グラフィトゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン！！！！｜リアクション

グラフィトゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン！！！！

■アーティスティック・エスケープ
　アーティスト、新田亮。
　彼はケーサツたちにとっても有名な存在だった。
　それは彼のアートスキルだけの話ではない。
「これで完成。今日もクールに仕上がったな」
　ニット帽にライダージャケット。
　首にはヘッドホンを提げた彼こそ、アーティスト亮である。
　スプレー缶だけをつかってトンネルの内壁にアートを描く彼の作風は、若者たちに絶大な人気があった。
　今回描いたのはカラフルな鳥のシルエットだ。今にも飛び立ちそうな鳥と、その躍動感やうずまく風、野性的なにおいを感じさせる複雑な色合いが一瞬のうちにインパクトとして人の脳裏に焼き付くのだ。
「さて、次の作品は……おっと」
「待ちなさい、新田亮！　現行犯でタイホします！」
　遠くから女性のケーサツ官が走ってくる。
　亮はスプレー缶をシャレたリュックサックへしまうと、すぐさま相手の逆方向へと走り出した。
　金網をワンステップで駆け上り、跳躍。
　アスファルトの道路にロールをかけることで衝撃を逃がし、停めてあるバイクへと駆け寄る。
　ケーサツ官が同じく金網を登ろうとしたところで、亮はスプレーガンを取りだした。
　ハッとするケーサツ官。
　亮はにやりと笑うと、無防備な相手めがけてスプレーガンを発射した。
　彼のアートスキルによって一瞬にしてカラフルな迷彩柄に塗りたくられるケーサツ官。
「ははっ、カラフルなメイクが似合うじゃないか」
　驚いて金網から落ちるケーサツ官。
　亮はバイクに跨がると、後方から聞こえるサイレンの音に苦笑した。
「おいおい、メインディッシュか。モテる男はつらいね」
　バイクのエンジンをかけ、アクセルを開いて走り出す。
　特殊改造された亮のバイクはパトカーの速度をゆうに上回り、ハイウェイの自動車をジグザグに追い抜きながらどんどん距離を離していく。
「さすがにもうオシマイかな？　いや……」
　ヘルメットを押さえ、ちらりと振り返る亮。
　速度をあげた白バイが、亮の後ろをぴったりととらえていた。
「俺としたことが、デザートを忘れていたよ」
　アーティスト亮。彼の芸術的なまでの逃走劇は、若者たちを熱狂させる。

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