駄菓子屋のプリンセス｜リアクション

駄菓子屋のプリンセス

　場面は、奥の座敷に戻ります。
　鉄板のコンロに火が入りました。
　じゅーっと熱い音がします。
　花厳望春と天馬ひびきはここでホットケーキを焼いているのですが、隣のコンロはまた違った様子になっておりました。
　阿寒湖まりもが黒依アリーセの前で、なにやら料理をしているのです。なお、この作業は事前に店の許可を取っておりますのでご心配なく。
「アリーセ、待ってる間に買ったものを食べておいてねー」
「いいの阿寒湖さん？　私、手伝わなくても？」
「いいっていいって、この私に任せなさ－い」
　まりもはなにをするつもりなのでしょう？
　それはそうとして、アリーセは買ったものを開けます。
　まずは、たい焼きチョコ。名前だけだとチョコレート味のたい焼きのようですが、れっきとしたコーン菓子です。外袋を切って開けるとあらびっくり、
「へー、コーンの中にエアインチョコが入ってるのね」
　アリーセは不思議そうに眺めました。形はたしかにたい焼きだけど、重さも手触りもちがいます。もちろん、熱くもないのです。
　そっと食べてみると食感さっくり、中身のチョコもトロトロ溶けて、極上の味わいでした。
「口どけも良いし、思ったよりおいしいわ。何より見た目が可愛いわね」
　さて次に参りましょう。こちらはピンク餅、ゼリーのようなグミのような餅のような、不思議なお菓子です。小さいのが十二個も入っているのに３０円、付属のつまようじで刺して食べましょう。
「あ、これ、ピンク色で可愛い」
　ちょっとくっちゃくっちゃしますが、その歯ごたえも楽しみたいところ。
　口中に広がるその味は……？
「甘酸っぱい、さくらんぼの味がするのね」
　遠足とかに持っていきたい、分け合っても楽しそうなお菓子です。
　さて、このようにアリーセが駄菓子を楽しんでいる間に、まりもの料理ができてまいりました……まずは、
「駄菓子でお馴染みカリカリ梅を、ご飯に混ぜた焼きおにぎりっ！」
　名は体を表すというこの料理、新ジャンル『駄菓子グルメ』の嚆矢となる一品です。調理もいたって簡単、混ぜておにぎりにして焼くだけ……なのにこの、梅の香ばしさがたまりません。
「そして、これ！　イカ天いり炊き込みご飯！」
　そうです。駄菓子のイカ天です。あれを砕いて醤油などと一緒にご飯と炊いてしまうという豪快な料理。これがまた、香ばしくてほくほくでおいしいのです。意外と油っぽくないのもポイントですね。これはこの場所では作れないので、まりもが事前に学校の調理室で作ってきたのを温めるだけとなりました。
「そして究極！　駄菓子カツロール！」
　駄菓子のカツ、ビッグなあのカツの正体は豚肉ではなくタラだったりするわけですが、これをサンドイッチパンに挟んだ上にロールサンドにしてしまうというこれまたパワーみなぎる料理です。チーズやレタスを入れるとこれが美味、歯ごたえがあるのにあっさりしているので、人によっては普通のカツサンドより気に入るのではないでしょうか。駄菓子の薄ーいカツですから、ロールサンドに加工しやすいというのもポイントが高いといえましょう。
「さぁ！　駄菓子の魅力！　思う存分味わいなさい！　沢山作ってきたからみんなで食べてね！」
　こう言ってまりもは、茂や洋二を含む集まっているメンバーにこれら料理を振る舞うのでした。
「ひとつ、試してみよう」
　茂も半信半疑でまりもの料理を手にします。
　創意工夫でなんでもできる。これが料理道の面白さというものでしょう。

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