春を探して｜リアクション

春を探して

○鳥さんと苺

　天気も良くて暖かいのでお散歩日和。
　御巫時子は、鳥さん達に会いに星ヶ丘から九夜山に出向いていた。
　鳥さんたちを探していると、いちご農園の看板を見つけた。
「あら……？　いつからあったのでしょうか……？」
　おっとりとつぶやく。
（鳥さん達は知ってたのでしょうか？）
　と思い、ろっこん『鳥の囀り』を発動して尋ねてみることにした。
「こんにちは、お久しぶりです」
　おしゃべり好きな知り合いの鳥が応じてくれた。
『あらこんにちは、久しぶりね』
「冬は九夜山に登る機会が少ないので、みなさんに会う機会も減ってしまって。最近は暖かい日が続いて過ごしやすいですね……」
『そうねえ、朝晩はまだ寒いけど、昼は大分暖かくなったわね。これから山はいい時期よ』
「久しぶりに来たら看板を見つけたんですけど、あのハウス、いつからあったんですか」
　鳥たちになじみがない言葉も指を差しながら話せばわかりやすくなる。
　話し慣れた鳥さんならそのへんの飲み込みも早い。
『ああ、畑は前からあったのよ。ビニルハウスだから中までは見えないけどね。看板はわりと最近かしら。いちごのいい匂いが漂ってくるのよねー。子供たちが来るとすごくにぎやかよ』
「そうなんですか……」
　話は弾み、農園の主人たちのエピソードなども聞けた。
　知らない人たちだけれど親しみが感じられて、時子は楽しくなる。
「それじゃ私も、いちご狩りに行って来ますね」
『あら、すっかり話し込んじゃったわね。楽しんでらっしゃい』

（甘くて美味しい苺を味わいながら食べたいですね）
　時子はハウスに入り、コンデンスミルクは付けずに苺そのままのおいしさを堪能した。
　品種の表示を見ながら食べ比べてみる。
（品種によって見た目も味も違いますね）　
　苺が大好きな時子にとって幸せな時間だ。
　艶のある表面とヘタが反ってるものを選んでいたが。
（本職の人ならもっと見分け方を知っているのかも）
　そう思った時、ちょうど受付にいた農園の人がハウスに顔を出した。
「あの、すみません……選ぶポイントを教えて頂けませんか」
　声をかけてみると、主人は気さくに応じてくれた。
「ああ、そうだね……三角形じゃなく、ひし形のいちご、あるでしょ、ほら」
「……あっ、ありました」　
「ヘタの根元がきゅっと締まってるでしょ。こういうのが美味しいんだ。それから、形の悪いのや葉っぱの裏側で目立たないのもお勧めだよ」　
「ありがとうございます」
　主人が去ったあと、葉っぱの裏側を探していたら、なんと１０センチ近い大きなものもあってビックリだ。
（すごいです）
　ふと時子は時計に目をやる
「あっ……もう時間ですね」
（３０分は意外とあっという間ですね。もっと食べたいですが次来るときにとっておきましょう）
　春になるとよく九夜山にお散歩に来るので、また機会もあるだろう。

「お持ち帰りが出来ないのは残念です」
　鳥さんにも分けてあげたかったけれど、代わりにジャムを購入することにする。
（何に付けて食べましょう）
　農園の入り口には別の鳥たちが来ていた。
（鳥さん達ともう少しお話をしてから帰りましょう）
　再びろっこんを使い、鳥さんに声をかけた。