【裏球技大会】落神多弾交叉飛球演武～前半の死闘～｜リアクション

【裏球技大会】落神多弾交叉飛球演武～前半の死闘～

【開幕前　白猫組】

　さて、それぞれに割り当てられた陣地はサッカーと同じようにグラウンドの西側には白猫組が、グラウンド東側には黒猫組がそれぞれ男によって配置されていた。
　最後の作戦と言わんばかりに、お互い顔を寄せ合って相談したり、足下に不快感を示すものもいる。
　実際、足下への対策を怠った人間も多い。
　白猫組の方では、早速泥濘にはまり始めた人間がいた。
「……なんだこれは」
　春人がそうつぶやいて、不快感をあらわにする。
　一歩進めるごとにずぶずぶと足を取られ、かといって完全に沈むわけでもない。
　ただ、沈みすぎないことがかえって移動に支障をきたしていた。
「春人、どうした。その程度か？」
　鴇夜がそんな春人を見て近寄ってくる。
「……なんで鴇も参加してんだ？　おまえ運動苦手じゃねぇか」
「ジャージというものは考えて作られているな。こういうものを着て競技に参加するのは実は初めてなのだ！」
「……」
　不安そうに鴇夜を見つつも、その不安は少なくとも足下への不安を少しだけぬぐい去っていた。
「と、いうわけで行くぞ春人！」
「どこにだよ！　ここだよ！」
　そう言って言い合う幼なじみズ。
仲のいい？　証拠であろうか。

そして、こちらも色々と一癖のありそうな奴がいた。
「落神多弾交叉飛球演武……ふっ、俺様の魂が疼くな」
　そう言ったのは花太郎である。
「……疼くのは構わないが、しっかりやってくれよ？」
　マウルがそれを聞きつけてそれとなく注意を喚起するが……。
「俺様のこの疼きが力に変わる……それを呼び起こしてはいけない」
「いけないのかよ！」
　花太郎の発言に、思いっきり突っ込むマウル。
「まぁまぁ、その辺にしておいて……ね？」
　そう言って、二人の手にあめ玉を握らせたのは月乃である。
　まだまだたくさんあめ玉はありそうだ。
　呆気にとられる花太郎とマウルに微笑みかけつつ、口を開く。
「相手のろっこんの情報も定かではないわ。足下ばかりに気を取られるのも良くないわね」
　その笑顔にはさすがの花太郎もマウルも頷くばかりであった。
　
『つくよみちゃんは、たしかいつもおべんとうだよね？』
　そう書いて月詠に海は話しかける。
　そういえばお弁当だったと思い出しながら、なのだが。
「あぁ、たまには食堂もいいなと思ってな。海」
　そう言う月詠はクールに返す。
『みんなのろっこんがたくさんみられそうだね』
「普段はあまり使わないからな。いい機会だ」
　確かに、いい機会と言えばいい機会である。
　どこまでもたくましい二人であった……。
「お二人さん仲がいいねー」
「やはは、こっちもあっちも仲良くしてほしいのぅ」
　そこにちょうど作戦の打ち合わせが終わった円と薫子が合流し、しばしのおしゃべりで花を咲かせたのであった。

「……という作戦になるんだ」
「ほかの連中も了承してるなら、俺も構わない」
　陽二の作戦案に、庚は頷いた。
「……だが、気をつけた方がいい」
　頷きつつも庚は続けた。
「……気をつけるって？」
　陽二は、色々と気をつけるのは普通だろうという風に返す。
「……まぁ、がんばれや」
　そういって、庚は真魚に話しかけに行った。
　どうやら彼らも何か考えがあるようだ。
（敵もお前を放置しておくわけねぇだろう）
　という言葉は飲み込まれたままだった……。
「どうした？　何か不安でもあるのか？」
　そんな陽二に勇が話しかける。
「そうそう、楽しくやろう！」
　続いて明るく彩葉も話しかける。
「あぁ、いや……何でもないんだ。やる以上は勝つ」
「勝ったら、僕の自販機で水掛けといきましょう」
　たまたまその話を聞いた五月が冗談めかして言うと。
「面白そうだな」
「水かけかぁ～楽しそうだね！」
　と勇と彩葉は乗り気なようだ。
「……ま、なるようになるか」
　そうして各員は持ち場に散っていったのである。

このページにイラストを設定する