せんせいといっしょ：牛瀬先生編｜リアクション

せんせいといっしょ：牛瀬先生編

急：口幸を、みんなと

　お好み焼きは、案外腹にたまる物である。
（んー、ちょっと食べ過ぎましたか）
　椿美咲紀は牛筋入りのお好み焼きを食べながら、軽くお腹を押さえる。後から体重計が怖いな、となんとなく思っていると男子生徒たちが雑談しつつまだまだ食べている姿が目に入る。
「おーし、ネギと豚肉、餅入り焼けたぞー」
「そっちも美味そうだな。っと焼き鳥と焼きそば入り一丁、だね」
　新田亮と八神修がコツをつかんで美味しそうなお好み焼きを焼き上げ、一切れずつもらった日暮ねむると水守流、北里雅樹は「美味しいねぇ」とか「なかなかいける」とか「醤油で食べたくなる」とか言いながらもぐもぐ食べていた。
　焼いていた亮と修も旅鴉月詠が作った目玉焼きつきモダン焼きに舌鼓を打ち、月詠がどことなく暖かい眼差しを向けていた。
（……男子高校生の食欲、ナメてた気がします！　あのシュー君ですら……！）
　ちょっとショックに思いつつシャッターを切る美咲紀に、綾辻綾花がほっこりとするような、優しい笑顔を向けて桜色のマカロンを勧めてくれた。
「あの、よかったらどうですか？　甘い物も食べたくなりますよね」
「！　ありがとう～！」
　美咲紀は綾花からマカロンを受け取り、さっそく一口。上品な甘さに「おいしい」と思わず顔を綻ばせる。
「流石に、ソースの味ばかりだと飽きもくるかもしれないね」
　そう言いながら月詠も綾花からマカロンを貰い、風味に瞳を細めていた。傍らでは澪乃澄佳が「男子って凄いねぇ」とため息混じりにお茶を飲む。
「まぁ、この時期の男の子ってすぐお腹が減ってしまうみたいやねぇ。巧さんも、そうやったし。時々うちら兄妹にも焼いてくれて……」
　いおりがお茶を勧めながらそう言えば、どこかでなにかがガタッ、と音を立てる。そして「お父ちゃん、どないしたん？」という子供の声。
「どうしたの？」
　様子を見に行ったねむるが問いかけると、牛瀬家次男のまことが「お父ちゃん、足滑らせたんよ」と苦笑した。なぜか頬が赤い巧の様子に、ねむるは首をかしげる。だが、その原因をなんとなく察知したのだろう。月詠は「素敵だね」と小さく呟いた。

「なんだかんだ言って、結構消費しましたね、キャベツ」
「そうやな。これやったら家族で食べこなしきれるち思うわ」
　キャベツの置かれていた箱には、既に２玉しか残っていない。澄佳と巧はそろって「皆でかなり食べたんだなぁ」としみじみしていた。
　そんな２人の背後では、綾花といおりがきゃべつの浅漬けの話で盛り上がっていた。これなら長持ちするので、丁度いいのかもしれない。
「作った生地もそろそろのうなるしな。宴も酣っちゅうやつかな？」
　巧はボウルの中にある生地を見ながら、ちょっと名残惜しそうに呟いた。

「ほな、最後の１枚焼くで。余った具は入れられるだけ入れてしまうからちょっとボリュームがあるんやけどな」
　巧がそういいながら手際よく焼き、ソースとマヨネーズ、醤油、青海苔を用意して切り分ける。好きな物をかけてくれ、という意思表示らしい。
　こうして参加者全員分に切り分けられた『最後の１枚』は、とてもユニークだった。なんせ、あまった具を入れられるだけ入れたものだ。何が当たるかわからない。

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