妄想＜ウソ＞が現実＜ホント＞になるところ。それが、らっかみ！｜リアクション

妄想＜ウソ＞が現実＜ホント＞になるところ。それが、らっかみ！

【ＲＯＣＫなふたり】

「妄想が現実になっちゃうの！？　これはもー、乗っかっていくっきゃないよね♪」
　いつだってロックな魂をお持ちの、ご存じ雨寺凛ちゃん。本日の異変にもまた、がっつりとノッていく方向のようであります。
「そうだなぁ。じゃあ、『私のギターがとってもイケメンなお兄さんに変身する！』とか？」
　なんて言葉を口にしてみますと……たちまち凛の愛用のギターがぺっかーっ、とまぶしく光り輝いたではありませんか！
「……よお、相棒。こうして話すのは、久しぶりだな」
「うわぁ、ホントに人間になっちゃった！」
　かくして直後、目の前にはさわやかイケメンフェイスな２４～５歳くらいのお兄さんが立っていて、凛の黒髪をさらりと手で撫でているのでした。

「いつも愛してくれて、ありがとよ」
「う、ううん……だって、私の大事なギターだもん。当たり前だよー！」
「ふっ。お前らしいぜ」
　どきどきどき。いつも一緒にいるはずなのに、触れ合っているはずなのに……今日が特別な一日だからでしょうか？　とっても良い声で耳元にささやきかけられると、凛はもうへなへなと脱力してしまいそう。
　なにせ変身したギターさんはカッコよくて、背だって高くて、これでもかとさわやかなのです！
「お前のその気持ち、いつも感じてる。けど今日は……ほら」
「わわ！？」
「俺の気持ちもこうやって……このボディなら、直接伝えられる」
　ぎゅっ……！　抱きすくめられると、凛の身体はすっぽりとギターさんの胸の中へ収まってしまい、ますますどきどき。きゅんきゅん！
「せっかくの機会だ。いつも愛してくれている分、今日は俺からもたっぷりと、恩返しをさせてもらうぜ」
「え？　な、なに？」
　言うが早いか、ギターさんはひょいと凛をお姫さま抱っこでベッドへ運ぶと、ぽすん。借りてきた猫のように丸まった凛の横へぴったりと、添い寝状態！
「今日は俺が、お前の奏者だぜ……」
「わ、わッ……！？　うわぁぁぁ、これは恥ずかしいよ～……！？」
　そのまま抱きすくめられて、鼻先がくっつきそうな近くでそんなことを言われるものですから、凛ちゃん真っ赤っか！　胸の鼓動は、とめどなく早まってしまいます。
「俺の大好きな、お前の声。もっと聴かせてくれよ……愛してるぜ、凛」
「う、うん……私も！　私も、あなたが大好き……！」
　それは恋人のような、あるいはかけがえのない親友同士のような、ちょっぴり不思議なむつみ合い。数え切れないほどの演奏をこなし、長い時を経てきた凛と彼の関係性は、ひと言では言い表せないほどに複雑で、そして固く結びついているのです。
「いつまでも、ずっとずっと……相棒だからねっ♪」

　ふたりはそのままベッドの中で、眠りに着くまで、心行くまでおたがいの存在を刻み合いました。
　翌朝目が覚めると、凛はその不思議な一日のことを覚えてはいませんでしたけれど……かたわらにはもちろん、愛用のギターが物言わぬままきらりと輝いていて。
「ふわぁ……おはよ！　ふふっ、いい夢見ちゃったなぁ。今日もよろしくねっ、相棒♪」
　彼の真っすぐな想いはもちろん、凛の心の奥底へ、しっかりと息づいているのです。これからもずうっと、残り続けるのでしょう。
　ふたりはいつまでも、最っ高にロックなパートナーなのですから！