はじけてあばれろ、ゾンビモール！｜リアクション

はじけてあばれろ、ゾンビモール！

■駐車場にて
　アウトレットモール。二階フードコートの大きなガラスをかち割って、忍穂と久雨が駐車場へと飛び出した。
　追いかけようとして躓き倒れるゾンビたち。
　陽光をうけまぶしげに見上げるゾンビたち。
　忍穂と久雨は駐車されていたミニバンのルーフに身体をぶつけ、転がりながら駐車場へと降り立った。
「さて、ここまで来たはいいが」
「堕天使たる我が力をもってしても罪を逃れるすべはなかろう（日本語字幕：がんばりますが途中でかなり疲れると思います）」
　バールやスコップを手に周囲を見回すと、ゾンビたちがゆらゆらと円形に取り囲み始めている。
　と、そこへ。
　明後日の方向から野球のボールと馬の蹄鉄が飛んできた。
　ウヴァアといって次々と倒れていくゾンビたち。
　ボールの飛んできた方向を見ると、改造ピッチングマシーンを抱えた天懸と愛馬に跨がったバニーがこちらに向かって手を振っていた。
「ア、ユーオーライ！？」
「おう、無事かあんたら！　すげー格好だな！」
　ゾンビたちを文字通り蹴散らすと、バニーは手綱を引いて馬を止めた。
「モールの生き残りは俺らを含めて十人かそこらだったはずだ。他の連中はどうした」
「ふむ……」
　振り返る忍穂。
　すると新たにポップしたゾンビたちが側面から浴びせられたネイルガンの乱射によってばたばたと倒れていった。
　ゾンビの群れの向こうから顔をぴょこんと飛び出させるジュスト。
「姉ちゃん、逃げてきた人たちがいたよ！」
「お、なんだ？　スコアアタックなら負けないよ？」
　レナはバット片手にニッカリと笑うと、起き上がったゾンビをフルスイングでかっ飛ばした。
「スコアアタック？　いいよ、勝負しちゃう？」
　鉄砲のように立てた人差し指にフッと息を吹きかけるバニー。ついでにそこらのゾンビの頭を指から放った空気弾で吹き飛ばした。
　それを見て目をぱちくりさせるジュスト。
「僕とおんなじ……」
「なんか言った？」
「ううん、なんでもない。っていうか勝負してる場合じゃないよ。ゾンビがどんどん増えてるんだから、逃げないと」
「逃げるのか。なら俺も一緒に行こう」
　どこからともなく現われた亮が、ハンマーでゾンビを殴り倒しつつ車の上に飛び乗った。
「とにかく大型の自動車がいいんだが……」
　ぐるりと見回すと、なんだかゾンビたちがミキサーにかかったみたいにぽんぽこ分解されて飛んでいく光景が見えた。
「え、なにあれ。新手のアトラクション？」
「俺もなんと説明していいか……」
　げっそりする亮。
　暫くすると人間ミキサーこと桜がバット片手にのっそりと現われた。
　のっそりっていうか、ゾンビの首根っこを掴んで引きずり、飽きたように放り投げつつ現われた。
　口元についたケチャップ（朝ご飯代わりのホットドックがアレしたやつ）を手首でぬぐい、ため息のように言葉を吐いた。
「あー、だるい」
「「……」」
　亮の『わかるだろ？』みたいな視線に、天懸たちは空を見ることで応えた。
　すると、トラックがゾンビを撥ね飛ばしながら突っ込んできた。
　すぐそばでブレーキをかけ、久雨の一メートル脇で停車する。微動だにせずに視線だけをむける久雨。
「このトラックは」
「俺だ、流石に置いていくのはどうかと思ってね」
　運転席から顔を出す修。助手席からは美咲紀が『一緒に行きましょう』と手を振った。
「クク、新たなる旅路の幕開けをこの堕天使たる我が祝福してやろう（日本語字幕：一緒に行きましょう）」
　忍穂が荷台を開くと、亮やジュストやバニーの馬がどかどかと乗り込んでいく。
「みんな、いいかい？」
「オーケー、レッツゴゥ！」
　追いすがるゾンビたちを空気弾で撃ち払い、バニーは荷台の扉を閉めた。

　煙の上がる町を走るトラック。
　誰かがスマートホンを操作して、ロックミュージックを流し始める。
　トラックは、小さく小さく、遠くなっていく。
　終末のゾンビ世界は今日も平和だ。

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