星ヶ丘寮のある一日｜リアクション

星ヶ丘寮のある一日

☆鳥さんと一緒に

　御巫時子は、家の縁側でまったりお茶を飲んで寛いでいた。
　遊びに来てくれる鳥さんたちとお話するのが時子の楽しみなのだ。
　ヨタカさんは庭の木に止まって温かな風を感じながら寝ているようだ。
　木の瘤のようになって動かない。
　雷鶏さんは時子の近くの座布団に座って休憩中。
　先程まで庭を走り回っていた。
　座布団が最近のお気に入りらしい。

　チャイムが鳴り、時子は立ち上がった。
（誰でしょう？）
　インターホンからは男性の声がした。
「こんにちは、教頭の黒崎です」
　驚いて時子は扉を開ける。　
「おはようございます……」
（家庭訪問の様な感じでしょうか？）
　どの部屋も綺麗に整頓されているので、急な来客にも慌てることはない。
　時子は黒崎教頭を居間にお通しして緑茶と和菓子を出した。
「気を遣わなくていいんだよ。でもこれは美味しそうだね。いただきます」
　和菓子を食べながら、教頭は室内を見回す。
「綺麗に片付いているね」
　つぶやいた教頭に時子は言う。
「教頭先生も部屋を綺麗にされてるイメージですね。お洒落な感じで色を統一されてるような……写真があればぜひ見てみたいですね」
　そう言いながら時子は、いつの間にかヨタカさんが庭の木から部屋の中の止まり木に移動していることに気づいた。
　しかし木の瘤のように見えるので教頭はまったく気づいていないようだ。
（チャイムの音で目を覚ましたのでしょうか）
　そう思っていると、
「いやあ、僕は男の一人住まいだからね。なるべく片付けてはいるけど見せられるほどの部屋じゃないよ」
　黒崎教頭は笑った。
「キョキョキョ」　
　その時急にヨタカさんが鳴きだした。
「うわっ、何だい？」
　教頭が驚く。
「驚かせてすみません。お友達のヨタカさんです」　
　時子の説明に教頭はようやくヨタカさんの姿を捕らえた。
「なるほど、御巫さんは鳥を飼っているんだね。これなら一人でも寂しくは……」
　言いかけた教頭の手を、雷鶏さんがツンツンつつきに来た。
「いたた……！　僕は怪しいものじゃないよ」
「雷鶏さん、教頭先生を追いかけないようにして下さいね……すみません、雷鶏さんは興味のある人をつつきたくなるらしいのです」
　ツンツン。今度は足をつついている。
「ここで賑やかに楽しく過ごさせてもらってます……」
　にっこりと微笑む時子。
「地味に痛いけど……楽しそうで何よりだ」
　雷鶏さんの歓迎はちょっと痛かったが、時子の可愛らしい笑顔を見れば、やはり爽やかな笑顔を返してしまう教頭だった。
　