小学生の年度末｜リアクション

小学生の年度末

○りんごさんの出番！

「てすとをがんばるんだよ！」
　はりきっているのは１年生の柚瀬玲音。
「ボクはふだんあそんでいることが多いけれど、てすとだから頑張るんだよ！　だよ！」
　外見は繊細な美少女だけどとても活動的な玲音は、つらいことも、たのしいことも、全力。
「たしざんもひきざんも、ちゃんと覚えたもん、だいじょうぶなんだよ、きっと！」
　そう言って算数のテストに臨んだ。
（でもやっぱりわかんないのは出てきちゃう）　
　文章題を読みながらちょっと悩む。
（そんなときはりんごさんの出番なんだよ）
　なぜにりんごさん？　
（りんごさんがふたつに割れたり食べられたりして、へったりふえたりするんだよ！　これでさんすうはばっっちりなんだよ！　だよ！）
　割れたら割り算になりそうだが、気にしていないようだ。
　無事答えを書いて、おしまい。
　テストが早めに解けた玲音は、眠くなってきた。
　しばらくするとうとうと……
　銀色の髪が揺れながらだんだん下に下がってきて。
「はい、おしまいです。手を止めて」
　先生の声で目を覚ました時、テストにはちょっぴりよだれがこぼれていた。
　玲音はありゃ、という顔をした後、袖でよだれを拭き取ってテストを提出した。

　
　テストが終わった休み時間。
　玲音はnekomimiキャスケット帽をかぶり、ハーフパンツから足を覗かせて、男子にまざってグランドに駆け出した。
「きょうはなにやる？　やる？」
　ワクワクが押さえきれない様子で話しかける。
「ドッジボール！　いいね！」
　上機嫌で一緒に遊び始めた玲音だが、しばらくすると。
「おい、今ボール落としただろ！」
「おとしてないんだよ！　おとしそうになったけどぎりぎりでおさえたよ！」
　男子と言い争いになってしまった。
　どっちも譲らず、取っ組み合いのけんかが始まった！
「先生ー、ケンカです～」
　他の子が先生を呼んで、やってきた先生に怒られるのはいつものパターン。
「またあなたたちですか？　けんかしないで、譲り合って遊びましょう。ケガしたら嫌でしょう？」
　でもいつものことだから、玲音は怒られても気にしない。

　帰るころにはけろっとしてばいばいする。
「またあしたね！」
　たぶん、男の子だとかは一切意識していない。
　とにかく、玲音はみんなと一緒が楽しいのだ。　