【ホワイトデー】学生達のWhite Day!｜リアクション

【ホワイトデー】学生達のWhite Day!

　なかなか騒がしいホワイトデーの寝子高。そんな様子を生徒会長の志波武道は……楽しそうに眺めていた。

（午前授業ヒャッホイ！）
　武道は小脇に鞄を抱え、ほうほうと手をかざす。そこには色々なキャンディやら友情やら愛やらが飛び交っていた。
「さって……俺も返しに行かないとね」
　武道は自分の鞄に視線を落とし、にっこりと微笑む。そしてんー、と人指し指を頬に当て、可愛らしく（？）小首を傾げた。
（ほかの皆は一体どんなお返し用意してるんだろう？　……よし、ちょっと見て回ってくるか）
　好奇心が強く、イベントお祭り大好きな武道。その水泳部で鍛え上げた筋力を惜しみなく発揮し、軽やかに校内ウオッチングへと飛び出した。

　まず出会ったのは南波太陽と野菜原ユウのお調子者コンビだ。
「お－、タケミチくんじゃ～ん！　生徒会長おっつかれー」
　太陽がいち早く武道に気付き、ちょりーっすとウインクをした。
「ほい、飴あげるね～。疲れた時にはやっぱ甘いモンだよね！」
「わ、ありがとうございます太陽先輩」
　太陽が個包装されたキャンディを数個、武道の手に載せてくれる。特別ラッピングされてる訳でもない大雑把な渡し方だったが、武道は笑顔でそれを受け取った。
「どういたしまして～。俺ら今日は笑顔の花を咲かす花咲爺さんズだから」
「何うまいこと言ってんですか、南波先輩。次行きますよ！」
　ユウが武道にペコリと頭を下げると、太陽の腕を取り引きずっていく。太陽は引きずられながらも武道にウインクを１つすると、彼らはまた廊下の先で飴を配り始めた。
（ほほう、飴ちゃん……大きさ的にも手軽だね）
　武道は感謝をしながら貰った飴を１つ、口に放り込む。甘く優しい味が口いっぱいに広がった。

　飴をコロコロ転がしながら歩いていると、今度は１年生の廊下で千鳥雅人がチョコタルトを配っている所に遭遇した。
　知り合いが多いのだろう、数歩歩けば楽しげに誰かと話し、可愛らしくリボンで結んだお菓子を渡している。どうやら手作りらしく、皆驚きながらも笑顔で受け取っていた。
（へえ凄いな、手作りか！）
　武道は眺めながら感心する。ホワイトデーはこれと決まった物がないから、皆用意する物もバラエティに富んでいるようだ。
（そうなんだよね－。ホワイトデーって結構悩むよね！）
　うんうんと頷きながら、武道は自分の鞄を見た。そこには、今日のために用意したお返しが入っていた。

　それは、ジャム。カフェオレ味のミルクジャムだ。
　男兄弟３人で色々話し合って喧嘩をして。殴り愛しかけながらも何とか選んだ物だ。

　これに決める前に武道も、色々ホワイトデーで返す物について調べてみたのだ。そして何だか色々突っ込みたい思いにかられた。
（マシュマロが嫌いってなんじゃそりゃ！？　嫌いな相手にお返しってなんだそりゃ！）
　そもそもマシュマロがホワイトデーの元祖だったり、昔はマシュマロデーと呼ばれてたり、チョコをくるんだマシュマロが正式なお返しだったり、それがいつの間にか菓子業界の鞘当てに発展したり。
　あまり調べすぎると何だか大人の事情が見え隠れし始めたので、武道はその手をそっと止めたが。
（でも……）
　調べていく中で、武道は確信した。
（相手の事を想って、相手の為に選んだものならきっとなんだって嬉しいよ）
　兄弟で喧嘩をしかけたのだって、それぞれの大事な友人達のため。美味しいと思ってもらいたい。笑顔になってもらいたい。それはきっと、バレンタインもホワイトデーも共通する思いなのだ。

（そういえば、お菓子パーティなるものがあるっぽかったな）
　ふと武道はののこの笑顔と共にその事を思い出した。
　お返しいっぱいの楽しそうなパーティ。きっと笑顔が溢れてるに違いない。
（ちょっと覗いてみようかな……ジャムも予備で１つ２つ多めに持ってきてるから、パーティで差し入れとしてあーげヨット☆）
　るんたった。
　水泳で鍛えた自慢の脚は、太腿軽く学食に向けられた。