星ヶ丘寮のある一日｜リアクション

星ヶ丘寮のある一日

☆原石のお茶会

　今にも雪を降らせそうな重たい雲の如き長い白髪。
　陶磁器のような透ける白い肌。
　さらに藍と蒼が混じった不思議な双眸。
　そんな浮世離れした雰囲気を漂わせる菫青醒夜子の家は、鬱蒼とした木々に囲まれていた。
　とはいえ森の中というわけではない。雑草は処理しなくてはいけない。
　学校の制服の上に薄いさくら色のストールをまとった醒夜子は、その様子を確かめるために自分の屋敷の玄関まで出てきた。
　そこで教頭先生と目が合った。
「ごきげんよう黒崎教頭先生……あら？」
「新入生の見学です。お邪魔してもいいですか？」
　浮世離れしていることでは醒夜子といい勝負な葉月が、新入生を引率してきていた。
　ちょっと驚いた醒夜子だが、そういえばおしらせが来ていたと思い出す。
「もう新入生が見学に来る季節なのね、折角だからお茶でもどうぞ」
　醒夜子はメイドに声をかけ、西洋風の屋敷に皆を招き入れた。

　浮世離れしている雰囲気の上、話しかけられたら「あの星はまるでアイオライトのようね」などとしか答えないくらいのコミュ障である醒夜子だけれど。
（なんでもない日の、誰も訪れない３時のお茶会もいいけど、やっぱり誰かと一緒に『なんでもある日』をお祝いしたい）
　そんなことを思っていた。
　一つ一つに違う宝石がちりばめられたお手製のカップを並べる。
　ガーネット、ローズクォーツ、ピンクサファイア、カーネリアン、エメラルド、サファイア、ラピスラズリ、ソーダライト、アクアマリン、アメジスト。
「素敵……」
　葉月の緑の瞳が揺れた。
　手先が器用で、私服は全て自分でオリジナルの衣装やアクセサリーをデザイン・作成している葉月も、このデザインには惹かれるところがあったようだ。
　良家の子弟が多いであろう新寮生たちも、このカップの美しさには目を見開いている。
「見事だね」
　ちゃっかり新入生に紛れ込んでいる月詠も頷く。
　単に高価なだけではない。カップの上品で手抜きのない作りには、醒夜子の凝り性な性格が現れていた。

　醒夜子は手ずから新入生たちにお茶を注いでまわる。
　紅茶からは僅かに桜のフレーバーが香った。
　紅茶とお茶菓子のクッキーをいただく新入生たちに醒夜子は自己紹介する。
「菫青醒夜子です。私は鉱石が好きで、身の回りの物と鉱石を融合させる、をテーマに芸術科に在籍しています」
（新入生って、いわばまだ磨かれていない原石のようなものね。これからどんな風に磨かれていくのかしら）
　彼ら彼女らの顔を宝石を吟味するようにうっとりと眺めた醒夜子は、彼らを磨くための裏方になるのであろう教頭にも微笑みを向けた。

（長いようで短かった内覧会も終わりね）
　葉月は新入生たちの顔を見回した。
　知らない人の中で豪華な寮に足を踏み入れて、最初は緊張の面持ちが並んでいたが、今はすっかりリラックスした様子で、会話がはずんでいる子たちもいる。
　皆が入寮してくれるかはわからないが、入学前の大切な思い出になったならいい。
　そう思い、達成感を感じる葉月だった。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
皆さまの星ヶ丘生活、見学者の気分になって拝見させていただきました。
とても楽しかったです。
教頭も新入生も、満足できたようです。

黒崎教頭と見学者が別な目的で動いていたので、アクションが絞りにくかったかと思います。
アクションで片方だけに触れている場合両方は描写されていませんが、一緒にいたものと考えてくださっても構いません。

それではまた、次のガイドでお会いしましょう！

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