足の痺れた日。｜リアクション

足の痺れた日。

８　伝えられないことが、できたかも。

　御薗井Ｅセレッソは、下宿先の自室で外国にいるパパに手紙を書こうと文机の前に正座していた。
「パーパにお手紙を書くのヨ！」
　セレッソの表情はわくわくと輝いている。パパは養父だが、そんなことは全く関係ないという感じで仲が良い。手紙も頻繁に送っている。
　いつも通りにペンを執り、彼女は早速、便箋を埋めていく。

『親愛なるパーパへ
　チャオ！セレッソです。
　パーパが今いる国は寒いでしょうけども、日本は春を迎えてぽかぽかと暖かくなってきました。いろんな花が咲いてきて、楽しいです。
　そんな中、私はひな祭りでかけがえのない友達と出会えた喜びを分かち合いました。
　二人とも大好き！！

　それと日本ではホワイトデーなる行事があって……』

　ここまで書いて、セレッソの手がぴたっ、と止まった。
　顔が真っ赤になっていく。部屋に置いてあるテディベア――ティノをちらりと見て、彼女は慌てて視線を便箋に戻した。
「……な、なんて書こうカシラ」
　ホワイトデーに、ティノをくれた先輩から『好き』とはっきりと告白されてしまった。
　それを思い出す度に、セレッソは胸がきゅっと痛くなるのだ。
　けれど、それをそのまま手紙に書くのには、何故か抵抗があった。
（どうしてカシラ……これハ、まだ……というカ、ずっと書いちゃイケナイコトのような気がするワ！）
　すっかりペンが止まってしまった。しかし、少しずつ言葉をしたためていく。

『先輩と一緒に行って、ライトバルーンを夜空に飛ばしてきたわ！　とってもきれいだったの！』

「ひっ……！！　あ、足がしびれてきたノ～～！！　一回止めるワ！」
　足を崩して、書いたばかりの文章を見直してみる。こう見てみると、あたりさわりのないことしか書けていない。
　やっぱり、告白されたことは書けない。今まで、何でもパパに報告してきたのに……
　セレッソは痺れからくる涙目な表情で便箋を見つめる。
　寝子島にきて景色も学校も友達も何もかもが新鮮で、特別だと思っていたけれど。
　センパイへの特別は、優しくてふわふわしてベッドの中みたいな心地の時もあれば、ドキドキして、時々こわくて、ジェットコースターみたいな時もあって。
　やっぱり他とは違うもの……のような気がする。
（初めてすぎて、このまま何処に進めばいいのかもわからないノ。…………センパイの宿題の答え、ワタシちゃんと出せるのカシラ）
　それはそれとして、足の痺れはまだまだ取れそうになかった。

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あとがき

担当マスター：沢樹一海
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大変お待たせしてしまってすみません。
リアクション「足の痺れた日。」をお届けいたします。

らっかみではとてもとても久しぶりに書いたリアクションで、
キャラクターのプロフィールを見るだけで懐かしい気持ちになったりしました。

コメディからほっこり系まで、いろいろなシーンが書けて、とても楽しかったです。
やけに細かい描写を見つけたら、「あ、マスターこれリアルに知ってるな」と察しておいてください。

それでは、またいつかお会いできましたら幸いです。

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