それゆけアニマルパーク！｜リアクション

それゆけアニマルパーク！

■ペンギンさんの時間
「餌やり体験がしたいのです！」
　パークへゆく道すがら、路線バスの中でガイドを握りしめてそう言ったのは椿家のお嬢様こと椿美咲紀である。
「全部かい？」
「全部です！」
「俺はキュウリのガイドじゃないぞ。で、そうだな、無理ではないが……駆け足になる」
　調べたスケジュール表を手に振り返ったのが、一緒にパークへやってきた八神修である。
「パーク内を走る覚悟はいい？」
「ぜがひでも！」
　使いどころが違う。修にそう言われつつも、美咲紀はガッツポーズをとった。

　アニマルパークにはいくつもの学習体験施設が存在している。
　池のほとりで固有種であるところのホクリクサンショウオを見つけて観察したり、希少動物の習性を観察したり、半野生で生きているムササビやホタルといった動物を遠くから観察したりだ。
　そんな中で人気が高いのが動物たちへの餌やり体験である。
「いくら人気だからといっても、餌のやり過ぎは健康を崩してしまう。そういうわけでできる人数は限られてくるわけだ。というわけでまずは、ペンギンからだ」
　ペンギンへの餌やり方法は至って簡単だ。プールに魚を投げ入れて、ぱくっと水中でキャッチするさまを見るのである。
「わあっ、すごいのです！」
　魚をキャッチするペンギンを見て手をぱちぱちする美咲紀。修はそんな彼女の横で、ペンギンから学ぶ流体力学について流暢に説明していた。
　ものを鑑賞するときに知識を共有しようとするという、修の癖である。美咲紀も美咲紀でそれを分かって彼を付き合わせているので、軽く音声ガイドの気分だった。
　続いてキリン。
「五センチくらい身長を分けて欲しいのです……」
「首だけ長くなってもしらないぞ」
　続きましてニホンザル。
「お猿さんはやっぱり賢いのです。どうすればくれるか分かっているのです！」
「高度な社会性をもつ動物だからね。群れの空気を乱すことをすると省かれてしまうんだ」
　さらに続きましたオオカミ。
「ふおおおおっ！　やっぱりワンコはひと味違うのです！　わんこは！　ワンッて鳴くのですね！」
「オオカミは本来ワンワンとは鳴かないんだけど、人間の可聴域にあわせて鳴き方を変えているという説があるんだ。彼らもまた、賢い社会性をもっているんだね」
　……といった具合で、広い園内をあっちへこっちへ駆け回りながら餌やり体験をコンプした。
「はふー、一度は満足なのです。次は動物を抱っこできる所がいいのです。シューくんはどうですか？」
「そうだね。野ウサギや山羊とふれあえるところがあったはずだ」
　動物を沢山かっている修だが、流石に牧場に住んでいるわけではない。山羊や羊に触れる機会はまれだったのだろうか。
　ふれあいひろばへやってきた修は、興味深そうに山羊の背を撫でていた。
　一方で美咲紀はウサギを渡され、腕に抱えてなでこなでこしている。
　修はそんな光景を見ながら、どこかほっこりとした表情をしていた。クールに振る舞っているようで、実は動物とのふれあいや、ふれあう人々を見るのは楽しいようだった。

　そうこうしているうちに日は暮れていく。
　体力のある二人といえど、園内をあっちこっち回っていれば流石に疲れてくるようで。
「最後はお土産屋さんなのですっ」
　パーク遊びはこれが無いと、とばかりに最後の力を振り絞ってお土産選びに没頭していた。
「お馬さんの毛をつかったストラップ！　これは買いなのです！」
「そういえば、馬が好きだったな……」
「馬だけじゃないのですよ？　キャラグッズもちゃんと買うのです」
　美咲紀は今度も山ほどお土産を積み上げては、宅配業者に荷物を任せてごっそりと買い込んでいた。
　そんな様子を眺めながら、修はふうと息をついた。
「戻ったら、うちの子たちにもかまってやるかな……」

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
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　ごきげんよう。ゴールデンウィークはどこへお出かけですか？　これを読んでいる頃は、もう帰ってきている頃でしょうか。
　今は空前の動物園ブームで、連休をつかって訪れるお客さんも相まって大賑わいだそうで、なんだか気持ちのいい話ですね。
　動物園で遊んだのは随分と前になるのですが、また遊びに行ってみたいものです。

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