【スッポンポン帝国の野望！】

　宇宙では強大な帝国の襲撃から辛くも地球が守られたところですけれど、ここ寝子島にもまた、恐るべき帝国が樹立されようとしておりました。
「ふ、ふふ……！　タッマーキスラッシュにて世界をパッカーンし、己の力を見せつけた所で、目指す次なるステップは……そう！　人心掌握ッ！」
　その初代総帥たる男が、この方。アケーチ・タッマーキ！　シナリオガイドにて地球をマップタツにした張本人でありました。
　すでにかなりビッグなことをしてしまっているアケーチですけれど、ことの成り行きを黙って眺めているつもりはありません。
　きらーん！　顔だけはさわやかに、彼はこんなことを言ってのけました。
「『私の隠された右目からは、タッマーキ・目力ビィィーーーッム！！　を放出できるのです』、このように！」
　いつも前髪でふぁさっと隠れている右目がぎらりと輝きを放ち、発射される目力ビームッ！　ずばばーーーっとシーサイドタウンの街並みを走り抜けた光線は、こんな時にも関わらずのんきにデート中などっかのバカップルの片方、キメキメに着飾った男へとぶち当たり、
「う、うおおおお！？　なぜだか猛烈に身体が火照ってきたんだぜ！？　あ、暑くてたまらん！！　見ないでくれ、こんな俺を見ないでくれ涼子ーーーっ！！」
「た、タケシ！？　どうして突然服を脱ぐのタケシ！？　いやあああっ、やめて！！　ヘンなもの見せないで、このヘンタイ！！　ヘンタイ！！　ヘンタイーーーっ！！」
「……お嬢さんのほうを狙ったんですが」
　まずは通りすがりの恋人たちを破局に導きつつ、ウソによって会得した破廉恥な必殺ビームを武器にアケーチが目指すものこそが、国家の樹立！
「この『タッマーキ・目力ビィィーーーッム！！』によって、私好みのスッポンポン帝国をここに打ち立て、私が王として君臨するのです！　ふ、ふふふ……ふふ、くふふッ、くふふふふ……！！」
　混迷を極める世の中をエロスで染め上げるべく、アケーチはばさりと翼を打ち、見た目だけは華麗な天使のように飛び立ちます。
「今こそ、私の妄想の全てを現実に……ああっ、ワクワクしすぎて身体の色んな部分が○×△□（放送禁止音）ーーーッ！！」



　さて、いっぽうこちらは野菜原 ユウ。持ち前のちゃらんぽらんさでウソまみれな一日を楽しんでいたところ、彼はえらいことに巻き込まれつつありました。
「うわあああ、なぜかでっけー裸のねーちゃんが俺をさらっていくぅぅぅ！？」
　ビルほどもある、それはあまりにも巨大なスッポンポンのお姉さん！
　実はアケーチさんが先ほど、寝子島に襲い来る巨大怪獣へ試しに『目力ビィィーーーッム！！』をぶちかましてみたところ、たぶん何かしらのウソと混ざり合ったのでしょう。なぜかスッポンポンの人間に変身してしまったりしたのですけれど、顔を真っ赤にして慌てふためくユウは知る由もありません。
　ちなみにお約束、巨大お姉さんの巨大あんなところや巨大こんなところは、建物やら信号やら標識やらでうまい具合に隠れて見えません。残念、あしからず！
「あの、どうせなら指でつまむんじゃなくてこう、そのでっけーおっぱいに挟まれながらさらわれたいなーなんて……」
「待ちなさーーーいっ！！」
　ばばん！　ユウのピンチに……ピンチかな？　ともかく現れた救世主！
「新たな時代に誘われて、『魔法少女ピンキーモエ』！　華麗（カレー）に見参っ☆」
　想い人たるユウを救い出すべく、ビーム竹刀を引っ提げて、鬼河内 萌ここに参上！
「……鬼河内じゃん」
「うんっ、助けに来たよユウくん♪　……あれっ、あんまり嬉しそうじゃない？」
　むちむちぷりんな巨大お姉さんと、何かと縁のある小柄で可愛らしい女の子をなんとなーく天秤にかけてしまう、フクザツな男心……はさておき、萌はさっそく戦闘開始！
　カレー大好きな萌は手のひらからカレー魔法（？）を発射して、巨大怪獣を攻撃！　アツアツほかほかなカレービームにきゃあんっ、なんて可愛い声で怯んだお姉さんの悶え顔にユウくんが喜んでいる間に、
「いくよっ、魔導騎士バルツァーン！」
『ＮＹＡＧＯＯＯＯＯＯＯＯＮ！！』
　なんか巨大ロボを召喚して乗り込むと、巨大スッポンポンお姉さんとド派手な格闘戦をおっぱじめました。
　その余波でお姉さんの手からすっぽぬけたユウは、お姉さんのたわわな胸の谷間にすっぽりと落っこちて、
「うおーっ♪　こりゃ極楽……」
「なっ、何やってるのさ、ユウくんのエッチ！」
　萌はバルツァーンの手をずぼっと谷間に突っ込み、彼をサルベージ。いやぁん、とか悶えた巨大お姉さんのセクシーボイスに鼻の下を伸ばすユウに、きりきりと眉毛を吊り上げたりしました。



　と。そこへ降臨する、ひとりの天使。
「ふ、ふふ……なかなかやりますね、お嬢さん！　我が帝国の尖兵を、こうもたやすくあしらってしまうとは」
　スッポンポン帝国の支配者、アケーチ！
「キミがユウくんをさらおうとしてるの！？　絶対許さないんだから！」
「いえいえ、私としてはおふたりとも揃っていらしてくださっても構わないのですよ？　どなたでも大歓迎です。もちろん私の帝国の住民は、誰でもスッポンポンになっていただきますけれど……ねッ！！」
　言うが早いか彼の右目から放たれる、必殺目力ビィィーーーッム！！
　ずばばばばんっと直撃した光線によって、巨大ロボこと魔導騎士バルツァーンは一瞬にして、ネコミミ姿の可憐な女の子に変わってしまいました。こちらももちろんスッポンポンでして、にゃあああん！　と涙目で胸を抱きながら恥じらいの顔を浮かべております。
「わあっ、バルツァーンまでスッポンポンに！？　こ、こうなったら……！」
「こうなったら、どうすんだ鬼河内！？　あんな変態に勝てるのかよー！？　さすがに俺がスッポンポンになるのはごめんだぜ！」
「それなら……この手があるよ！」
　ビーム竹刀をぶおんと振り上げて、萌はひっ迫する状況を打破すべく、起死回生のひと言をぶち上げました。
「『ユウくんも、魔法少女だったんだよ！』」
「は？」
　ほわほわ、ほわわん！　ユウの身体が淡いピンク色の光に包まれて、足元から少しずつほどけていく制服……身にまとうのはひらひら、フリフリのコスチューム。頭の上で揺れる大きな大きなリボンも愛らしい、
「魔法少女・ファンキーユウ参上☆　ってなんでだよ！！　女装じゃん！！　魔法少女（女装）じゃん！！」
「ゆ、ユウくんかわいい……！」
　女装コスプレ魔法少女に変身！　ユウからはすぐさま抗議の声があがりましたけれど、なんかお目目きらきらでときめいてる萌と、この方には意外と好評だった模様です。
「ふふ……魔法少女（男）とは！　これは剥きがいがありそうですね。さあおふたりとも、私のビームで生まれたままの姿をさらけ出すのです！　スッポンポンこそが美の極致……ふ、ふふふ。くふふふふっ……！」
「ひいいい！？　た、助けて鬼河内ー！！」
「いっしょに戦うよ、ユウくん！　ひとりじゃ無理でも、ふたりならきっと勝てるはず……でもボクがスッポンポンにされそうになったら、ユウくんが身代わりになってね！　だってユウくんに見られちゃうなんて、恥ずかしいから……ぽっ」
「俺だって恥ずかしいわあああ！！」
　こうしてふたりの魔法少女は、恐るべきスッポンポン帝国との大激闘へと身を投じてゆくのでありました……！
　ちなみにこの後、ふたりはあえなくアケーチのビームを喰らって仲良くスッポンポンになりながらも、鏡でビームを反射するという奇策により、アケーチ自らをスッポンポン化することに成功。見事帝国の野望を打ち砕くことになるのですけど……らっかみ！ではちょっと描写できそうにありませんので、このへんで打ち切りＥＮＤとさせていただきます。いやぁ、残念だなぁ。