桜花寮フルーツバスケット！｜リアクション

桜花寮フルーツバスケット！

○ヒーローのお引越し

「進級したことだし、俺も本格的に一人部屋へ引越しさせてもらおう！」
　風雲児轟は、配置図を手に新しい部屋を下見にやってきた。
（といっても、今までは二人部屋ではあったけど、相方が見つからなかったから実質一人部屋だったんだよなぁ）
　熱い友人との出会いをちょっと期待したりもしていたが、肩透かしだった。
「でも新入生も来る事だし、いつまでも二人部屋を独占ってわけにもいかねえよな！」
　一人部屋に慣れてしまうと、周囲を気にせず、集中してトレーニングに励めるのはありがたい。
（それに正義についての主張が合わなかったりすると気を遣うしな……）
　特撮ヒーローに憧れている轟は、憧れだけでなくヒーローに変身できるろっこんを持つ。
　ルームメイトが悪の手先、なんてことはそうそうないだろうが、ヒーローは一般人に正体を知られるべきではないだろう。
　ヒーローは孤独なものでもある。
「当たり前だけど前の部屋より狭いな」
　だが食堂や玄関への距離は悪くない。
「幸い荷物はそんな荷物をにないはずだから、なんとか全部収まるだろ！」

　元の部屋に戻り、ちょいちょいっと荷物を運ぶ。
（同じ寮内だから移動が楽で助かるぜ。でも通行人には気をつけなきゃな！）
　ヒーロー修行と称して運動ばかりしていたおかげで、重い荷物も苦にならない。
　移動を終えると、さっそく荷物の配置を始めた。
「しかし改めて自分の荷物を見ると本がかなり多いな。なんか俺がすげァ頭のいい人間に見える」
　だがほとんどアメコミとか特撮系の本、あと漫画だったりする。
「ほら、寝子島のローカルヒーローを目指す身としては偉大な諸先輩方の活躍を見て勉強をしたいから……そう、これはヒーローの教科書なんだ！」
　なんて誰かに言い訳しつつ整理整頓を進める轟であった。
「にしても、俺もついに先輩か。なんか実感わかねえな。それに先輩らしい事もできるかどうか……」
　入学式のことが、まるで昨日のことのように思い出される。
　あれからいろいろあったが、自分は成長できているだろうか？
（でも、先輩らしい事は難しいかもしれないけど、新入生達が無事に学生生活を送れるように、この島の平和を守ることなら出来る！　なら、そいつを全力で頑張るまでだ！）
　そう思うと、元気が湧いてくる。轟は力強く拳を握った。
「よぉし！　今年も一年、心機一転で頑張るぜぇ！」　