしやらスコップを取り出し、ゆりに渡すと、歌いながら自分も掘り始めます。
「ハイホーハイホー、スパッツは至高～♪」
　洋二も楽しそうに掘っています。
「もういや、なんなのここー！」
　そのとき、天から声が響きました。
「おーい、そこにいるか～？」　
「ここだよ！　早く上げて！」
　梯子を下してもらい、これで助かった、と地上へ上ったゆりでしたが。

　ジリリリリリリ……！
「な、何の音？」
「おっとうっかり防犯モードを起動させちったい。気を付けないと館に喰われるよ～」
　地下から、瓢の不気味な声が響いてきたのでした。
「えーと、防犯モード発動中！　防犯モード発動中なの！　寮生は注意されたしなの！　これどこで止めるのなの？！」
　館内放送と共に、床から棒が飛び出してきました！
　ばしいっ！
　続いて長さ30cmほどの廃材が後ろから飛んできました。
「これでも尚、住むことを決意する好き者共よ、おたくらを歓迎しよう！」
　登ってきた瓢の声が響いたときにはもう、ゆりは後ろも振り返らずに逃げ出していたのでした。

「久しぶりに来てみれば手荒い歓迎だな」
　ゆりと入れ違いに入ってきた者がありました。
　相変わらずクールに、押し上げた眼鏡が光ります。
　卒業してもう制服姿ではない彼は、海原茂。元自治会長です。
「あ、うなーせんぱい、いいところにきたなの！　これ、見方がわからないのなのでチョット教えてほしいの！」
　明里は茂をここぞとばかりにとっ捕まえて質問攻めにしました。
「ああ、これなら、ここの裏側の数字が……」
「あ、そうなの！　こっち来て、ここを修復したのよ！」
　はじめの少しだけちゃんと聞きたいことを聞きつつ、明里は茂の手を引っ張ります。
　ヒビがすごかった場所とか床が抜けやすかった廊下区域とか、扉のない部屋、夏朝や加代たちが修理してくれたところ。
　見てほしいところがたくさんでした。
　相変わらずムッツ……ポーカーフェイスでしたが、茂は満足そうに見えました。
　そこへ、地下から洋二のわかめ頭が出現しました。
「あっ、わかめ先輩！　ちょうどよかったなの」
（きっと「ここで会ったが百年目！」とか言いながら、謎の格闘シーンが始まるのなのよ）
　無駄にアツいであろう二人の再会を見届けたいとわくわくする明里ですが。
「やあ、海原先輩お久しぶりです。僕に会いに来てくれたんですか？」
「床が汚れるから体を拭け」
　少しはアツさを感じさせる洋二の言葉に対して、茂は冷ややかな目で見返すだけでした。
　

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