星ヶ丘寮のある一日｜リアクション

星ヶ丘寮のある一日

☆動物、勉強、質問会

「俺の部屋も案内しよう。同居人（？）も紹介したい」
　修はそう言って新寮生たちを案内する。
　その言葉に、女子生徒の一部が色めき立つ。
（イケメンよね）（ルームシェアしてるのかしら？　相手も美少年？）などと想像をたくましくした新入生たちだが。
「ただいま、カーキー、テオテオ、ロング……」
　修が部屋に足を踏み入れると、どっと動物たちが集まってきた。
「ワン」　　
　犬達はちゃんと挨拶し、猫達は来訪者に興味津々の目を向ける。
「動物が好きなんだ。世話も色々あるけど楽しいよ」
　可愛がられているため人を恐れない猫が多いのか、猫カフェみたいな超癒し空間を感じさせる。
「礼儀正しい家族だね」
　黒崎教頭も微笑んだ。
　
　勉強部屋には学術書や勉学書籍がピッシリ揃っている。
　もちろん埃をかぶっているものなどはない。
「他寮では本すら置けないからね」
　と笑う修。
　大型の机の上には季節の花、そしてツインテールの少女との写真が飾られていた。
　新入生たちが写真に気づき「可愛い子ね……」「え、妹ってことはないわよね？」とひそひそ話が交わされる。
「新入生に目をつけられないよう彼女アピールかな」
　平然と入り込んでいる月詠が突っ込む。
　修は照れながら写真立てを倒した。
「これは……その……なんでもないんだ」
　それから小声で月詠に言う。
「いつまで新寮生に混ざっているんだ」
「何、ただ単に興味があるだけさ気にするな」
　マイペースに見学を続ける月詠である。

「さあ、居間でお茶でも飲もう」
　紅茶好きの黒崎先生にお勧めの茶葉で、修手ずから紅茶を淹れる。
「何か質問はあるかな」
　目を輝かせたおしゃれな女子生徒の手が挙がった。
「あの、ご趣味は……いえ、お勧めの部活はありますか？」
　あまりに個人的な質問すぎるかと、途中で方向転換したらしい。
「寮とは関係ない質問だな」
　苦笑しつつ修は答える。
「趣味は読書などいろいろあるが、部活は新聞部と射撃部を掛け持ちしている。ここにいらっしゃる黒崎教頭先生が新聞部の顧問を務めてくださっている。
　自分の文章や写真で皆に真実を伝えるのも、体力や筋力がなくても一瞬の集中力で的を打ち抜くのもとても楽しい。見学だけでもぜひ気軽に来てくれ」　
「ありがとうございました」
　新聞部の説明ではうんうん、と黒崎教頭も頷いていた。
　次に手を上げたのは真面目そうな女生徒だった。
「星ヶ丘寮の魅力は何だとお考えですか」
「うん、いい質問だな」
　修は少し考えて答えた。
「勉強に集中できるかは大きいな。環境じゃなく本人の努力だと精神論を語る人も居るが、話し声や騒音に邪魔されたり、狭くて私物も置けなかったり、衣食住に無駄な思考と時間を取られたりする環境では難しいだろう。
五輪選手も練習できなければ才能を伸ばせない……そういう事」
　修は笑顔になる。
「星ヶ丘寮は他校にない素晴らしい寮だよ」

「入寮を待ってるよ」
　そう言いながら修は帰る彼らを見送った。

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