【裏球技大会】落神多弾交叉飛球演武～前半の死闘～｜リアクション

【裏球技大会】落神多弾交叉飛球演武～前半の死闘～

【５つのボール】

＊その１と２

　さて、『お取り寄せ』にて青のぬめり球は薫子の手元にあるのだが、すっかりぬめりが取れてしまった。
　激しい攻防の結果である。
「とりあえず、これはくれてやるのじゃ……それ！」
　ただ投げるだけだが、ものすごい勢いがあるように見えるボール。
　グォォォ！　と音を立ててそのボールは旭へと迫った。
「闇ヴォーガーの陰謀に負けてなどおらへんで！　俺はやるんや！！　俺はやるんや！！！」
　旭はどうやら、この一連の出来事を闇ヴォーガーなる人物と関連していると思っているようだが、はてさて真相のところはどうだろう。
　指なし手袋で受け取る体制の旭。
「ぬぉぉぉぉ！　スペリオル・ガーディアティック・ウォルテイション！」
　ただのキャッチである。
　しかし、キャッチしたときズバシャァァァッ！　と音が立つあたりなんというかすばらしい。
　まるでものすごい勢いのボールを取ってそれでずるずるとボールの勢いごと体も後ろに下がっていくという捕球シーンを思い出す。
「くはっ。俺は負けられへんのや！」
　受け取った旭の口からつつっと血が流れたように見える。
　なぜ、口から血が……？　と周りは首をかしげたが気にしてはいけない様式美である。
「ヴォーガーさん！　そんなに血だらけになってまずいよ！」
　外野から荒太郎が声をかける。
「それ以上は危険だよ！　早くボールを落とすんだ！」
　何が危険かは分からないが、これも様式美である。
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお！」
「ヴォーガーさぁぁぁん！！」
「うるさい」
　ボスッ！　……ヌチャッ！　旭の右肩を青のぬめり球が直撃した。
　月詠が涼しい顔で旭に別のボールを発射していた。
つまるところ当たりでアウトである。
月詠のろっこん『絵空事』によって、一度投げ込まれた白猫組外野のボールはメモ帳の中に吸収され、手を触れないまま発射されていた。
ちなみにこれは青のぬめり球。
「なんじゃこりゃーーー！　……ぐふっ」
「あぁぁヴォーガーさん！」
　旭、アウト。荒太郎によって外野に運ばれ、代わりにカンタが入ってきた。
　ちなみに、泥まみれになった青のぬめり球２つは朧がどうにかしようと向かっていた。

＊その３

　黒猫組内野に投げ込まれたボールは、シグレがキャッチしていた。
「夜行性だからこそ、映えるものもあるのさ」
　華麗な動きでキャッチをした球を見てみると……それは緑の破裂球であった。
（おっと、これは……思いがけずいい陽動になった）
　ちらっと視線を薫子に投げるが、向こうは向こうで旭らと決戦中である。
「こういうのは、いかがかな？」
　夜行性とはいえ、カンタが視認しにくいというのも事実、とすればやることは一つ、敵の数を減らすことである。
　手先を起用に使い、スローボールを投げるシグレ。
　そのボールにはわずかに回転がかかっているのに気づけるものはごくわずかだろう。
「うぉ！？」
　その投げられた先にいたのは先ほど足を取られた勇だ。
　足下に落ちるカーブ。
　とっさの変化球に焦る勇だったが、うまくキャッチができた。
「おや、せっかくの青のぬめり球が取られてしまったよ。やれやれ」
　そう言って、大仰に驚いてみせるシグレ。
　何か違うことを言ってませんか……？
　が、しかしこれにはさすがの勇も投げ返さざるを得ない。
「変な球を投げておいてよく言うじゃないか！」
　その緑の破裂球を思いっきりシグレに向けて投げる勇。
　暗いのと、確認を怠った代償か、バァン！　と手元で爆発する勇。
「Bang！」
　皮肉にはそれはシグレが手で銃の形を作って、勇に向けて引き金を引くふりをした瞬間と同時だったという。
「パーフェクトだ、俺」
　そう言ってシグレはにやりと獲物を盗んだときのように笑った。
「あーぁ。やられちまった」
「あとはお任せだよ！」
　こうして勇はぬいぐるみを連れた彩葉と交代したのであった。

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