小学生の年度末｜リアクション

小学生の年度末

○答案の字と春の訪れ

　5年4組の教室でも、テストが返却されていた。
「佐藤瀬莉さん」
　先生に呼ばれた瀬莉はツインテールを揺らして立ち上がり、答案を取りにいく。
　理科と算数は得意だ。時計いじりが趣味だからか、筋道を立てて考えることが得意になった。だから楽勝だ。
　文系はそれほど得意じゃないけど、まあそこそこの成績は取れるはずだ。
　将来は時計職人を目指してスイスの時計学校へ留学しようと考えているので、今のうちから英語だけじゃなくフランス語まで習っている勉強家の瀬莉だ。
　……しかし、テストの答案を見て瀬莉は顔をしかめた。
　点数のせいではない。悪筆だ。
（なんでこんなに字が汚いんだろう……人に見せられないよ）
　5年生くらいになると、女の子は丁寧な字を書く子が増えてくる。うまくないまでも、かわいらしい丸文字とか。
　だが、いかにも汚い字を書きそうな男子でももう少しきれいな字を書くんじゃないか、と思えるほど、瀬莉の字は汚い。
　それでも以前に比べたらまだマシだ。
　以前は「読めない字を書いて」０点を取ったことがある。
　さすがにこの時は親に家庭教師をつけられて綺麗な字の書き方の猛特訓させられた。
　お手本をなぞったり、なるべく似せて書くように努力してみたけど……楽しくなかった。
　時計いじりの楽しさと比べると、どうも字の練習は自分には向いていないように思えた。
「以前に比べて字が綺麗になったね」　
　落胆が表情に出たのか、先生は力づけるようにそう言ってくれたが。
（全然綺麗になってないような気が……）
　はぁ、とため息が出る。
　肝心なテストの結果は、一番よくできたのは理科の84点、悪かったのは社会の56点。
　平均点は良いから、良しとすべきなのだろうか。
　6年生になったらもっと綺麗な字を書きたい、と思う瀬莉だった。

　その日の放課後は、教室の掃除当番だった。
　瀬莉の担当は窓拭きだ。
（寒い日に濡れ雑巾で窓を拭くとかシャレになってないよ）
　綺麗にするのは嫌いではないのだが、そんなことを思いながら外を見る。
　ふと、校庭に黄色いものが見えた。
　よく見ると、花壇の水仙の花だった。
（ああ、もうすぐ春なんだ）
　瀬莉は一瞬水の冷たさを忘れた。

　少しずつ、季節は流れている。
　今は固いつぼみの校庭の桜も、もうじき花を咲かせることだろう。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
それぞれの小学生の年度末、高校生とは違ったいろんな悩みや成長があって、書いていて楽しかったです。

クラス替えについてはアクションをいただくまでうっかりしていました；
寝子小では例年クラス替えは３年と５年になるときだけとありましたね。
でも油断は禁物、今年はどうなるかわかりませんよー。

それでは、皆さまが素敵な春を迎えられますように。

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