春を探して｜リアクション

春を探して

　そしていちご狩りが始まった。
「いちごー！　たべるぞー！」
　その言葉通り、赤く熟れた苺を、せっせと採って食べる陽毬。
「ミルクを付けるのもいいけども、苺本来の甘さを味わう為にそのまま食べるのが私のおすすめ！　コンデンスミルクは……まあ、飽きてきたときの口直しかな？」
（すごい……！）
　結は陽毬の食べっぷりに感動していた。
（本居さんと一緒にご飯食べに行ったら、凄く楽しい時間になるだろうなー……）
　などと思いながら、結もいちごを探す。
「わ、これおいしそう。……わ、おいしい……！」
　口の中に広がる甘酸っぱさに、結は顔を綻ばす。
（しっかし、美少女二人が並んで苺狩りの光景……目の保養ってやつだねぇ）
　流はそんなことを思っていた。
「そういや苺のこのつぶつぶ、たしか種じゃなくてこれが実なんだってなんかで聞いたんだよな、実だと思ってたとこが花なんだって、知ってた？」
　流が豆知識を披露する。
「そうなんだ！　知らなかった、すごいね」
　結が驚いてみせ、
「へー、それじゃ私たち花を食べてるんだね。ところで、流くん食べてる？」　
　と言いつつ、いちごをもぐもぐ食べ続ける陽毬。
「っと、ほっこりしてねぇで俺も苺食べるか。やっぱ取れたての苺は格別だな」
　流も負けじと食べ始めた。
（本居も黙ってれば美少女なんだが……千堂の爪の垢でも煎じて飲んでみたら少しはお淑やかになるかな？）
　などと心の中で思いながら見ている。
　陽毬も、苺にばかり気をとられているわけではない。
（一緒にきた2人との交流も忘れないようにするね。美味しいものは誰かと一緒に食べるから美味しいんだしね）
　話しかけてみようと結のほうに近づいていく。パーソナルスペースが狭い陽毬はベタベタくっつくのが好きだ。
（えっと……千堂さん、だったかな。話題は……共通の友人の水守君のことが無難かな）
「千堂さん、水守君とお友達なんだよね。やっぱり食べ物つながり？」
「え？　ああ、そういえば水守君食べるの好きみたいだね。仲良しなんだね」
　大人しく、自己主張も控えめに見える結だが、元々はけっこう活発だった。
「やっぱり？　私は今日みたいに食べ物的なイベントに一緒に出掛けては、一緒にご飯食べるんだよー。うん、なかよし！」
　陽毬はなんとなく結の活発さを感じ取って、気楽にしゃべれる気がした。
「千堂さんとも仲良くなりたいな。結ちゃんって呼んでいい？」　
「えっ……嬉しいな！　うん、よろしくね」
　ほっこりと心が温かくなった気がして、結は笑顔で答えた。
　
「お、でっけぇ苺発見！　こいつは女性陣の方にプレゼントすっか」
　大きな苺を見つけた流が二人を呼ぶ。
「おーい、本居、千堂、こっちにでっかいイチゴあるぞー」
「えっ、どこどこー！」
「わ、本当に大きい」
　二人は目を輝かせ、一緒に飛んできた。
　そして視線を交わす。
「結ちゃん、半分こしようか」
「……いいの？　ありがとう」　
　半分こした苺をほおばりながら、結はつぶやく。
「そのまま食べるだけじゃなく何か料理に使いたくなるね。ジャムにしたら美味しいかなぁ、タルトとか……いちごのレアチーズケーキもいいかも……あー、形にしたくなってくるなぁ」

このページにイラストを設定する