それゆけアニマルパーク！｜リアクション

それゆけアニマルパーク！

■とりさんの日　あなたのおうちはどこですか？
　御巫時子が空へ語りかけている時、彼女は鳥の声を聞いている。
　比喩ではなく、本当に鳥の言葉が分かるのだ。
　朝がた枝にとまったスズメたちは時子に挨拶をしてくるし、子を育てていたツバメはなにかかわったことはないかと尋ねてくる。
　時子はそんな鳥たちへ、出がけにひとこと。
「動物園に行ってきます。とても空気の綺麗な所だと聞いていたから、なんだか今から楽しみです」

　彼女が新幹線や路線バスに揺られるさまはあえて省くとして、アニマルパークに降り立った時子は着物にあった和柄のポーチを手に深く呼吸をした。
　聞いたとおり、とても澄んだ空気だ。ろっこん能力をまだ使っていないのに、空をゆく鳥たちの声が楽しげに聞こえる。
「皆さん、どんな暮らしをしてらっしゃるんでしょうか。まずは、フラミンゴのみなさんからですね」
　ゲートを潜って最初に目に付いたのはフラミンゴの池である。
　こちらに向けてかっくんと頭を垂れたピンク色の彼らに、時子もまた小さく頭を下げた。

　時子には鳥たちの名前がわかった。人間にホモサピエンスと名が付いているように、ではなく、飼育員からつけられた固有のファーストネームである。
　もちろん、説明用の看板に名前が書いてあることもあるし、なんならインターネット上のブログに書いてあることもある。けれど時子は……。
「こんにちは。いいお天気ですね。私は御巫といいます。お名前は？」
　鳥に直接語りかけては、相手の名前を聞いていた。
　彼女の聞いているような鳥たちの言葉をどう再現すべきだろうか？　ここはあえて再現をせずにおくが……。
　森の小道を飛び回る鳥たちは、野生でありながら飼育員から餌を貰ってパークと共存しているようだった。
　森のムササビやコウモリたちも（鳥から間接的に聞いたところによれば）のびのびと暮らしているらしい。普通に野生で生活するよりも餌に困らないので移り住む者も居ると聞く。
　飼育員も飼育員で動物のプロらしく、食べられないものを与え続けたり健康を崩すものを食べさせたりといったことはしないようだ。強いて言うならパークを訪れた客がそうと知らずに手持ちのお菓子をあげてしまうことがあるくらいで、そこかしこにそういった注意書きもされていた。
「皆さんが快適に過ごせていたなら、私も嬉しいです」
　時子は鳥たちにさようならと声をかけると、小さく手を振ってパークを後にした。
　意見箱に『鳥さんたちが楽しそうでなによりです』と投書をしてから。

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